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O plus E誌 2015年1月号掲載
 
 
シン・シティ 復讐の女神』
(ディメンジョン・フィ ルムズ/ギャガ配給 )
      (C) 2014 Maddartico Limited
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [1月10日よりTOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー公開予定]   2014年11月14日 ギャガ試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  9年ぶりの復活は,同じテイストで不思議な3D体験  
  前作『シン・シティ』を紹介したのは2005年10月号だったから,約9年ぶりの続編の登場である。ここまで間が空いたのは,最近アメコミの映画化大作のラッシュなので,間隙を突いて,一風変わった本シリーズの投入するタイミングを計っていたためだろうか。原作は,グラフィック・ノベルと呼ばれる大人向きのコミックで,1990年代に登場した人気作である。前作で話題となったのは,『スパイキッズ』シリーズの監督ロバート・ロドリゲスが,脚本・製作・撮影・編集・音楽までも担当する上に,原作者のフランク・ミラー自らも,監督・脚本・製作で共同参加したことだ。即ち,原作に惚れ込んだ監督と原作者自身が,がっちりとタッグを組んで映画化した訳なので,原作のテイストを維持し,映画ならではの調味料が思いっきり振りかけられている。
 できれば,前作の評(紹介文)を読んで頂きたい。色々な意味での「既視感」が溢れる映像だと述べ,その理由を分析し,「コミック以上のコミック感覚が斬新」と記した。本作は,共同監督の2人が,そのまま前作の役割を踏襲した続編であるから,さらに既視感が増していることは間違いない。その既視感を前提とし,前作の第3話の出来事の後日譚を大きな柱としているので,未見の読者は,前作を観てから本作に臨んだ方が良い。公開が近づくと,おそらく映画専門チャンネル等で前作が放映されるであろうが,それが叶わないなら,レンタルビデオでも良い。DVDを購入するなら,特典映像ディスク付きの2枚組を勧めておきたい。
 元々,この映画を劇場で観るファンのDVD購入率はかなり高いはずだ。少し癖のある映画で,カルト的人気がある。いや,少しどころか,かなり好みが分かれる類いに属し,万人受けする映画ではない。このシリーズは,それでいい。筆者自身は,総合点で高い評価は与えていないものの,個人的には「好き」な部類に入る。
 最大の特長は,ほぼ全編モノクロ基調であり,口紅,ドレス,クルマ等だけに色をつけた「パートカラー」もしくは「1ポイントカラー」と呼ばれる表現法を採用していることだ(写真1)。付された色は赤が多いが,時に青いジャケットや金髪の人物も登場する(写真2)。前作同様,照明の一部や爆発にも色を付け,その照り返しにも淡い色をつけて独特の味わいを出している(写真3) 。この手口は何度も使うと嫌になるので,早い者勝ちだと書いたが,前作以降,メジャー作品でこれを真似る作品は登場せず,まさに独自の世界を築いている。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 前作同様,パートカラーが冴え渡る
 
 
 
 
 
写真2 時には,この色の1ポイントカラーも登場する
 
 
 
 
 
 
 
 
写真3 炎もカラーで,その照り返しもしっかりと
 
 
 
  前作に引続き登場するのは,ジェシカ・アルバ,ミッキー・ローク,ロザリオ・ドーソン,パワーズ・ブース等々だが,新たにジョシュ・ブローリン,ジョセフ・ゴードン=レヴィット,エヴァ・グリーンらが出演している。前作の最後に命を絶った刑事役のブルース・ウィリスは,主人公のナンシーが見る幻影として登場する。これじゃ,まるで『シックス・センス』(99)だ。前作が3部構成であったのに対し,本作は4部構成である。その最終章が,今は亡き,愛した刑事のために果たすナンシーの復讐劇であり,本作の副題となっている。
 当欄としての見どころは,次の2点である。
 ■ 前作では60%強がスタジオ内でのグリーンバック撮影であったが,本作は全編をその撮影方法で撮ったそうだ。即ち,実写は俳優の演技とほんの少しの手元の小道具だけである(写真4)。その分,表現の自由度も増えたためか,背景の描き込みも凝っている上,カメラの切り替えも早い。まるで,劇画のコマ割りを観ているかのような感覚だ。ビジュアル的には,より個性的になったが,その半面,各パートの語り手のナレーションが饒舌過ぎ,煩わしく感じる。セリフの多い吹き出しを読まされるかのようだ。ここは,寡黙なハードボイルド・タッチの方が,余韻を与えられ,「罪の町」らしかったかと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真4 全編をグリーンバックで撮影し,コントラストの強いモノクロ背景映像を合成
(C) 2014 Maddartico Limited. All Rights Reserved.
 
 
  ■ 当初観た試写は2D版だったが,後日3D版の試写会も追加されたので,改めて足を運んだ。オール・グリーンバック撮影なら,当然「フェイク3D」だろうと思ったのだが,2台のカメラで「リアル3D」撮影されていた。その点は好感が持てたが,あまり露骨な飛び出し感は多用していない。かと言って,立体感が乏しい訳ではない。背景部のモノクロのコントラストが強く,パンフォーカスでそれが目立つ上に,両眼立体視による立体感が加わるのだから,他で観たこともない,不思議なビジュアル体験だ。3Dであるのに,何故か2D静止画の劇画に近い感覚なのである。筆者はまだ,この3D映像の意味と意義を正しく分析・評価できていない。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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