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O plus E誌 2007年9月号掲載
 
    
 
SIGGRAPH 2007の話題から
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
 

 以前のように毎年参加報告を書かなくなったが,CG の祭典SIGGRAPHには欠かさず参加している。今年の開催地は4年ぶりのサンディエゴで,最近の5年間では最大の参加者という活況だったようだ。
 ゲーム系の話題は減り,ますます「VFX映画&フルCGアニメの最先端メイキング公表会及びそれを支えるCG基盤研究者の集い」の様相が強くなっている。例年にも増して映画関連のセッションが盛り沢山で,本欄としては目が離せない連日だった。それもそのはず,フルCG長編アニメの製作本数が増え,そのだけCGアーティストの需要も急増しているから,皆熱心に他社の流儀を学び取り,自らの手の内に入れようと必死なわけだ。
 各種メイキング解説を聞くたびに,筆者が気づかなかったシーンを目にして感心する。よくぞここまで1本の映画に,新たな技術開発を志すものだ。HoudiniやMayaにある機能だけで満足せず,常に独自の挑戦を試みている。この連中は,数学・物理学ができ,CGと画像処理のと写真術の基礎をマスターした上に,プログラミング能力もあるからだ。それができるか,既存のツールの範囲内で映画を作るかが,1流と2流の違いである。
 以下,印象に残ったセッションからの感想である。
 ■『スパイダーマン3』:クルマもビルもCGで,もはや都会をバックのアクションシーンは完全に手中にある。3作目に登場した「サンドマン」(砂男)の表現は,粒状表現から砂のライティングまで,相当力が入っていたことがよく分かる。
 ■『シュレック3』:1〜3作目の変遷を振り返る『シュレック学』の特別セッションでは,火・水・衣服の表現の進歩が如実に語られていた。同じ作品内でも,多数の手法を使い分けていたことに感心した。
 ■『レミーのおいしいレストラン』:野菜1つ刻むのにも,包丁の形状毎に支点を設定し,食材の固さに応じた切断の力学方程式を立て,刻まれた食材の変形やソースの粘性までもモデル化して描いている。厨房の機能設計から料理人毎の調理服のたわみ計算まで,一時が万事このこだわりだ。いま最高のクリエータ集団だろう。
 ■『トランスフォーマー』:もはやrigid bodyの表現方法には進歩なしかと思ったが,この映画のロボットの部品点数とそれを変形させる力量(デザイン力)に恐れ入る。さすがILMだ。背景のCGセット作りも上手い。破壊や爆発も自由自在だ。映画本編よりも,間違いなくメイキング映像を見ている方が面白い。
 ■『サーフズ・アップ』:流体系の表現技術を競う中で,主役はこの映画だった。ペンギン達がサーフィンする大波の表現は秀逸で,海辺に押し寄せる波も素晴らしい。Sony Imageworksは絶好調だ。このフルCG映画だけが日本で未公開だが,正月興行が楽しみだ。
 ■その他では,『シャーロットのおくりもの』『300』などが予想通り,いや予想以上のVFX力作だったと言えよう。ここまでメイキング過程を開示するなら,DVD に収録してくれればいいのに,最近は特典映像の目玉になることも少なくなり,本欄としては残念な限りだ。

     
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