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O plus E誌 2018年2月号掲載
 
 
パディントン2』
(スタジオカナル/ キノフィルムズ配給 )
      (C) P&Co.Ltd./SC 2017
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [1月19日よりTOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー公開中]   2017年12月20日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  前作のイメージを踏襲した良質のファミリー映画  
  言うまでもなく,2年前に公開された『パディントン』(15年12月号)の続編である。余計な副題が付いて,何作目か分からないシリーズ作品が多い中で,このストレートな続編題名は好感が持てる。前作は知名度が高いスヌーピーのフルCG映画とのカップリングで紹介したが,今回は単独で,堂々のトップ記事での紹介である。前作のスマッシュヒットで知名度も上がった。プロモーション目的での利用やキャラクター商品の種類も急増している。特に縫いぐるみ市場で好調で,他の裸のクマと比べ,赤い帽子と青いダッフルコートを身に着けていることが大きな差別化要因になっているようだ。
 前作の公開時に調査したところ,若者に対する知名度は低かった。一方,中年以上は,四半世紀以上前に旧三井銀行の通帳やキャッシュカードに使われていたことを記憶している人が少なくなかった。筆者自身,太陽神戸三井銀行やさくら銀行になってからも,同じカードを使い続けていた記憶がある。それゆえ,前作に肩入れしたかと言われれば,その通りだ。有力キャラクターのもつ宣伝効果の威力である。ブランド名とイメージが最大の競争力である以上,使われ方や品質にも厳しい点検が入っているはずで,これは映画にも通じる。
 前作では,南米のペルーから船で英国にやって来たクマが,ロンドンのパディントン駅でブラウン夫妻一家と出会い,駅名を名付けられ,同家で過ごすことになる経緯が描かれていた。表情も可愛く,米国の中年の下品なオヤジグマの「テッド」と比べて,礼儀正しい「パディントン」はファミリー映画にぴったりだった。まさに絵本でのブランドを大切にした描き方だと言える。
 続編も当然その路線を踏襲している。映画の冒頭シーケンスは時間を3年前に戻し,ペルーのジャングルの川で流されていた子グマが,老夫婦に助けられるシーンから始まる。パディントンの表情はまだ幼く,一段と可愛い。本作の主テーマが育ての親であるルーシーおばさんを100歳の誕生日にロンドンに招待することであるから,その出会いが先に描かれている。急流や大きな滝のCG描写も上質で,さすが劇場公開映画の品質だと早々に感心させる役割も果たしている。
 誕生日プレゼントに素敵な飛び出す絵本を見つけるが,世界に1冊しかないこの絵本が盗まれる。その現場に居合わせたパディントンが逮捕され,有罪判決が下され,刑務所に送られてしまう。いくら何でも絵本1冊で刑務所送りは理不尽だが,まあ童話だから許すことにしよう。勿論,後半で真犯人を突き止め,無実を証明してメデタシ,メデタシとなる。前作のRotten Tomatoesの満足度評点は98%だったが,本作は100%だ。凄い。
 監督のポール・キング,声の主演のベン・ウィショーをはじめ,主要キャストもスタッフも続投している。悪役は前作ではニコール・キッドマンだったが,本作では英国の人気俳優ヒュー・グラントが犯人役を演じる。と言っても,憎めない敵役で,変装のための各種コスプレは抱腹絶倒ものだ。ファミリー映画に徹しているため重厚感はないが,それを知った上で観れば,満足度は高い。以下,当欄の視点での論評である。
 ■ 前作ではクマのCG表現自体を褒めたが,もはやそれは当たり前に思える。それでも,各衣服の質感表現は丁寧に描かれている(写真1)。デザイン的にはピンクの囚人服が出色だ(写真2)。もう少し細いストライプにして,ボーダー柄で売り出せば,人気商品になることだろう。街を歩くパディントンは,見事に英国の市街地風景に溶け込んでいる。どこまでが実写かCGか見分けられない。部屋内の調度類も移動サーカスの描写も充実している。いずれもカラフルで,美術班の奮闘が感じられる。
 
 
 
 
 
写真1 毛並みも衣服の質感もさらに向上した
 
 
 
 
 
 
 
写真2 ピンクの囚人服がお洒落。この柄がヒットしそう。
 
 
  ■ VFXの見どころは大きく3つある。まずルーシーおばさんを案内する想像シーンで,ロンドンの街を飛び出す絵本風に描いている。人々や建物を衝立風に描く手法で,スクリーン全体が贅沢な絵本のようだ。2つ目は刑務所からの脱走シーンで,スピーディかつVFXならではの描写が活かされている。脱走成功後に気球から見下ろすロンドンの夜景も美しい。
 ■ 3つ目は,終盤の走る列車内や列車上でのアクションシーンだ(写真3)。並走する2台の列車を活用し,楽しく描いている。迫力よりも,子供番組風のドタバタ劇の味付けが濃い。フルCGも合成もありで,勿論VFXの活躍の場である。The Third FloorとProofの強力2社が起用されていて,プレビズに力を入れたことが分かる。CG/VFXの主担当は前作同様Framestoreだが,副担当はDouble NegativeからRodeo FXに変わり,他にOne of Us,Hydraulx等が参加している。
 
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写真3 終盤は2台の列車を使ったVFXアクション
(C) 2017 STUDIOCANAL S.A.S All Rights Reserved.
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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