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O plus E 2023年5月号掲載
 
映画サウンドトラック盤ガイド
   
 

■「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 オーサム・ミックス Vol. 3(オリジナル・サウンドトラック)」
(Universal Music)

   
 
オーサム・ミックス(国内盤) Awesome Mix(国際盤) スコア版
 
 
 

 映画本編の紹介から時間が経ってしまったが,GotGシリーズのサントラ盤は特別な存在であるから,当欄として触れない訳には行かない。遅ればせながら書く以上,少し詳しく語ることにしよう。
 劇中で流れる歌唱曲を集めた「ソング版」と,歌なしの劇伴音楽だけの「スコア版」が別売りとなっているのはよくあるパターンだが,このシリーズのソング版は「Awesome Mix」と呼ばれている。前2作のAwesome Mixは,ビルボードのアルバムチャートでそれぞれ1位,4位になっていて,かなりの大ヒットとなった。オリジナル曲はなく,すべて既発表の曲であるから,選曲の見事さが支持されたということになる。今回は,映画自体が3作目の完結編であるから,そのAwesome Mixの選曲にも注目が集まった。
 デジタル配信やデジタル視聴が普通になってしまった音楽業界で,Awesome Mixは,国内外とともに,しっかりCDが発売されている。いずれも17曲収録で,内容的に違いはない。スコア版(26曲収録)はデジタル配信だけのようだ。ちょっと注意されたいのは,国内盤Awesome Mixのアルバム・ジャケットが,国際盤とは全く違っているのに,スコア版とは同じ絵柄なので,買い間違えないことである。
 前2作のアルバム・ジャケットには,カセットテープが描かれていた。主役のピーター・クイル(クリス・プラット)が,亡き母が選んでカセットテープに入れてくれた曲を,形見のSonyウォークマンで常時聴いているという設定であったからである。このため,米国では,CD,アナログLPに加えて,カセットテープ版まで発売されていた。洒落っ気で購入し,昔のウォークマンを取り出してきて,それで聴くGotGファンがかなりいたからだろう。
 ピーターのウォークマンは映画2作目中で壊されてしまい,最後にヨンドゥから別の携帯音楽プレーヤーを手渡される(よく覚えていないが,そうだったようだ)。3作目の完結編では,再三その黒い音楽プレーヤーが登場し,終盤では物語の落とし所で,かなり重要な役割を果たしている。iPod classicに似ているが,少し違うなと思ったら,Microsoftが2006年に発売開始したZune(ズーン)だそうだ。筆者は全く知らなかったが,それもそのはず,北米以外では販売されず,販売面ではiPodに全く太刀打ちできず,2011年10月に生産中止になっている。

 
 
 
 
左から,Zune 30, iPod classic, iPod touch (第7世代)
 
 
  もっとも,初代以来のホィール操作,ハードディスク搭載を守っていたiPod Classicも,2014年9月に販売終了となった。後継機のiPod touchは,携帯電話機能のない小型廉価版iPhoneとでも呼ぶべき仕様であった。これも2022年5月に,在庫限りで販売終了が宣言されている。音楽以外のアプリやデータを多数入れても,容量的にiPhoneには多数の曲を収録する余裕が出来たのと,音楽自体をCloud経由で聴く利用者が増えたためであろう。そのように,音楽を聴くスタイルが変わりつつある中で,マイナーなZuneを前面に登場させたのは,ジェームズ・ガン監督の拘りか,自分が音楽マニアであることのアピールであると思われる。であれば,「Awesome Mix Vol.3」のジャケットにZuneを登場させるべきだと思うのだが,そうはなっていない。これは,既に生産終了のためなのか,Microsoft社との権利関係が解決しなかったためだろうか。さすがに,Vol.3はカセットテープ媒体での楽曲発売はされていない。
 さて,「Awesome Mix Vol.3」の選曲であるが,これは勿論,ジェームズ・ガン監督の専権事項である。完結編とあれば,気合いの入れ方も半端ではなく,一時期パニックになりながら,ようやく候補曲を約180曲に絞り,そこからも数ヶ月かけて,下記の17曲を選んだという。単に好みの曲を選んでいるのではなく,前2作と同様,歌詞が劇中のシーンにフィットする曲を選んでいる。前2作よりもその傾向が強いように思えたから,曲を選んでから,映画内のセリフも少し変えた可能性がある。
 Vol.1,Vol.2は1970年代の曲が中心であったが,Vol.3はかなり選択肢を拡げている。結果的には,1970年代から6曲,1980年代から5曲,1990年代,2000年代,2020年代から各2曲という形になった。それも,誰もが知るヒット曲ではなく,余り知られていないアーティストを選んだり,著名アーティストのアルバム中の知名度の低い曲を選んでいる。

  1. “Creep (Acoustic)”  Radiohead (1992)
  2. “Crazy On You”  Heart (1975)
  3. “Since You Been Gone”  Rainbow (1979)
  4. “In The Meantime”  Spacehog (1995)
  5. “Reasons”  Earth, Wind & Fire (1975)
  6. “Do You Realize??”  The Flaming Lips (2002)
  7. “We Care A Lot”  Faith No More (1985)
  8. “Koinu No Carnival (From “Minute Waltz”)”  EHAMIC (2018)
  9. “I'm Always Chasing Rainbows”  Alice Cooper (1976)
 10. “San Francisco”  The Mowgli's (2012)
 11. “Poor Girl”  X (1983)
 12. “This Is The Day”  The The (1983)
 13. “No Sleep Till Brooklyn”  Beastie Boys (1987)
 14. “Dog Days Are Over”  Florence + The Machine (2008)
 15. “Badlands”  Bruce Springsteen (1978)
 16. “I Will Dare”  The Replacements (1984)
 17. “Come And Get Your Love (Single Version)”  Redbone (1973)

( )内は,原曲の発表年

 軽快なポップス調のロック中心だが,かなりハードなロックもヒップポップもある。音楽好きではあるが,もはや邦楽,洋楽を問わず,お気に入りのアーティスト以外は積極的に聴こうしない筆者には,上記の楽曲を解説する力量はない。楽曲を聴いたことがあるのは,「Earth, Wind & Fire」「Alice Cooper」「Beastie Boys」「Bruce Springsteen」くらいである。それゆえ,こうした隠れた名曲揃いのコンピレーションアルバムは,筆者にも,筆者と同程度の音楽ファンにも,価値があると言える。
 曲目解説は,国内盤のライナーノーツか,ネット上に投稿されている曲目解説記事に譲り,筆者のお気に入りの曲だけをリストアップしておこう。まずは,オープニングクレジットで流れる“Creep (Acoustic)”で,これから始まるバトル前の静けさのように,穏やかで美しいアコースティング版を選んでいるのが心憎い。6曲目の“Do You Realize??”はクリス・プラットのオススメの1曲で,この曲も10曲目の“San Francisco”もギターの伴奏が印象的だ。12曲目の“This Is The Day”は,ピーターの要請でクラグリンがノーウェア全体を移動させ,到着した時に流れていた曲だ。軽快なドラミングと拍手の音が印象的で,よくこんな曲を見つけて来たなと感心する。そして,エンディングでノーウェアの街中で皆が踊り狂うシーンで流れていたのが,14曲目の “Dog Days Are Over”だ。スローで美しい前奏から始まり,コーラスと打音で盛り上げるクライマックスは正に完結編の大団円に相応しい。残る3曲は,エンドロールで流れる曲である。

 
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