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O plus E誌 2004年8月号掲載
 
 
『リディック』
(ユニバーサル映画
/東芝エンタテインメント
&松竹共同配給)
 
         
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2004年7月1日 リサイタル・ホール[完成披露試写会(大阪)]  
  [8月7日より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  巨大セットの美術とアクションは一流だが…  
   2000年12月号で紹介した『ピッチ・ブラック』を憶えておられるだろうか?「B級低予算映画の秀作」と称したように,なかなか骨のあるハードコアSFだった。スキンヘッドのアンチ・ヒーロー,ヴィン・ディーゼルの出世作で,その後『ワイルド・スピード』(2001年10月号)『トリプルX』(2002年11月号)とすっかり存在感のあるアクション・スターに成長した。
 そのVFXを担当したのが,英国のDouble Negative社だった。たった20人で担当した視覚効果は,玄人好みの渋いクリーチャを描いて業界の注目を集めた。こちらも,今最も元気のいい英国のVFXスタジオの1つに仲間入りしている。
 それならば自分も負けじと飛躍を期したのが,監督・脚本のデヴィッド・トゥーヒーだ。宇宙のお尋ね者「リディック」を再び主人公にした物語を書き上げ,ヴィン・ディーゼルを共同製作者に加えて,何と170億円もの製作費を調達してきた。『スパイダーマン2』の220億円には及ばないものの,何と前作の6倍である。急に背伸びして大作指向になって,前作の小気味よさがなくならなければいいが,と少し懸念した。
 原題は『The Chronicles of Riddick』(リディックの年代記)。前作の砂漠の星とは縁もゆかりもなく,話は一気に壮大な全宇宙での覇権争いに広がっている。総帥ロード・マーシャル(コルム・フィオーレ)が率いる狂信的ネクロモンガー宇宙艦隊が9つの惑星を破壊し,平和なヘリオン星系ヘリオン第一惑星を次のターゲットとして狙っている。一方,5つの惑星から指名手配されているリディック(ヴィン・ディーゼル)は,雪と氷のUV惑星系第6惑星に潜んでいたが,賞金稼ぎに執拗につけ狙われ,ヘリオン第一惑星へ,さらには惑星クリトリアの刑務所へと向かい,彼を慕う女性キーラ(アレクサ・ダヴァロス)との再会を果たす。全宇宙の支配を目論むロード・マーシャルの野望に立ち向かえるのは,重大な秘密を握るリディックただ一人……,という設定なのだが,どうも素直に入って行ける話ではない。作者が意図する世界観が,どうもよく分からないのだ。
 共演陣の大半は馴染みがうすいが,異色の存在は英国の名女優ジュディ・デンチだ。最近は「007シリーズのM」といえば分かるだろう。ヴィン・ディーゼルに口説き落されて出演した彼女が演じるのは,エーテル状の生命体の使者エアリオンなる摩訶不思議な存在で,大女優に演じさせるには奇妙な役柄だ。  では,170億円もの製作費はどこに使ったのかと言えば,ネクロモンガー軍の衣装,カナダのバンクーバーに設けたという巨大なセットとその装飾,そして視覚効果だ。美術感覚は優れていて,各惑星の都市の造形も宮殿内の装飾も相当に凝っている。なるほど,一歩足を踏み入れたジュディ・デンチが息を飲んだと言うだけのことはある。CGだけに頼らず,本物のセットで最高の演技を引き出そうという姿勢にも賛同できる
 その一方で,CGによる視覚効果も,空を飛ぶ各種宇宙船は言うまでもなく,700度の灼熱で人間が溶ける様などに使用され,分量は決して少なくない。豪華なセット内での飛んだり跳ねたりのアクションを支えているのもVFXだ(写真)。Double Negative社以外にも,Hatch FX,New Deal Studios等が参加していると聞いていたが,エンド・クレジットを観ると,Pacific Title Digital等計10社以上が名を連ねている。何とILMまであるではないか。予定外に,どんどんVFXの分量が増え,多数社の応援を求めざるを得なかったのだろうか。
   
写真 巨大セットの中で飛んだり跳ねたり
 
     
   個々に観ると大金をかけた効果は分かるが,全体としてバランスが悪い,乗れない映画だ。構想に脚本が負けている。もう少し低予算で,ピリっとした映画に留めておけば良かったのに。
   
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