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O plus E誌 2007年5月号掲載
 
 
ゲゲゲの鬼太郎
(松竹配給)
 
      (C) 2007ゲゲゲの鬼太郎フィルムパートナーズ  
  オフィシャルサイト[日本語]  
 
  [4月28日より丸の内ピカデリーほか全国松竹系にて公開予定]   2007年3月12日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  思わぬ拾いもの,CG妖怪映画の最高傑作  
 

 2本目も邦画だ。勿論,原作は水木しげるの妖怪マンガの傑作の実写映画化で,知名度では「ドラえもん」「鉄腕アトム」に次ぐメジャーな存在だろう。TVアニメとしては,既に1960年代末から今日に至るまで何度も製作されている。熊倉一雄が歌う主題歌もすこぶる印象的だった。ゲームソフトでも10作を数えている。
 実のところ,完成披露試写会に足を運ぶまでは,また安手の CG映像を多用した安易な企画かとバカにしていた。『妖怪大戦争』(05年8月号)『どろろ』(07年2月号)といった駄作・愚作を見せられていては,期待しない方が当然だろう。ところが事前予想に反して,この映画は面白かった。思わぬ拾いものとは,こういう作品のことだ。「週刊少年サンデー」や「ガロ」での漫画連載を同時代体験してきた筆者の目からみても,この実写映画の雰囲気は原作を全く損なっていない。CG部分を熟視する当欄の視点で眺めても良くできていた。これまでのCG妖怪映画のベスト1と評価していいだろう。
 監督は本木克英。名前は似ているが,『踊る大捜査線』シリーズの本広克行監督ではない。松竹社員で『釣りバカ日誌』シリーズの第11〜13作などを手がけた監督だ。主演の鬼太郎を演じるのはイケメン男優のウエンツ瑛士。意外にも,顔の半分を覆う灰色の髪の毛がよく似合う(写真1)。恋心を寄せる人間の少女・三浦実花役は井上真央だが,2人の演技は可もなく不可もないレベルだった。
 地下深くに封印されていた最凶の石「妖怪石」が紛失し,人間界に登場したことから起こる騒動を描いているが,話は何でもいい。この映画の見どころは,30種類に及ぶ水木ワールドの妖怪たちが,どこでどのような出で立ちで登場するかの楽しみだ。筆者のようなオールドファンには,お馴染のキャラの登場が嬉しく,初めて観る子供たちにも十分楽しめる。フルCGのキャラもあれば,メイクやウィッグで見事に化けさせたキャラもいる。いずれも好い出来だ。
 まず,何といっても「目玉おやじ」だ。当然CG描写に最適の存在だが,CGならではの素晴らしい出来映えだ(写真2)。その他では「一反木綿」「傘化け」「ぬりかべ」「べとべとさん」「見上げ入道」等がCGで登場する。CG/VFXシーンは700カットで,担当は20社に及ぶ。西田敏行演じる「輪入道」の顔をCG製の機関車と合成したシーン(写真3)が印象的だった。「朱の盆」「縊れ鬼」「小豆とぎ」「岩魚坊主」等は,頭部の大きな被りもの,着ぐるみで登場するが,CGキャラとの合成にも違和感がない(写真4)。VFXスーパーバイザー・長谷川靖氏も特殊メイクの江川悦子氏もいい腕だ。両者のバランスが良く,品質が揃っている。デザイン段階から品質管理を徹底させていたのだろう。
 さらに卓抜なのが,主要キャラのキャスティングだ。 大泉洋の「ねずみ男」は,これ以上は似せようがない(写真5)。間寛平の「子泣き爺」,谷啓の「モノワスレ」,中村獅童の「大天狗裁判長」もハマっている。田中麗奈の「猫娘」は原作には似ていないが,いかにも猫顔だ。室井滋の「砂かけ婆」も悪くなかったが,ここは樹木希林か泉ピン子あたりが欲しかったところだ。
 小雪の「天狐」の登場場面は,『ロード・オブ・ザ・リング』(01)のケイト・ブランシェット演じるエルフの女王・ガラドリエルを彷彿とさせる。鬼太郎と実花が一反木綿に乗って空の旅をする様は,『スーパーマン』(78)へのオマージュのようだ。ピーターパンとウェンディのようにも見える。客車内の描写は『ポーラー・エクスプレス』(04)を思い出させるし,エンディングの音楽に乗っての総出演は『シュレック』(01)のノリだろう。という風にも楽しめる良質の娯楽作品だ。

 
     
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写真1 原作よりは美男だが,結構似合っている
 
 

写真2 目玉おやじはCGならでは見事な出来映え

 
 
 
写真3 西田敏行の輪入道は抜群の存在感   写真4 妖怪たちが勢揃いの大法廷シーン
 
   
 
 
 
写真5 このねずみ男は原作イメージにぴったり
(C) 2007ゲゲゲの鬼太郎フィルムパートナーズ
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加してします)   
   
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