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plus E誌 2014年9月号掲載 |
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『テロ,ライブ』
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(ロッテエンターテインメント
/ミッドシップ&ツイン配給
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(C) 2013 LOTTE ENTERTAINMENT
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オフィシャルサイト[日本語] |
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[8月30日よりヒューマントラストシネマ渋谷他全国順次ロードショー予定] |
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2014年7月10日 GAGA試写室(大阪)
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(注:本映画時評の評点は,上から,,,の順で,その中間にをつけています。) |
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先が読めない展開,ライブ感満喫の上質サスペンス |
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| 先月号で巨大竜巻を描いたパニック映画『イントゥ・ザ・ストーム』のことを,「予想外に面白い映画。期待しなかった分,余計に楽しめた作品」と書いたが,本作もまたその範疇に入る映画である。監督は無名,主演男優もさほどのスターではなく,上映時間はわずか98分というから,B級作品としか思いようがなかった。さらに,韓国映画で『テロ,ライブ』という題名からは,何やら凄惨で,殺伐とした映画を想像してしまった。もし同じ印象をもっておられる読者がおられるならば,本稿を読んで考え直して頂きたい。
題名自体に誤りはない。確かに,爆弾テロは発生する。TV局の元人気キャスターに,テロリストから爆破予告の電話がかかり,まもなくそれは単なるイタズラ電話ではなく,実際に迫り来る恐怖だと分かる。ここからはまさにライブ中継,リアルタイム展開で,上映時間目一杯まで同時進行で物語が進展する。最近の映画は2時間超も珍しくないが,昔の大衆映画の大半は90分前後だった。今でも,映画の面白さを引き出した緊迫感のある作品は,この長さだというファンは少なくない。その意味で,まさに息詰まる攻防の98分間である。
テロリストからの要求はただ1つ,2年前の橋の補修工事で事故死した労働者3名への「大統領からの謝罪」だった。このユニークな要求の知能犯に対して,キャスターのユン・ヨンファは現役復帰の野心から交渉役を務めることになり,TV局の報道局長は独占生中継で視聴率獲得を目論む。即ち,「交渉人もの」の面白さと,「TV局の内幕暴露」の面白さが加わり,極上のエンターテインメントに仕上がっている。特に,TV局の制作現場の生々しい雰囲気がリアルに描かれている。
監督・脚本は,これが商業映画のデビューとなるキム・ビョンウ。なるほど無名な訳だが,これだけの脚本執筆,テンポが良い演出ができる才能は,大したものだ。韓国では,名のある映画賞の新人監督賞,脚本賞等をいくつも受賞しているというから,既に注目株となっているようだ。今後も,この監督の名前はしかと記憶に留めておくことにしよう。
キャスターのヨンファ役を演じるのは,『チェイサー』(09年5月号)のハ・ジョンウ。同作の元刑事役での風貌を桑田佳祐に似ていると書いたが,あの男優である。本作ではあまり似ていなくて,きちんとした身なりでキャスター席に着くと,凛々しい,なかなかのイケメンだ。ほぼ独演に近い彼の演技力も,本作をキレの良い作品に仕立てる大きな要因となっている。
さて,当欄が取り上げるからには,しっかりCG/VFXシーンが組み込まれていた。まずは,予告直後に起こる麻浦大橋の爆破シーンである(写真1)。最近のVFX技術をもってすれば,この爆発炎上はさほど難しくないが,この爆発なしで本作は始まらないから,実に効果的で価値のあるCG/VFX利用だ。単に橋を爆破するだけでなく,橋の上のクルマの混乱,橋桁が傾く様までも克明に描いている。なかなかの配慮だ。その後も,爆破後の橋周辺の様子,白いクルマが転落する様などを,局内のモニター画面上で見せている(写真2)。ライブ感を与える上で,これも効果的な演出だ。
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| (ネタバレになるので,余り詳しく書けないが)後半のビルが爆破され,噴煙が舞い上がり,隣のビルへと傾くシーンも,上質のVFXであった(写真3) 。CG/VFXの担当は,Macrograph,Digital Idea,Atomの3社だ。全社を併せてもVFXシーンはそう多くないが,限られた製作費で見せ場を作る腕も,この監督の才能のなせる技だなと感心した。
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写真3 後半登場するこのVFXシーン,どう展開するかは観てのお愉しみ
(C) 2013 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
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| 先が読めない展開から,意外性を出しつつ,最後の落しどころも悪くない。韓国政府,マスメディアをこき下ろしながら,ヒューマン・ドラマの隠し味も盛り込んだ,なかなかの傑作だと評しておきたい。 | |
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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