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O plus E誌 5月号掲載
 
 
『イグジステンス』
(アライアンス・アトランティス作品
/ギャガ・ヒューマックス共同配給)
 
       
      (2000/3/8 ギャガ試写室)  
         
     
  観客を混乱させるのが目的  
 
 モナコでのImagina 2000にMR型ゲームを出展した折り,見物客の何人かから『eXistenZ』は観たかと問いかけられた。VRゲームを題材とした作品と聞き及んでいたが,なかなか日本で公開されなかった。米国での公開は1999年4月で,3月の『マトリックス』,5月の『13F』(3月号で紹介)と立て続けにサイバースペースもの3作が作られていたことになる。VR好きのフランスらしく,この作品は米国より1週間早く公開されていたらしい。
 原作・脚本・監督は,鬼才と称せられるデビット・クローネンバーグ。機会がなくて作品は観たことがないが,異生物,超能力,幻想世界を特殊メイクで描くのが得意らしい。
  「eXistenZ」とは,アンテナ・リサーチ社が5年の歳月 をかけて開発した体感ゲーム。背中に開けたバイオポートなる穴にコードを接続し,中枢神経に直接アクセスするバーチャルリアリティRPGである。数あるサイバースペースものの中でも,W・ギブスンの原典に近い設定だ。ただし,両生類の有精卵から作るゲームポッド(付写真)や生体ケーブルは,この監督らしい気味の悪い造形物で,ギブスンはここまで悪趣味ではない。
写真 メタフレッシュ・ゲームポッド

 新作ゲームの発表会場で美貌の天才ゲーム・デザイナ(ジェニファー・ジェイソン・リー)が襲われ,警備員見習いの男性(ジュード・ロウ)が,彼女とゲームソフトの保護を託される。ダメージを受けたポッドを修復した2人は,このゲームの非現実世界と現実世界を行き来するが,そこで出会う裏切りや殺人,ゲーム界の覇権をめぐる陰謀……何が現実で何が非現実かわからなくなる,というストーリーである。
 複数の仮想空間が入り乱れ,次第に区別がつかなくなる設定は『13F』に少し似ている。SFXもそこそこ登場する。特殊メイク得意のクローネンバーグ監督も始めてCGを使ったという。造形もストーリーも異様な中で観客もアタマが混乱すること間違いないが,これは混乱させること自体が目的なのだろう。その理由はラストで明かになる。
 
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  食事の前後はご用心  
 
これが鬼才の作品ですか。こんなグロテスクで悪趣味な映画はごめんです(笑)。
でも,きっとこれが好きな人もいるから,映画会社も作らせるんでしょうね。私も電脳空間評論家としての課題として観たけど,描き方は感心しませんね。やはり,出来栄えも視覚効果も日本での公開順通り(『マトリックス』→『13F』→『イグジステンズ』)です。
ゲームへの関心が高まりすぎると,未来社会はこうなるという警鐘もあるのでしょうか。
それにしてはリアリティがないですよ。業界注目の画期的なゲームだというのに,その開発費は3,800万ドルと言ってました。40億円ちょっとじゃ,今でも人気ゲームはそれくらいかかっています。もう2桁くらい上でないと,殺し合いするだけの意義がないですよ。
最近1本1億ドル以上の映画も珍しくないですから,安く感じますね。
この映画の製作費だったのかな?もっと欲しかったのに出してくれなかったから,腹いせに映画の中で数字を出したとか(笑)。
ともあれ,この気味の悪い造形物が大好きという人以外にはお勧めできません。食事の前後に観るのは避けましょう。
特に中華料理は最悪です(笑)。
 
   
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