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O plus E誌 2019年9・10月号掲載
 
 
ヘルボーイ』
(ライオンズゲート /リージェンツ配給)
      (C)2019 HB PRODUCTIONS, INC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月27日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2019年8月2日 東映試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  リブートで醜悪さは一段と向上,CGもたっぷりだが  
  上質の宇宙ものの次は,定番のアメコミ・ヒーロー映画だ。マーベル・コミックスのアベンジャーズ達が圧倒的なシェアを誇り,DCコミックスのジャスティス・リーグが対抗勢力である業界構図だが,規模はやや小さいながらも第3勢力があった。ダークホース・コミックスがそれで,その代表作品がマイク・ミニョーラ作の「ヘルボーイ」である。映画化された「300」や「シン・シティ」も同社のオリジナル作品だ。
 この「ヘルボーイ(Hellboy)」は,魔界から人間界に召喚された悪魔の子で,「超常現象調査防衛局 (B. P. R. D)」に雇われ,頑丈な体躯と怪力で魔物退治する役目を担っている。ギレルモ・デル・トロ監督で実写映画化された『ヘルボーイ』(04年10月号)では,個性派俳優のロン・パールマンがこのダークヒーローを演じた。同じメンバーで,2作目『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(09年1月号)も製作され,この続編の方が出来が良かった。真っ赤な顔と体の異形の割に愛すべき存在で,念動発火ができる恋人のリズとの掛け合いが面白かった。半魚人のエイブとのコンビも絶妙だった。
 その顔ぶれでの3作目ではなく,今回はリブート作である。即ち,監督も俳優も一新されているし,製作会社も変わっている。監督は大ヒット中のTVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のニール・マーシャルだから,CG/VFXの使い方には慣れているはずだ。ヘルボーイ役のデヴィッド・ハーバーは脇役俳優で,恐らくこれが初の主演作だろう。ロン・パールマンに比べると顎が長く,最初少し違和感があったが,やがて見慣れてくる。むしろ,このルックスの方が原作コミックに近い(写真1)
 
 
 
 
 
写真1 原作コミックは,なるほど顎が長い
 
 
  半魚人エイブは本作には登場せず,魔物退治には霊媒能力のある少女アリス,ジャガーに変身するベン・ダイミョウ少佐との3人組で臨む(写真2)。それぞれサッシャ・レイン,ダニエル・デイ・キムが配されている。いずれも馴染みのない俳優ばかりだが,最強の敵ブラッドクイーンのニムエ役が大物女優だった。『バイオハザード』シリーズ全作で主演を通したミラ・ジョヴォヴィッチである。彼女の存在だけで,本作が引き締まっている。
 
 
 
 
 
写真2 本作では,このトリオで魔物退治する
 
 
  その魔女ニムエは,6世紀の世界で疫病を流布させていたが,アーサー王の聖剣エクスカリバーでバラバラにされ,死体が封印されるところから物語は始まる。時代を経て,第2次世界大戦中に怪僧ラスプーチンの魔術の儀式からヘルボーイが誕生し,ブルーム教授によって育てられる経緯が語られる。そして現代,1500年の眠りから覚めたニムエが世界を破滅させる存在となるが,それを退治できるのはヘルボーイしかいないという訳だ。蘇った最強の敵をアメコミ・ヒーローが倒すというのは,もう何度も登場した定番のストーリーである。
 以下,多用されているSFX&VFXの解説である。
 ■ 前2作同様,ヘルボーイの顔も胸厚の身体も,特殊メイクの産物である。前頭部には角の削り跡が切り株状になっているが,本作では角が生えた姿も登場する(写真3)。これも本物が装着されているが,さぞかし重かったことだろう。それゆえ,この姿で激しく動き回るシーンはCGに置き換えられていると見えた。さすがにアーサー王の冠や聖剣が発する炎はCG製だろう。
 
 
 
 
 
写真3 顔はメイク,角は本物だが,炎はCGだろう
 
 
  ■ ヘルボーイに退治され恨みに思う魔物2人が,ブタ男のグルアガッハ(写真4)と醜怪のバーバ・ヤガ(写真5)である。グルアガッハの頭部はかぶり物がメインだが,豊かな表情は目や口をアニマトロニクス駆動しているようだ。バーバ・ヤガの顔は特殊メイクだが,骨と皮だけの体躯を動かす場面はCG描写だろう(それともアニマトロニクス?)。その他,地中から蘇った死人たちの顔面も特殊メイクで,3人の巨人はメイクや着ぐるみでの実演を,拡大してVFX合成している(写真6)。前2作の魔物達はまだ可愛げがあったが,本作ではいずれも醜悪そのもので,その点では徹底している。
 
 
 
 
 
写真4 ヘルボーイにブタ男にされたグルアガッハ。見かけはむしろ猪だ。 
 
 
 
 
 
写真5 同じく恨みをもつ醜怪のバーバ・ヤガ。ここまで醜悪なメイクは立派。 
 
 
 
 
 
写真6 人喰い巨人は,普通サイズで撮影し,巨大化させて合成
 
 
  ■ ニムエがバラバラになり,部分的に蘇って行く過程の描写も勿論CG/VFXだ。顔半分がないシーンもある。前半は特殊メイク中心だったのに,彼女が覚醒して以降,CGの比率がぐっと増す。ロンドン市内の道路が割れ,CG製の魔物達が登場し,タワーブリッジ等を破壊する(写真7)。こちらも醜悪で,「進撃の巨人」を思い出した。少しユニークだったのは,アリスの口からレディ・ハットンやブルーム教授が現われるシーンだ(写真8)。CG/VFXの主担当はMr. Xで,他にWorldwide FX, Rhythm & Hues, RISE, Goodbye Kansas, Nvizible等が参加している。  
 
 
 
 
写真7 破壊されるタワーブリッジも勿論CG描写だ
 
 
 
 
 
 
 
写真8 霊媒のアリスの口から登場したブルーム教授の霊
(C)2019 HB PRODUCTIONS, INC.
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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