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O plus E誌 2012年3月号掲載
 
 
 
 
『TIME/タイム』
(20世紀フォックス映画)
 
 
      (C) 2011 TWENTIETH CENTURY FOX

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [2月17日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開中]   2012年1月24日 角川試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  典型的なダークSFだが,腕の時計の動きが絶妙  
  次なるは賞獲りレースとは無縁のSF映画で,それもお馴染みの荒廃した近未来の管理社会を描いた作品だ。原題は『In Time』。本作のテーマは,時間(寿命)が金銭で購入できるという社会である。科学技術の進歩で老化がなくなり,人類は25歳で成長が止まり,余命は1年となる。ここから富裕層は時間を購入して永遠に生き続け,貧困層の弱者は寿命を延ばすために毎日働き続けるという究極の格差社会が構成されている。
 この種のブラックユーモアのような斬新なアイディアで近未来社会を描いた原作は,てっきりフィリップ・K・ディックの短編小説かと思ったのだが,本作は違っていた。オリジナル脚本を書いたのは,『ガタカ』(97)『シモーヌ』(02)のアンドリュー・ニコル監督で,製作陣にも名を連ねている。脚本家としては,ジム・キャリー主演の『トゥルーマン・ショー』(98)で複数の脚本賞を受賞している。F・K・ディック流のダークSFの着想力があり,かつその中にメッセージ性のある風刺や人間ドラマを描くのが得意なようだ。
 ビジュアル的には,全編を通じて各人の腕に表示されている時計(余命を示すカウンター)が印象的だった(写真1)。まるで流行のAR(拡張現実感)表示のようだが,特殊眼鏡をかけた時だけ見えるわけではなく,常時全住民の腕にこの時計が組み込まれているという設定だ。映画としては腕の実写映像にCGデータを重畳している訳だが,単純合成ではなく,それぞれの肌にフィットするよう丁寧に描かれていた。おそらく,時計を埋め込んだ腕ごと差し替えている場面もあると思われる。
 
   
 
写真1 余命はあと1日と12分50秒……。各人の腕に合わせて丁寧に描かれ,時を刻む描写が絶妙だ。
 
   
  刻々減って行く,この数字の動きがリアルであり,切迫感に溢れている。コーヒーもクルマも残り時間で購入でき,収入があればこの時計にチャージできる(写真2)。命そのものがオンライン・マネーであり,クレジット口座と直結している訳だ。その入出金端末装置のデザインも付随する効果音もよく出来ていた。
   
 
写真2 右手を端末に入れてセットすれば,左腕の時計にチャージできる
 
   
  この時計の描写の微妙なタッチに比べて,その他の近未来社会の描写はやや雑なのが残念だった。VFXの登場場面もそう多くない。この作りものっぽいB級感は,意図的という感じもした(写真3)。格差社会の描き方は露骨であり,いくつものゲートを経て最貧のスラム・ゾーンから最上位の富裕ゾーンに至る過程は見せ場の1つだ。富裕ゾーンの描き方には滑稽さすら感じるが,これもまた,この監督の意図的な描写なのだろう。
   
 
写真3 後に見えるが富裕ゾーンの高層ビル群。いかにも…の作りもの感がぷんぷん。
 
   
   スラムの青年ウィルを演じるのは,『ソーシャル・ネットワーク』(11年1月号)で遣り手実業家を演じて好評を博したジャスティン・ティンバーレイク。相手役の富豪の娘シルビアには,『マンマ・ミーア!』(09年2月号)のアマンダ・セイフライドを配している。共に存在感のある演技で将来が期待されるが,どちらかと言えば,女性側が勝っている。シンガー・ソングライターであり,人気コーラス・グループ'N Syncのリード・ヴォーカルであったジャスティンを坊主頭で登場させるのは,どう考えてもこの映画には似合わない(写真4)。これじゃ,まるでヤクザの殴り込みだ。  
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写真4 この坊主頭は何とかしてくれ。どう考えても似合わない。
(C) 2011 TWENTIETH CENTURY FOX
 
   
   
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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