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O plus E誌 2013年7月号掲載
 
 
華麗なるギャツビー』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C) 2013 Warner Bros. Entertainment Inc.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月14日より丸の内ピカデリー他にて全国ロードショー公開中]   2D版:2013年5月21日 GAGA試写室(大阪)
3D版:2013年6月4日 梅田ブルク7
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  偉大ではないが,前作以上に華麗なリメイク作品  
  原作は,F・スコット・フィッツジェラルド作の「The Great Gatsby」で,アメリカ文学の代表作の1つである。何度か映画化されているが,著名なのは1974年製作のジャック・クレイトン監督,ロバート・レッドフォード主演の『華麗なるギャツビー』(以下,74年版と呼ぶ)だ。筆者も当時デートムービーとして観たが,日比谷のメイン館での上映は超満員だった記憶がある。その衝撃度は,それまで「グレート・ギャツビー」や「偉大なるギャツビー」であった小説本の大半は,邦題を「華麗なるギャツビー」に変えたほどだ(一部は,その後「グレート・ギャツビー」に戻っているが)。
「華麗なる」という形容詞句が作品名に冠されることは少なくないが,映画での大ヒット作は,スティーブ・マックィーン,フェイ・ダナウェイ主演の『華麗なる賭け』(68)で,原題は『The Thomas Crown Affair』だった。74年版の邦題もそれを相当意識したものと思われる。物語の主人公の人生は,全く華麗ではないのだが,人気絶頂期にあったR・レッドフォードの白いスーツ姿には,この邦題がぴったりだった(写真1)。この両作品以降,「華麗なる…」を冠した作品名は急増している。
 
 
 
 
 
写真1 74 年版のR・レッドフォードとM・ファーロー
 
 
  さて,配給会社が敢えて同じ邦題を採用した本作の監督はバズ・ラーマン,主演の大富豪ジェイ・ギャツビー役はレオナルド・ディカプリオで,『ロミオ+ジュリエット』(96)以来の再タッグである。彼が再び愛を得ようとするヒロインのデイジーには『17歳の肖像』(10年4月号)のキャリー・マリガン,彼女の従兄で本作の語り手であるニック役は前『スパイダーマン』シリーズのトビー・マグワイア,デイジーの夫トム・ブキャナンには ジョエル・エドガートンが配されている。
 外連好みのバズ・ラーマンなら,極彩色の映像と極端なカメラワーク,派手な衣装,現代風のアレンジが予想できたが,それでも意外だったのは,SFでもヒーローでもないこの文学作品を,S3Dで制作したことである。その一方,外し方は『ロミオ+…』ほどではなく,結構原作に忠実と言える。74年版も相当意識している証拠に,随所でその著名なシーンが登場する。
 筆者は,本稿を執筆するに当たり,本作の2D版,74年版のDVD,本作の3D版の順にじっくり観賞した。それぞれに良さはあるものの,個人的な好みから言えば,今なお74年版の方が優れていると思う。フランシス・F・コッポラの脚本が秀逸であるし,少し古くささを感じるテンポが,1920年代のアメリカ,米国文学の香りを感じさせるからだ。とはいえ,このバズ・ラーマン流リメイク版にも捨て難いシーンが数々ある。以下,両作品の比較とCG/VFXの解説を含めた感想である。
 ■ 華麗さはR・レッドフォードに譲るものの,きりりと決めたL・ディカプリオのファッションも素晴らしい。成金らしい仕草,終盤の鬼気迫る形相など,ギャツビー役の演技は1枚上だ(写真2)。出色は,語り手のT・マグワイアで,むしろ彼が主演とも言える。ミスキャストと感じたのは,デイジー役のC・マリガンだ。あの狸顔がレオ様の心をかくも奪うとは思えない(写真3)。貴婦人然とした振る舞いならキーラ・ナイトレイ,2人の男を惑わす小悪魔的存在ならスカーレット・ヨハンソンだろうと思ったが,この2人も当初は候補に挙がっていたようだ。
 
 
 
 
 
写真2 成金で,ちょっと気障な感じがよく似合う
 
 
 
 
 
写真3 C・マリガンは好きな女優だが,この役には合わない
 
 
  ■ 物語として,本作ではトム・ブキャナンがウィルソンの妻を愛人にしていることが分かり難い。その半面,彼女が黄色い車に轢き逃げされるシーンは,74年版より克明に描かれていて,観客の理解を助けている。2台の車がNYに向かう道中を,本作はVFXを駆使してカーチェイス風に描き,迫力充分だった。ここから物語が一気に展開するという起爆剤の役目も果たしている。この点では,ジャンケン後出しが有利だ。
 ■ 予想通り,ブキャナン邸(写真4)もギャツビー邸も豪華絢爛だったし,その中で夜な夜な繰り広げられるパーティの様子(写真5)も,ラーマン作品の本領発揮である。いずれも3D効果は遺憾なく発揮していた。音楽は,ヒップホップを大幅に取り入れるという現代風演出で,74年版のチャールストンとは対照的だ。紳士服はブルックス・ブラザーズ,女性ファッションはプラダとMiu Miu,宝石類はティファニーとタイアップした広報戦略も抜かりはない。
 
 
 
 
 
写真4 豪華なブキャナン邸。3D効果も上々。
 
 
 
 
 
 
 
 
写真5 こちらは,対岸のギャツビー邸とその中でのパーティ
 
 
 
  ■ CG/VFXはといえば,1920年代のNY周辺の光景の随所で多用されている。とりわけ目を引いたのは,イースト川にかかるクイーンズボロ橋(写真6)で,夜のブロードウェイの光景も上出来だった(写真7)。カメラの近くでは実際のクラシック・カーを配し,遠くのクルマや建物はCGで描き加えられているのだろう。VFXの主担当は豪州のAnimal Logicで,同社の実力からすれば,さほど難しい対象ではない。 
 
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写真6 1920年代のニューヨークで,見どころはクイーンズボロ橋
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真7 夜のブロードウェイの描写も,好い出来だ
(上:近くのクルマは実在のもの,中:その他はCGで描き加える,下:完成画像)
(C) 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
 
 
 
  (O plus E誌掲載分に,その後入手した画像を追加しています)  
   
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