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エディ・マーフィが超肥満のシャーマン・クランプ教授とその家族(祖母,両親,兄)を1人で演じた『ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合』(95)の続編である。アカデミー賞最優秀メイクアップ賞を取ったように,前作では肥満メイクアップと七変化が注目の的だった。視覚効果は,肥満部の体内移動にCGを使ったシーンが印象的だったが,他は簡単なスプリット・スクリーンによる画面合成がほとんどだった。ディジタルVFX全盛の今日,この続編は5年間の時代変化をどの程度反映しているのかに興味をもって見に行った。
3〜5役の多重合成シーンもところどころに登場し,VFXならでは描写もあったが,さほどの進歩は見られなかった。痩せ薬開発が若返り薬開発になっただけで,ストーリー展開も前作と代わり映えしない。ヒロインがジャネット・ジャクソンというので期待したが,随所で兄マイケルに似ているなと感じただけだ。やはりこの映画は,肥満メイクアップだけが見どころだ。
故淀川長治さんが激賞したエディ・マーフィの変装と声色の使い分けは健在である。さすがスタンドアップ・コメディアン出身の芸だ。2人増えて今回は9役らしいが,全部は見抜けなかった。クランプ家の面々の中では,前作に続いてママの役作りが上手い。ノーメイクで登場する教授の分身バディ・ラブより,肥満メイクのクランプ教授の紳士的な落ち着いた態度は実に自然で,こちらが本物の顔と声ではないかと錯覚してしまう。2作続けてそう感じさせるのは大したものだ。淀川さんの「ハイ,見事な見事な見事な演技ですねぇ」という声が聞こえてきそうだ。
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