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O plus E誌 2007年5月号掲載
 
 
サンシャイン 2057
(20世紀フォックス映画)
 
      (C)2007 TWENTIETH CENTURY FOX  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [4月14日より有楽町スバル座ほか全国東宝洋画系にて公開中]   2007年3月19日 東宝試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  このビジュアルは驚異的だが,音響効果がミスマッチ  
 

 これは英国映画だ。2月に英国で公開され,日本も遅れずに公開されたが,なぜか米国公開は延期され,秋以降になるようだ。原題は単に「Sunshine」だが,邦題にあるように,50年後の2057年を舞台に宇宙空間で繰り広げられるSFサスペンスである。監督は『ザ・ビーチ』(99)『28日後…』(02)のダニー・ボイルというから,単なる娯楽作品でなく,少しひねったメッセージやホラー性の高い作品だと予想できる。
 太陽の活動が低下して地球に届くエネルギーが減り,あらゆる生物が死滅する危機に瀕している。緊急対策として,大型の核融合装置「ペイロード」を宇宙船で運んで投下し,太陽を再活性化するイカロス計画が物語の前提になっている。登場人物は,ほぼこの宇宙船イカロス2号に乗り込んだ8人のエリート達(船長,操縦士,通信士,航海士,エンジニア,精神科医,物理学者,生物学者)に限られるが,あとプラスαが問題だ。
 統率力のあるカネダ船長は,我らが真田広之が演じる。英語も卒なくこなし,貫録のある渋い演技だったが,出番が少ないのが残念だ。生物役者コラゾン役は『グリーン・デスティニー』(00)『SAYURI』(06年1月号)のミシェル・ヨーだが,彼女も知名度ほど大きな役ではない。主演は『28日後…』のキリアン・マーフィと『セルラー』(04)のクリス・エヴァンスと言えるだろうか。
 前半は,久々の本格的宇宙ものと感じさせる重厚なタッチで,明らかに『2001年宇宙の旅』(68)をかなり意識して作られている。船内,船外活動の描写も丁寧だ。ビジュアル的には相当力を入れた作品である。光と炎の表現は驚異的で,大きなスクリーンで観る映画ならではの迫力と言えるだろう。宇宙船内部も綿密に作られ,デザインもしっかりしている(写真1&2)。何といってもユニークなのは,イカロス2号の外観だ(写真3)。円形の皿に長い棒をつけたような形状は,一度観たら忘れないほど印象的である。そのCG/VFXの担当は,英国の誇るMoving Picture Companyである。
 強いて欠点を上げれば,2つある。コンピュータ・モニタのデザインが50年後と思えないほど古くさい(写真4)。重々しい宇宙服(写真5)は太陽熱に耐え得るものをと意図したのだろうが,如何せんゴツイ。もうちょっと何とかならないものかと感じた。
 ビジュアルの素晴らしさに対して,サウンドが仰々しく,うるさいとすら感じる。もっと静寂の中に淡々と進行してこそ宇宙空間らしいのに,粗野で騒々しい音楽が鳴り響く。物語も,事故や陰謀で1人,また1人と死んで行くサバイバルものへと変わって行く。それだけならまだしも,(詳しくは書けないが)後半では得体の知れない宇宙船への侵入者が登場し,まるでゾンビもののような映画になってしまう。それがこの監督の得意ジャンルであるが,作品の品格が一気に下がってしまった。竜頭蛇尾のちょっと残念な作品だ。

 
     
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写真1 宇宙船内の各部署や操作卓も丁寧にデザインされている

 
 
 
 
 
写真2 船外をモニターする大スクリーン
 
 
 
 
写真3 イカロス2号のユニークなデザインと斬新なビジュアルに圧倒される
 
 
写真4 50年後にしてはモニターが古くさい   写真5 このいかつい宇宙服だけは感心しない
 
 
(C)2007 TWENTIETH CENTURY FOX
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加してします)   
   
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