O plus E VFX映画時評 2025年1月号掲載

私の選んだ2024年度ベスト5&10


 過去数年,このページの書き出しは,集計対象範囲の変更とその理由説明ばかりであった。掲載媒体が「紙媒体+電子媒体」から紙媒体が完全になくなり,それに伴う記事の更新頻度が変わったことが主たる原因であった。それも落ちつき,今年の集計対象は昨年と全く同じである。

  (2024年1月号 − GGN2)〜(2024年12月号 + GGN24)
  [注]GGN23=GG賞ノミネート作の未紹介分で,2023年中に試写を観終えた作品数
     GGN24=GG賞ノミネート作の未紹介分で,2024年中に試写を観終えた作品数

なぜ1月号から12月号までの単純合計本数でなく,調整を入れているかも昨年述べたので,繰り返さない。過去3年分と今回の対象作品数の推移は,以下の通りである。

・2021年 メイン 29本(5), 短評 195本(24)
・2022年 メイン 39本(11),短評 229本(28)
・2023年 メイン 38本(10),短評 208本(22)
・2024年 メイン 36本(10),論評 201本(23)
[注]括弧内は評価の本数

 2021年から2022年への作品数増加は,コロナ禍による公開作品数減から回復したためだが,最近の映画興行が安定していることが,この数値からも明らかである。
 さて,Best 5&10だが,昨年の「総合評価部門」のBest 1には,初めて邦画の『ゴジラ−1.0』を選んだ。昨年のこのページでは,「アカデミー賞視覚効果賞部門にノミネートされることを期待したい」と書いたが,それがオスカーまで得たのであるから,まさに快挙である。この映画評としても面目躍如であった。当欄がずっと応援してきた山崎貴監督が一躍「時の人」になられたことは,素直に喜ばしい
 それに比べると,今年は頭1つ抜けた作品がなかった。5作品は難なく抽出できたが,その中での差は小さく,相対評価で『デューン 砂の惑星 PART2』が1位になったに過ぎない。それでも,同シリーズからの2本が1位になったのは,25年間で3例しかない。他の2例は,『ロード・オブ・ザ・リング』(02年3月号)と『同/王の帰還』(04年3月号),『007/カジノ・ロワイヤル』(07年1月号)と『同 スカイフォール』(12年12月号)である。前者は3本中の2本,後者は(当欄の開始以降の)7本中の2本であるから,『デューン』シリーズの2/2は効率よく,優れたシリーズであることが分かる。また,『クリスマスはすぐそこに』を「番外」扱いしたのは,上映時間24分の短編であったためである。かなりの良作であったが,ネット配信ゆえに実現できたものであり,劇場公開の長編と同等には扱うべきでないと考えたからである。
 総合評価部門での選定分を除き,かつ順位なしであるのに,「SFX/VFX技術」の5本の選択には,今年もかなり迷った。作品全体の出来映えを考慮せず,SFX/VFX技術だけでの評価となると,最近の大作は甲乙つけ難いレベルにある。結果的には,アカデミー賞視覚効果賞のShortlist(最終ノミネートの一歩手前の10作品)の中にすっぽり収まった。逆に言えば,当欄の方が枠が狭いので,同リストにあるが,こちらには入れられなかった作品もある。
「その他の一般作品部門」は分母が大きいので,連年通り激戦であり,選択と順位付けに最も時間がかかる。今年の特徴は,10本中5本が,一昨年,昨年のアカデミー賞ノミネート作(即ち,米国では2022年や2023年に公開された映画)になってしまったことである。できれば2024年公開分からもっと選びたかったのだが,日本公開が遅れた作品に良作が多かったためである。良いものは良いのだから,仕方がない。
 邦画に関しては,この6年間,番外分も含めて2作品を押し込んでいたのだが,今年は『あんのこと』1本しか入れられなかった。邦画の力作が増えていると感じているが,止まりが多く,評価には届かないことも影響している。


◆◆総合評価◆◆
 1. デューン 砂の惑星 PART2
 2. シビル・ウォー アメリカ最後の日
 3. 猿の惑星/キングダム
 4. フォールガイ
 5. アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家
番外 クリスマスはすぐそこに

◆◆SFX/VFX技術◆◆(「総合評価」分を除く。公開順で,順位なし)
 ・マッドマックス:フュリオサ
 ・デッドプール&ウルヴァリン
 ・エイリアン:ロムルス
 ・グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
 ・ライオン・キング:ムファサ

◆◆その他の一般作品◆◆
 1. 関心領域
 2. ヒットマン
 3. コット,はじまりの夏
 4. ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ
 5. オッペンハイマー
 6. あんのこと
 7. ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命
 8. SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース
 9. モンキーマン
10. コール・ミー・ダンサー


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