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O plus E誌 2004年8月号掲載
 
 
『キング・アーサー』
(タッチストーン・ピクチャーズ /ブエナビスタ配給 )
 
      (C) 2004 Touchstone Pictures & Jerry Bruckheimer Films, Inc.  
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2004年7月13日 厚生年金芸術ホール[完成披露試写会(大阪)  
  [7月24日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  歴史大作にしては,クライマックスがやや淡泊  
   続編が3本続いたが,この映画はオリジナル作品だ。といっても,欧米では名の知れた「アーサー王伝説」の映画化で,ディズニー系のタッチストーンがこの夏最も力を入れている一作である。となると,プロデューサはいつものジェリー・ブラッカイマーである。
 プレス資料やホームページには,アーサー王の物語は夏目漱石やジョン・スタインベックも取り上げ,モンゴメリーの「赤毛のアン」,トールキンの「指輪物語」,さらには『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』にも影響を与えたと解説されている。逆に言えば,日本人には余り馴染みがないと言うことだ。中世の騎士物語として語られることが多いが,この映画は史実通りの5世紀を舞台にしているという。
 大作映画で欧米の歴史物語を勉強するのも悪くないが,『トロイ』(2004年6月号)があったばかりなので,またかという感は否めない。国も時代も違うのだが,映画作りの点では同ジャンルだ。両作品とも『ロード・オブ・ザ・リング』の成功を見て企画されたに違いない。実際,その影響は随所に表われている。
 監督は『トレーニング・デイ』(01)のアントワン・フークア,アーサー王役は『すべては愛のために』(03)のクライヴ・オーウェン,王妃グウィネヴィアには『パイレーツ・オブ・カリビアン』のキーラ・ナイトレイ,王を守る勇者ランスロットには,まだまだ無名のヨアン・グリフィズを抜擢した。舞台となる欧州の俳優を意図的に起用したというが,大作にギャラの安い若手を起用するのは,いつもながらのブラッカイマー流だ。
 ローマ帝国の支配も翳りを見せ,ブリテン(後のイギリス)はサクソンの侵略を受ける危機に瀕していた。ブリテンの愛国者ウォード軍は,ローマ帝国の反逆者ながらも,サクソンに対抗するため,無敵を誇るローマ軍の司令官で,ローマ人の父とブリテン人の母をもつアーサーに希望を託す。彼らの王となってブリテンを守れという訳だ。美しい女戦士グウィネヴィアや6人の「円卓の騎士」とともに,アーサーはサクソンとの運命の戦いの望む,というのが物語の骨子だ。
 VFXの主担当はCinesite (Europe)社で,3度の戦闘シーンにはかなりのディジタル視覚効果を駆使していることが読み取れる。中盤の「氷上の決戦」では,背景の山はいかにもディジタル・マットで,割れる氷や水中に落ちた戦士のシーンはCGを多用している。悪くはないが,最新技術をもってすれば,湖面の氷が割れる様子はもっとスケールの大きな映像にできたはずだ。ここは,湖全体を眺望する圧倒的なスペクタクルが欲しかった。
 ウォード対サクソンの最後の決戦では,『トロイ』にも使用された「Sword Extension」が使われている。激しい戦闘実演シーンでは,危険防止のため兵士に刀なしで戦わせ,後でCGで刃の部分の描き込む手法である。この戦闘シーンも,最近の大作にしてはやや淡泊で,迫力では『トロイ』に敵わない。火矢や火玉もCG映像で描いたというが,予告編から想像したほどの迫力ではなかった(写真)。
   
 
 
写真 火矢,火の玉の大半はCGエフェクトとか
(C) 2004 Touchstone Pictures and Jerry Bruckheimer Films, Inc. All Rights Reserved.
 
     
   監督が黒沢明ファンというだけあって,6人の円卓の騎士は「七人の侍」を意識した演出だ。個々のキャラクタはむしろ「真田十勇士」の方に近い。ただし,各騎士の名前を覚えるほど,個性をじっくり描き込んであるわけでもない。ドラマ性で攻めるでもなし,スペクタクルをウリにするでもなし,J・ブラッカイマーにしては中途半端な大作映画に終わっている。
 キーラ・ナイトレイの美貌は期待通りだったが,アーサー王のクライブ・オーウェンは,この役柄には少し貫録が足りないと感じた。顔立ちは,役所広司に似ている。彼は次期007の本命候補らしいが,むしろジェームス・ボンド役の方が似合いそうだ。『ロード…』は言うに及ばず,『トロイ』に比べてこの映画が小さく見えてしまうのは,VFXのスケールだけでなく,俳優のランクが低いからではないかと思う。ブラピやエリック・バナの存在感,ピーター・オトゥールの枯れた味は,この映画のキャストからは感じられない。『リディック』とは対照的に,使うべきところに製作費を投じていたら,もっと好い映画になっていたのにと惜しまれる。 
   
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