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O plus E誌 2013年9月号掲載
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『貞子3D2』:『リング』シリーズから生まれたJホラーの大スター「貞子」をスピンオフさせた前作(12)は,本誌には掲載せず,Webページのみの紹介で酷評した。懲りもせず,またこの続編を観てしまった。前作から5年後が舞台だが,案の上,安直な脚本だ。3D効果も感心しないし,全く怖くない。ヒロインの瀧本美織が可愛いので,せめて☆にしたかったのだが,やはり★で,日本ラジー賞があるなら,その最有力候補と言わざるを得ないレベルだった。映画館では,上映中に手持ちの携帯電話の電源をONすると,そこに恐怖の動画が配信される「スマ4D」なるサービスもあるらしい。もはや小中学生対象のコンテンツ化したとはいえ,これが真っ当な映画なのだろうか? 世界を震撼させたあのJホラーの香りと誇りは何処に行ってしまったか。
 ■『オン・ザ・ロード』:原作は,1950年代から60年代のアメリカ文学を牽引したビート・ジェネレーションの中心人物であるジャック・ケルアックの代表作「路上」だ。この作家の実体験を基にし,登場人物も同世代の作家たちがモデルとなっている。セックスやドラッグに興じる若者たちの破天荒な生き方を描き,文字通り,アメリカ大陸を横断する青春ロード・ムービーだ。早々と映画化権を得ていたのは,製作総指揮のフランシス・F・コッポラで,何度もの難産の末,監督に選ばれたのは『モーターサイクル・ダイアリーズ』(03)のウォルター・サレスだった。若手実力派の豪華俳優陣を配して臨んだこの話題作は,肩に力が入ったのか,余りにも文学的香りが強過ぎる。1949年という時代の雰囲気は見事に伝えているのだろうが,2世代違う筆者には,その真髄を正しく捉え切れず,楽しめなかった。 原作にはヒッピーやボブ・ディランも影響を受けたというが,この映画は,少し遅れて登場した感がある。
 ■『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』:「劇場版」とあるように,元はNHKのドキュメンタリー風ドラマの歴史教養番組で,30分番組がスケールアップして映画化された。TV版は全く未見だったのだが,時空ジャーナリストの青年がタイムワープして,歴史の裏側に迫るという設定は,実に面白く感じた。TV版と同じ要潤と杏のコンビの呼吸がピッタリ合っていて,要潤のゴーグル姿もキマっている。ワクワクして見入ってしまい,TV番組も観たくなった(今年のシリーズは,もう終了してしまったが)。この劇場版では,安土城焼失の謎に迫るのがテーマで,4つ時代を往来する。登場する俳優も,時任三郎,上島竜兵,宇津井健と豪華キャストだ。ところが,前半の面白さとは裏腹に,後半は失速する。劇場映画としての盛り上げに欠け,竜頭蛇尾の感は否めなかった。3つ程度のエピソードを繋ぐオムニバス形式が良かったかと思う。
 ■『大統領の料理人』:表題を見た時,週刊モーニングに連載されたコミックの映画化かと思ってしまった。そちらは「大使閣下の料理人」で,在ベトナム日本大使館公邸の料理人の経験に基づくフィクションであるのに対し,本作はミッテラン仏大統領のプライベート・シェフを務めた女性料理人の実話に基づいている。その彼女が南極基地の料理人に転じ,大統領官邸時代の想い出を回想するという設定であるから,映画的興味は尽きない。勿論,仏語の映画で,数々の料理が登場し,エリゼ宮での特別撮影も許可されたと聞けば,さらに興味は増す。監督・脚本は,クリスチャン・ヴァンサン。男性監督だが,大統領官邸初の女性シェフの力強い生き方を描いている。少し残念だったのは,料理がさほど美味しそうに見えなかったのと,ミッテラン大統領役の俳優(実は小説家)が余り似ていなくて,貫録不足だったことだ。筆者は故ミッテラン大統領と生で接し,挨拶し,握手した経験があるだけに,尚更そう感じた。
 ■『ウォーム・ボディーズ』:最近のハリウッド映画の2大人気キャラといえば,ヴァンパイアとゾンビだが,これまでに一体何本が作られてきたことだろう。またまたユニークなゾンビ映画が誕生した。謎のウィルスの影響で,人類の大半がゾンビと化した世界……となると,先月号の『ワールド・ウォーZ』と似ているが,そこからが違う。少しドジで優しいゾンビ青年Rは,人間を襲ってその脳を食べるはずが,あろうことか人間の美少女ジュリーに恋をしてしまう。最初は怖がっていた彼女も,次第にRの誠実さに心を開き,次第に他の人間たちもソンビの人権(?)を認め始める。この過程が笑える。まるで「ゾンビ公民権運動」だ。やがて,敵対勢力である邪悪なガイコツ族との対決を迎えるが……。部族間の対決,若い2人の禁じられた恋と来ると,これはゾンビ版『トワイライト』だったのだ。いや,面白い。
 
   
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