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O plus E誌 2015年12月号掲載
 
 
007 スペクター』
(MGM映画&コロンビア 映画/SPE配給 )
      SPECTRE (C) 2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. Danjaq, LLC and Columbia Pictures Industries, Inc.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [12月4日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2015年11月10日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  リニューアル4作目で,チームもビランも出揃った  
  シリーズ24作目にして,6代目ジェームズ・ボンドとしてダニエル・クレイグが起用されての4作目である。前作『007 スカイフォール』(12年12月号)は,本シリーズ生誕50周年記念作品ということで,かなり気合いが入っていた。シリーズ最高作品と言える大力作で,当欄の年間ベスト1に選んだほどだ。
 早いもので丸3年が経ち,ダニエル=ボンドが帰ってきた。ピシッと決めたトム・フォード製のスーツ姿もすっかり板に付いてきた。この間,脚本がネット経由で流出したとの噂もあったが,それで脚本が書き換えられたのかは知らない。監督は,前作と同じサム・メンデス。前作の好評ゆえの続投で,彼のスケジュールが空くのを待って,本作が本格始動したそうだ。
 6代目ボンド登場時の第21作『007/カジノ・ロワイヤル』(07年1月号)でシリーズをリニューアルし,ボンド役以外の出演者も一新した。唯一5代目時代から続いていたジュディ・デンチ演じる上司Mは,前作で死んでしまった。前作の評の最後で,レイフ・ファインズが昇格して新M役になることと,ナオミ・ハリスがマネペニー嬢を続けることを期待しておいたが,その通りになった。前作から登場し,ぐっと若返ったQも引き続きベン・ウィショーが演じている。007を支えるチームの陣容は,これで固定化されたと考えられる。
 もう1つの注目は,表題の「スペクター」だ。宿敵の犯罪組織名であり,長年のファンなら,その首領ブロフェルドの名前をすぐ思い出すことだろう。過去7作品に登場し,(姿形は結構違っていたが)いつも白いペルシャ猫を抱いていた悪の権化である。予告編を見ると,クリストフ・ヴァルツが悪役で登場することが分かる。果たして彼がブロフェルドなのか,それともさらなる黒幕がブロフェルドとして登場するのかも,興味の的だ。
 ボンド・ガールは2人で,『マレーナ』(00)のモニカ・ベルッチと『アデル,ブルーは熱い色』(13)のレア・セドゥだ。M・ベルッチはボンド・ガールの最年長の51歳だが,妖艶な魅力は健在だ。一方のL・セドゥはさして美人と思わなかったのだが,列車内でのイブニング・ドレス姿にすっかり見惚れてしまった。
 アクション・シーンの見せ場は多々有るが,以下当欄の視点からの感想である。
 ■ オープニング・シーケンスが刺激的で,CG/VFXのオンパレードであるのは最近の大作の定番だが,本作もクライマックス・シーン以上に見どころ満載だった。メキシコシティで年に一度の祝祭「死者の日」のカラフルなシーンから始まる(写真1)。仮装した男女カップルを追う長回しのショットは,ホテルに入り,エレベータで上がり,部屋からベランダの外まで続くが,途中2度(それ以上?)巧みに繋いであると見てとれた。その後のホテル壁際の歩行,向かいのビルの倒壊,激しく旋回するヘリから見た広場の大群衆(写真2)等々は,勿論VFXの活躍場面である。ここでのヘリでの曲芸飛行は凄まじい。どこまでが軽量双発ヘリBo105の実機で,どこからCGで補っているのか,全く見分けがつかない。
 
 
 
 
 
写真1 エキストラ1520人を動員して「死者の祭」を撮影
 
 
 
 
 
写真2 ソカロ広場上空での曲芸飛行は最大のみどころ
 
 
  ■ 次なる見せ場は,オーストリアの山中での追撃(写真3),ローマ市中でのカーチェイス,列車内での格闘と続く。こちらも生身の演技をVFXで誇張してあるのは言うまでもない。本作のボンド・カーは,アストンマーティンDB10。そのスタイリッシュで,精悍な勇姿に痺れる(写真4)。市販モデルではなく,贅沢にも,この映画のために10台だけ製造され,納品されたそうだ。
 
 
 
 
 
写真3 オーストリアの山中では,軽飛行機ブリトンノーマンBN-2を操縦して敵を追う
 
 
 
 
 
写真4 ローマ市内を疾走するアストンマーティンDB10に痺れる
SPECTRE (C) 2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc., Danjaq, LLC and Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved
 
 
  ■ アフリカの砂漠の中にある想定のスペクターの秘密基地は,モロッコで撮影された。奇妙な形の砂山も,その中に建つ建物も大半はCGの産物である。その中での数々のアクション・シーンから,ボンドらが間一髪で脱出した直後の大爆発まで,悪くはないのだが,余り新味はなく,当欄としてはやや物足りなかった。CG/VFXは,勿論英国勢が中心で,主担当はDouble Negative,副担当はMPCだ。その他Cinesite, Peerless Camera, Bluepot, Propshop等の名前があったが,VFXスタッフの数は,最近の大作としてはそう多い方ではない。
 ■ 物語は,少しミステリータッチで進行する。ボンドが少年時代を過ごした施設スカイフォールにまつわる話も登場し,前作とも繋がっている。かつてのようなお気楽なラブとアクションの娯楽映画ではなく,しっかりとした物語性があり,それでいてファン・サービスも随所に盛り込まれているのも好感が持てる。トータルでは,前作ほどの満足度はないが,最近1作おきに意欲作が登場しているので,次作が楽しみだ。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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