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O plus E誌 2015年9月号掲載
 
 
テッド2』
(ユニバーサル映画 /東宝東和配給 )
      (C) Universal Pictures
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [8月28日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2015年7月30日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
   
 
ピクセル』

(コロンビア映画)

     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月12日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2015年8月6日 SPE試写室(東京)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新旧人気キャラたちの再登場だが,ファン層は異なる  
  2組目の括り方は,少しこじつけめいていて苦しいが,キャラクター中心の映画2本である。片や,クマのぬいぐるみが言葉を話し,それも下品な中年男という設定がウケた『テッド』(13年2月号)の続編である。もう1本は,1980年代前半のアーケード・ゲームの人気キャラたちが3D-CGで登場する。それぞれ固定ファンはいるだろうが,観客セグメントが狭そうなので,一般向け娯楽作品に仕上がっているかがポイントだ。
 
 
  テッドの人権を巡る裁判は,ゴラム似の女性が弁護人  
  予告編でのナレーションは「皆さんは覚えているだろうか? 世界中の女性を虜にした……このオッサンを」だった。いくら外見はテディベアだろうと,下ネタだらけの下品な中年オヤジが,本当に女性群にウケたのだろうか? R15+指定であったから,ファミリーでは見に行けないし,デートムービーにも適さない。実は下ネタ好きの同じオヤジ世代か,女性でも子育ての終わった熟年層に限られるのではないか,と感じた。
 ところが,販売中の関連グッズを見ると,ぬいぐるみ人形だけでなく,Tシャツ,エプロン,帽子も売られていて,結構可愛く,どれも欲しくなる。なるほど,女性にもモテそうだ。しゃべる人形も過激な「R-レイテッド版」と大人しい「クリーン版」の2種類あるようだ。同じ東宝東和配給の『ミニオンズ』(15年8月号)とは,グッズ販売でも好勝負しているとのことである。
 1作目は意外性でウケ,グッズ販売も好調であっても,映画は2作目となるとネタ的に苦しいのではと思ったのだが,何と,人形のクマが結婚し(写真1),挙句の果てに子供まで作る(写真2)という呆れた作戦できた。それを合衆国政府に否定され,テッドが人間同等であるかどうかを争う法廷劇が始まるという。いくら訴訟好きの米国とはいえ,そんな裁判にまで陪審員がつくとは……。
 
 
 
 
 
写真1 バイト先でナンパした彼女とついに結婚
 
 
 
 
 
写真2 結婚した挙句に,子供まで作る気だという
 
 
  監督・脚本兼テッドの声役は,前作に引き続きセス・マクファーレンだ。親友のジョン(マーク・ウォールバーグ),テッドの恋人から結婚に至るタミ・リン(ジェシカ・バース)も継続登板である。新顔では,女性新米弁護士サマンサ役でアマンダ・セイフライドが登場する。劇中,彼女を「ゴラムの目をもつ女」と揶揄する場面が出て来る。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズに登場する奇妙な生物だが,成程よく似ている。大きな眼球や鮮やかなブルーの瞳がそっくりだ(写真3)。この顔面相似形を発見した人は実に炯眼だと思う。その後,彼女の主演作(次号で紹介)を観たが,常にゴラムを意識してしまった。
 
 
 
 
 
写真3 ゴラムとアマンダ。なるほど,目がそっくりだ。
 
 
  さて,映画の中身はと言えば,1作目のようなジョンの夢がかなうファンタジーもなければ,中年オヤジというキャラ設定のサプライズもないので,いささか苦しい。人形のクマが子供まで欲しがるというバカバカしさに徹して,相変わらずの下ネタの連発だが,固有名詞も次々と出て来る。恐らく,アメリカのTVでお馴染みの人物や時事・風俗をネタにしたギャグなのだろうが,残念ながら普通の日本人には通じない。それでも,コミコン会場でのコスプレやドタバタ騒動はよくデザインされていて,かなり楽しめた。
 CG/VFXは,Ilouraと前作の主担当であったTippett Studioの2社体制だ。既にテッドの基本モデリングは出来上がっているから,眉と口だけで感情を表現するテクニックも手慣れたものである(写真4)(写真5)。身体全体の動きは,一段と進化しているように見えた。本当にテッドが歩いているようにしか見えない。当然,監督のセス・マクファーレン自身のパフォーマンス・キャプチャを利用しているはずだが,演じる側の動作も身長の違いを吸収してデータ変換する技も,ともに向上したためだろう。ここまで書いてから気がついた。きっと監督は演じる際にアンディ・サーキスが演じるゴラムの動きを参考にしたはずだから,ゴラムとアマンダが似ているのは,この時に気付いたのだと推察する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真4 (上)背景セット,(中)人形を置いてカメリハ,(下)CG製のテッドはしっかり演技している
 
