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O plus E誌 2003年12月号掲載
 
 
『ブルース・オールマイティ』
(ユニバーサル映画/UIP配給)
 
       
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2003年11月4日 ナビオTOHOプレックス(完成披露試写会)  
  [12月20日より全国東宝洋画系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  VFXはちゃちだが,映画にはフィットしている  
   北米では『マトリックス リローデッド』『ファインディング・ニモ』に挟まれた週に公開され,見事Box Office 1位にランクされたヒット作だ。興収2億4千万ドルを突破しているというから,大ヒットの部類である。ジム・キャリーの2つの個性,強烈なドタバタ・ギャグとほろりとさせるハートフル・ドラマの二面性がうまくミックスされていたからだろう。私は好きだが,これが日本の観客にどこまで受入れられるか興味深い。
 それを引き出した監督は,『エース・ベンチュラ』(94)『ライアー ライアー』(97)でもコンビを組んだトム・シャドヤック。なるほど,よく息が合っていて,個性の引き出し方を心得ている。相手役はTVシリーズ『フレンズ』で知られるジェニファー・アニストン。ブラッド・ピット夫人と言った方が分かりやすいだろうか。美人というより,ちょっと大人しいめの親しみやすい世話女房タイプだ。表情がどことなく,ダスティン・ホフマンに似ている。ついでながら,アンカーマンを争うライバルのエヴァン(スティーブ・キャレル)は,元ドリフターズの荒井注に実によく似ている。
 ニューヨーク州バッファロー市のローカルテレビ局に勤めるレポーターのブルース・ノーランは,相次ぐ不運に遭遇し,天の神に向って「あんたは職務怠慢だ!」と怒りをたたきつけた。すると本当に神が現われ「私の仕事に不満があるなら,君がやれ!」と言い去って,自分は休暇に入ってしまう。かくして,半信半疑ながら全能のパワーを与えられたブルースは,次々と騒動を引き起こす。忠告に耳を貸してくれないブルースに嫌気がさした恋人のグレースは,彼のもとを去って行く……。というのがあらすじだ。
 この神様役が,何と名優のモーガン・フリーマン。『許されざる者』(92)『ショーシャンクの空に』(94)の名演技はもとより,最近の『トータル・フィアーズ』(02)『ドリーム・キャッチャー』(03)から比べても軽すぎる役だが,この飄々とした味も悪くない。
写真1 全能の神がスープの紅海を2つに割る
 全能の神が乱用するパワーと聞いて想像したように,VFXは少なくない。エンドロールで見たVFXスタジオの名前は控え忘れたが,知らない会社だった。トマト・スープを『十戒』の紅海のように割ってしまうのは,いかにもご愛嬌だ(写真1)。 その他,指が7本になったり,2人でエリー湖の上を歩いたり,ミエミエでVFXと分かりシーンが次々と登場する(写真2)。ナイアガラ滝をバックにした報道,高層ビルやエベレストの上のシーンなど,いかにもクロマキー合成だ。決してレベルは高くない。『陰陽師』といい勝負だ。いや,隕石の墜落シーンなどは『陰陽師II』の天変地異の方がマシだった。
 レベルは低くても使い方は悪くなく,その稚拙さがこの全能の神のぎこちなさ,滑稽さとよく釣り合っていた。使い古された方法だが,最後に出てくるモーフィングも久々だったから新鮮に見えた。それならブルースのオンボロ車が新車に変わるシーンにも使えばいいのに,そこを手抜きしていたのはちょっと残念だ。
 VFXのレベルよりも,神となったブルースが起こす騒動は,もう少しハチャメチャで面白くしても良かったと思う。笑い転げるほどではない。かつてのディズニーの『フラバー』やジム・キャリー自身の『マスク』はもっともっと楽しかった。そこまでしなかったのは,ジム・キャリーが大人になり過ぎたからだろうか。
 バッファローでのロケよりも,その街並みをそっくりユニバーサル・スタジオ内に再現して撮影したという。さすがハリウッドだが,映像的にその効果は余り感じられなかった。
 VFX映画時評としては色々注文をつけたが,いい映画だ。新年にカップルで行くといいだろう。
     
 
写真2 (左)指が7本。(右)エリー湖の上に立つ神様とブルース。そうハイレベルではないが,VFXとしては効果的。
 
 
     
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