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DVD/BD特典映像ガイド
   
O plus E誌 2012年5月号掲載
   
  『ツリー・オブ・ライフ』
 BDのボーナスコンテンツには,予告編以外に「『ツリー・オブ・ライフ』創作の秘密」があるだけだった。30分弱のこの映像の大半は,キャストやスタッフが語るテレンス・マリック監督の人となりに関する敬意や撮影シーンの裏話である。デヴィット・フィンチャーやクリストファー・ノーランといった現代を代表する売れっ子監督たちも,以前からT・マリック監督に深く私淑しているらしく,この映像の冒頭で登場する。
 この映画の大きな部分を占める「宇宙の起源」に関する神秘的な映像の解説は,後半約4分間登場するだけだ。地球上の壮大なシーン,息を飲む美しいシーンは,1970年代から監督が撮り溜めて,冷蔵庫に保管されていた映像を加工して使ったという。なるほど,CGでもなく,現在も実在するとは限らない貴重な映像なのである。勿論,恐竜だけはCG だが,あまり有名でない地味なタイプを選んだらしい。そして,宇宙での出来事を示す摩訶不思議な数々の映像は,SFX史の伝説上の人物ダグ・トランブルの指揮の下,様々な素材を使って制作された。化学薬品,塗料,煙,液体を混在させ,回転盤を使ったり,高速撮影を行ったりの,まさに職人技である。1つずつそのメイキングを見たかったのに,全体で4分は余りに短過ぎる。アカデミー賞視覚効果部門ノミネート作品なら,この程度の解説だけでは不満だ。
   
  『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』
 こちらも視覚効果賞ノミネート作だが,惜しくもオスカーは逃したものの,有力作に相応しく特典映像も充実している。「神話的『猿の惑星』シリーズから現代へ」(7分余)は,旧シリーズのファン向けの本作への導入で,随所に旧作へのオマージュがあったことを知る。
 次なる3編は,当欄の読者必見の特典映像だ。「名優アンディ・サーキス」(8分弱)は,当代随一のMoCap俳優の演技と技術解説で,彼の演技なくしてこの新作が成り立たなかったと感じる。「『猿の惑星』新時代の創造」(10分弱)も価値ある特典映像だ。まさに創造的な本作の名シーンが,しっかりした技術に基づいて制作されたこと知る。とりわけ,皮膚や目の表現も見事だし,制作ツールの進歩にも感心する。「モーション・キャプチャーの最前線」(9分弱)は,MoCap技術の一般的な動向解説ではなく,ゴールデンゲート橋でのクライマックス・シーンのメイキング映像で,まさにVFX史に残る画期的な撮影場面である。解説も丁寧で,記録映像としても価値がある。登場する被写体の多さ,装備の凄さは特筆に値するが,キャリブレーションがすぐできることにも感心した。「類人猿の生態」(約22分半)は,チンパンジー,ゴリラ,オランウータンの生態を描いた科学教養番組だ。暇人で時間があれば見てもよい。
 
   
  『ミッション:8ミニッツ』
 VFX大作ではないものの,Cinefex誌が取り上げた作品だけに少し期待したのだが,特典映像もわずかしかなかった。「キャストと監督に迫る」は,全部で11項目で,全部観ると35分弱かかる。当欄として一瞥する価値があるのは,「列車のセット」だけだった。
 「ポイント解説」は,「記憶の再生」「仮想現実の軍事利用」「量子物理学」「多世界理論」「BCI (Brain Computer Interface」の5項目に分かれているが,全部見ても7分弱しかかからない。本SF作品の科学的根拠がイラスト画風のアニメーションで解説されるが,期待したほど面白くはなかった。「トリビア・トラック」は,映画本編の進行に添って,小さなウィンドウに豆知識が重畳表示されるが,むしろこちらの方が面白かった。
 
   
 
   
   
  (注:本映画時評の評点は,上から☆☆☆,☆☆,☆,★の順で,その中間に+をつけています。)  
   
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