 
 
 
 
写真5 こちらは驚き呆れた表情。動きも自然。
(C) Universal Pictures
 
 
  テッドにばかり注目が集まり,ジョンの存在感が薄い。前作の紹介記事にも書いたが,次項の『ピクセル』を観て,改めてこのダメ男はアダム・サンドラーの方が似合っていると感じた。
 
 
  かつてのゲーム・キャラが3D-CG化され,地球を襲う  
   もう1本の『ピクセル』は,ビデオゲーム世界のキャラが多数登場するハリウッド製の実写映画だが,当然ゲーマーたちが主ターゲットである。それも1980年代にヒットしたアーケード・ゲーム機用ソフトに限定されているので,かなり対象が狭い。もっとも,この時代のヒット作は,後にファミコン,PC,ゲームボーイから,最近ではiPhoneにまで移植されているので,知名度は高く,当時のゲームオタクだけでなく,後年のファンも期待しているのだろう。
 時代はピンポイントの1982年で,NASAが主催したビデオゲーム・コンテスト(そんなものあったのか?)の舞台から始まる。その時NASAが人気ゲームの映像を親善のため,宇宙に向けて発信した。それを宣戦布告と受け取った異星人たちは,ゲームのキャラを兵器として再現し,2015年に地球に送り込んで来る。大統領の依頼で,かつてのオタクゲーマーたちが地球防衛のために立ち上がる……。といったバカバカしい筋立てだ。
 ナムコの「パックマン」「ギャラガ」,任天堂の「ドンキーコング」,タイトーの「スペースインベーダー」,コナミの「フロッガー」等が登場するが,米国でも日本製ゲームばかりが流行していたようだ(知らなかった)。開発元の垣根を越えてキャラ達が共演するのは,ファンにとって喜ばしいことだろう。マスコミ用試写では,冒頭から興奮気味で,頷きながら,身を乗り出して見ている人が何名かいた。業界内にも,このゲーマー世代の記者やライターが大勢いるのだろう。
 監督はクリス・コロンバス。もっと無名の監督を想像したが,『ホームアローン』シリーズ,『ハリー・ポッター』シリーズでお馴染みの大物がメガホンを取ったとは驚いた。筆者より一世代下であり,製作総指揮兼主演のアダム・サンドラー共々,彼らもこのゲーマー世代で,格別の思い入れがあるのだろうか。
 上述のキャラ達は3D-CG化され,実写に合成されているが,意図的にポリゴン数は粗く,ブロックが目立つようにデザインされている(写真6)。彼らが地球上の物を破壊すると,キューブ状に分解されてしまう。徹底してデジタルを強調している訳だ。ちなみに,「ピクセル」(Pixel)とは"Picture Element"の略で「画素」と訳し,通常は正方形の要素である。3次元でキューブ状の要素なら,「ボクセル」(Volume Element; Voxel)と言うべきで,「体素」と訳す。あまり一般的ではないので表題は「ピクセル」に留めたのだろう。もっとも,80年代のゲームはまだ2D-CGだから,その要素はピクセルで正しい。
 
 
 
 
 
写真6 オレンジ色のQバートは米国での人気者
 
 
  前半の到来キャラの主役はパックマンだ(写真7)。正義の味方のイメージであったのに,敵役とは珍しい。その分,憎々しい,残虐な侵略者に描けなかったのか,むしろ愛らしさすら感じる。クライマックスのボスキャラは,予想通りドンキーコングだった(写真8)。NYの街だから当然キングコングをイメージし,かつてのゲーム画面を思い出させる構図である。CG/VFXの主担当はDigital Domain 3.0で,卒なく作り上げているが,娯楽映画としては淡泊で,最近のマーベル作品を見慣れた目には,バトルが物足りなく感じてしまった。
 
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写真7 あのパックマンが,NYの街に悪役で登場
 
 
 
 
 
写真8 真打ちで登場するのは,3Dのドンキーコング
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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