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O plus E誌 2007年7月号掲載
 
 
purasu
ファウンテン 永遠に続く愛
(20世紀フォックス配給)
 
      (C)2006 Warner Bros. Entertainment, Inc. (C)2006 Twenties Century Fox  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [7月14日より銀座テアトルシネマほか全国順次公開予定]   2007年5月22日 東映試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ビジュアル的には評価できるが,完全理解は困難  
 

 結構日本公開が待ち遠しく,早く試写を観るのが楽しみだった映画である。米国での公開は2006年11月22日で,国内公開までに半年以上も経っている。最近では珍しいことだ。正月,春休み,GWのようなハイシーズンを避けたのは,一般受けしないタイプの映画だからだろうと予想できた。それでも待ち望んだのは,VFXの専門誌Cinefexが早々と取り上げ,幻想的なビジュアルを沢山目にしていたからだ。
 病に冒され余命わずかな最愛の妻イジーを救うため,医師トミーは特効薬の開発実験に没頭する。死を覚悟したイジーがトミーに託したのは,彼女が書いた「ファウンテン」と題した物語で,その未完の最終章を彼に完成させて欲しいとペンとインキをプレゼントする。それは,中世スペインを舞台に女王の命で「生命の泉」を探し求めて旅する騎士の壮大な物語だった……。映画では,現在とこの中世の物語が複雑に絡み合って描かれる上に,トミーの精神世界らしき未来の幻想的なシーンも登場する。即ち,3つの世界が交差するのでややこしい。
 医師トミーと騎士トマスを『X-メン』シリーズのヒュー・ジャックマンが,妻イジーと女王イザベルを『ハムナプトラ』シリーズのレイチェル・ワイズが演じる。監督・脚本は,『π』(98)のダーレン・アロノフスキー。この映画がきっかけで,R・ワイズは監督と交際を始め,昨年結婚し,男児をもうけている。
 インデペンデント系の監督が,自分の原案で撮った永遠の愛を捜し求める一大叙事詩というから,一筋縄では行かない物語だと想像したが,予想以上の難解さだった。旧約聖書の創世記に登場する「生命の樹」に関する予備知識があるに越したことはないが,それは映画中で説明すればすむことだ。「永遠の愛」という観念的な題材だから,抽象的・神秘的に描けばいいというものではない。この種の難解さに対して,理解力不足や前提知識不足を観客が羞じる必要もない。難解なのは,作り手の表現力が不足しているからだ。テーマが抽象的ならば,より一層分かりやすい表現と展開が必要なのに,それを怠っているに過ぎない。
 枝を拡げた樹木,そこから流れ出る樹液,植物の成長と枯渇,球形の不思議な宇宙船……。CG表現ゆえの驚くべきビジュアル・シーンが,後半これでもかとばかりに噴出する(写真1)。なるほど,神秘的には見えるが,それでもやはり意味は不明だ(写真2)。VFX担当は,Mokko Studioを中心に,Intelligent Creatures, Amalgamated Pixels等,10数社の分担だが,いずれも弱小スタジオだ。メジャー系に比べると低予算で,美術班,CGクリエータ達の苦労は並大抵ではなかっただろう。ビジュアル的には力作だが,この表現が監督が本当に意図したシーンだったのだろうか? 疑問はかなり残る。

 
     
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写真1 これが物語のキーとなる「生命の樹」

 
   
 
 
 
 
 
 
 
写真2 「生命の樹」の変転を描く映像はシュールだが,その意味となると理解不能
(C)2006 Warner Bros. Entertainment, Inc. (C)2006 Twenties Century Fox. All Rights Reserved.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加してします)  
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