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O plus E誌 2013年4月号掲載
 
 
ジャックと天空の巨人』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C) 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月22日より丸の内ピカデリー他にて全国3D/2D同時公開中]   2013年3月4日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  CGで描いた大きな豆の木と100人の巨人たちに注目  
  まず第一に,当欄としては,この映画はCG/VFX的に大力作であると断っておこう。米国では昨年6月に公開予定だったのが,大幅に遅れ,去る3月1日にようやく公開の運びとなった。無論,公開週の週末興行成績No.1を確保しているし,今月号の当欄のトップを飾るに相応しい堂々たるVFX作品である。実際に,監督の要望により,多数の巨人を出演俳優に合わせてデザインし直すのに手間がかかり,製作開始も撮影後のポスプロ着手も大幅に遅れたという。CGの充実は,当欄としては大いに喜ばしいことだ(勘の良い読者なら,これだけで,物語は今イチなのだなと気付かれるだろうが……)。
 予告編やスチル写真を見てもすぐ分かるように,CG製の大きな豆の木が印象的だ。当然,原作は童話の「ジャックと豆の木」(Jack and the Beanstalk)だと思ったが,それだけでなく,もう1つ17世紀から伝わる英国の民話「Jack the Giant Killer」(巨人殺しのジャック)があり,そちらも含んだ形での映画化ということらしい。後者だけを元にした映画としては,『ジャックと悪魔の国』(62) が製作されているようだ。このジャックというのは,英国国旗のユニオン・ジャックにも通じる名前のようである。
 単なる童話でなく,大人も観られるアドベンチャー巨篇であることを強調したかったのか,映画の原題としては『Jack the Giant Killer』が予告されていた。勿論,3D版がメインの大作である。最後になって「Killer」が「Slayer」に入れ替えられた。ほぼ同じ意味なのだが,何となくマイルドな感じがする。邦題は,いずれをも廃して,何と「天空の巨人」などというファンタジー向きの言葉を捻り出している。宮崎アニメの『天空の城ラピュタ』(86)を想起させる狙いだろうか。なかなかの妙案だと思う。担当者に座布団1枚進呈だ。
 物語は「ジャックと豆の木」風に始まる。即ち,ジャック青年が市場に愛馬を売りに行くが,途中で出会った修道士に馬を譲ってしまい,手には不思議な豆だけが残った。怒った叔父に庭に捨てられた豆が,嵐とともに巨木に育ち,1万米の高さに達する。そこには,伝説の巨人の国があった……。後は,巨人の国から王女を助け出す話,豆の木を伝って100人の巨人たちが地上に降りてきて,300人の国王軍と戦うバトルが描かれている。金の卵を産む鶏は登場しない。
 監督は,『ユージュアル・サスペクツ 』(95)のブライアン・シンガー。その後,『X-MEN』シリーズ,『スーパーマン リターンズ』(06年9月号)等を手がけているので,CG/VFX大作は得意なはずだ。主演のジャックにニコラス・ホルト,王女イザベルにエレノア・トムリンソンを配しているが,このキャスティングがちょっと弱い。助演陣では,スタンリー・トゥッチ,ユアン・マクレガーが目立つ程度だが,むしろ,ビル・ナイをはじめ,素顔が分からない巨人たちの存在感が目立った映画である。それが,この映画の狙いなのだろう。
 以下,CG/VFXの見どころである。
 ■ まず何といっても,天まで届いた大きな豆の木の表現である。勿論,CG技術があってゆえの描写だが,その堂々たる姿は実に見応えがある(写真1)。デザインも光沢も,そして3D効果もしっかりと計算されている。切り落とされた後の地上での描写では,一部俳優とからむ部分は実物大模型だが,大半はこれもCGで処理されている(写真2)。CG/VFXの主担当はDigital Domainだが,豆の木は副担当のMPCが描いたものだ。その他,Soho VFX,Rodeo VFX等も参加している。
 
 
 
 
 
写真1 空に伸びる大きな豆の木はCG技術の賜物
 
 
 
 
 
 
 
 
写真2 豆の木は,地上部分でもかなりをCGに頼っている
 
 
 
  ■ 各巨人の大きさは6〜8mだ。なるほど,一体ごとにかなりデザインが違う。勿論,俳優の動きや顔の表情を捉えるパフォーマンス・キャプチャが採用されている。各巨人の頭部デザインは,演じる俳優を個性を誇張しているようだ。監督の拘りだけあって,質感も素晴らしい(写真3)。動きを少し鈍重に見せるため,MoCapデータの再生を15〜20%遅らせる工夫をしている。これを100体も作るのは大変な作業だ。出番の多いファロン将軍は双頭だから,さらに手間がかかったことだろう(写真4)
 
 
 
 
 
 
 
写真3 上:ファイ,下:ファム。肌の質感も上々で,3D効果もしっかり考慮。
 
 
 
 
 
写真4 ビル・ナイ演じる双頭のファロン将軍
 
 
  ■ 多数の兵士同士の戦いをCG/VFXで表現するのは,今や珍しくもないが,片方が巨人だけにそのバトルのデザインは簡単ではない。プレビズをThird Floor,Proofの2社が担当し,本番撮影に新しいSimul-Camを多用したというのも納得できる。その他のシーンでもVFXは多用されているが,崖に獣頭が刻まれ,口から水が流れ落ちる滝のシーン(写真5)が印象的だった。
 
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写真5 獣口から水が落ちる滝のシーンもVFXの産物
(C) 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分を入替・追加しています)  
   
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