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O plus E誌 2018年1月号掲載
 
 
キングスマン:ゴールデン・サークル』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [1月5日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2017年11月14日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  出演者もVFXもパワーアップだが,少しやり過ぎか…  
  洒落っ気,遊び心満載の英国製スパイ映画の2作目である。著名スパイ映画のパロディ的色彩も強い。といっても,『オースティン・パワーズ』シリーズや『ジョニー・イングリッシュ』シリーズのようなおふざけ一辺倒の映画ではない。アクションもVFXも満載の大作なのだが,ユーモアの盛り込み方はB級作品並みだ。監督は前作と同じくマシュー・ヴォーンで,まずは続編を作ってくれたことを素直に喜んでおこう。
 表向けは高級紳士服店で,地下にスパイ組織の拠点がある「キングスマン」だが,前作から1年後に,見習いだったエグジー(タロン・エガートン)は立派に独り立ちしている。本作の敵は世界の麻薬市場を制覇した「ゴールデン・サークル」で,彼らの攻撃でキングスマンの根城は壊滅状態になり,残ったのはエグジーと教官兼メカ担当のマーリン(マーク・ストロング)の2人だけになってしまう。2人は敵を追って米国に渡り,同盟組織「ステイツマン」の協力を得る作戦を採る。
 予告編にもポスターにも登場しているのでサプライズではないが,前作で死んだはずのハリー(コリン・ファース)が生きていて,しっかり再登場する。ただし,片目を失い,記憶喪失という設定だ。敵側では,キングスマンの元候補生で裏切り者のチャーリー(エドワード・ホルクロフト)も実は生きていて,冒頭から登場する。こちらは右腕をなくし,強力なロボットアームを義手としている(写真1)。ゴールデンアームの女ボスであるポピー(ジュリアン・ムーア)の「右腕」という位置づけだ。平気で死んだり,生かしたり,全くご都合主義の台本である。ポピーも驚くべき性格の持ち主だ。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 チャーリーは強力ロボットアームで再登場
 
 
  ステイツマンは,表向きはケンタッキー州にあるバーボン・ウイスキーの製造元であり,登場人物にはテキーラ(チャニング・テイタム),シャンパン(ジェフ・ブリッジス),ジンジャー(ハル・ベリー),ウイスキー(ペドロ・パスカル)等の名が与えられている。これだけの豪華助演陣の配役名が酒の名称とは呆れ返る。
 エグジーの恋人,スウェーデン王女ティルデ役は同国の女優ハンナ・アルストロムが演じている。前作にも顔を見せていたが,エイミー・アダムス似の美女で,とても実年齢が36歳には見えない。サプライズは,エルトン・ジョンが本人役で登場することで,これが実に奇妙奇天烈な役どころだ。彼も少し歌うが,舞台がケンタッキー州とあって,ジョン・デンバーの楽曲が多用されている。他作品でも,彼の曲がよく使われるが,これはどういう理由からなのだろうか?
 以上のように要点をまとめてもサッパリ面白くないだろうから,スパイ映画好きも,ギャグ映画好きも一見してみることを勧める。ただし,本作を観た後は,ハンバーガーを口にしたくなくなるから,要注意だ。
 以下,当欄の視点での感想と評価である。
 ■ 冒頭シーケンスは,チャーリーがエグジーを襲うカーアクションだが,なかなか好い出来だ(写真2)。もぎ取られたはずのロボットアームが,その後どういう働きをするかは見ものの1つだ。ロボット関連で言えば,後半ポピー邸で登場する2匹のロボット犬(写真3)は動きが敏捷であり,スーパーモデルのポーズをとる「ビューティ・ボット」(写真4)は笑いを誘う。監督夫人のアイデアだそうだ。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 冒頭のカーアクションは,しっかりデザインされている。人物はいずれも合成。
 
 
 
 
 
写真3 ポピー邸で飼われている獰猛なロボット犬
 
 
 
 
 
写真4 1980年代のスーパーモデルを模したビューティ・ボット
 
 
  ■ 小道具は前作同様多彩であり,様々な仕掛けが待っている。前作で好評だった特別仕様の傘とアタッシュケースも再度活躍する(写真5)。人を生き返らせるアルファ・ジェルもアイデアとしては抜群だ。ステイツマンの蒸留所の建物の形状にもニヤリとさせられてしまう。全編でCG/VFXは多過ぎるくらい多く,ちょっとやり過ぎかと感じるほどだ。主担当はSony Pictures Imageworksで,他にFramestore, The Senate Visual Effects, BUF, MPC, Milk Visual Effects, Argon FX等が参加している。
 
 
 
 
 
写真5 前作で活躍した傘とアタッシュケースが再登場する
 
 
  ■ そんな盛り沢山の中で,語るに値するシーンが2ヶ所ある。1つは,後半登場するアルプスの山頂から下るロープウェイのシーケンスだ。ゴンドラがスピンし,雪山に落下する(写真6)。CGで描いたゴンドラの外観も,客室内での2人の動きも見事な合成だ(写真7)。もう1つは,麻薬患者を入れておく檻とそれを多数収容する巨大倉庫の光景である。CGで何でも描けるようになったとはいえ,このビジュアルには圧倒される。  
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写真6 ワイヤーもゴンドラもCG製で,雪山シーンに合成されている(下)
 
 
 
 
 
 
 
写真7 空のゴンドラをバックに(上),中の2人を別撮りして合成した(下)
(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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