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O plus E誌 2008年9月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『TOKYO!』 :変な映画だ。外国人監督3人に東京を描かせた異色作の中編3本からなるオムニバス作品である。随所で笑いを誘うが,奇妙さ,バカバカしさゆえの笑いだ。いま世界で最も旬な監督3人に好き勝手にやらせたら,そりゃ,こうなるだろう。いかにも映画通好み,映画祭好みの嗜好に溢れている。「どうです?上手いでしょ,異色でしょ」といった感じが鼻につく。筆者はこの種のテイストは好きになれない。強いて言えば,2本目の「メルド」の下品さが少しだけ気に入った。
 ■『幸せの1ページ』 :題から判断すると女性用のラブロマンス映画に思えるが,実際はファミリー向けのアドベンチャー・コメディである。南海の孤島で暮らす父と娘のロビンソン・クルーソー風の物語に,外出恐怖症の女流作家が絡んで起こる大騒動……。ジョディ・フォスターが珍しく,コミカルな作家役で登場するが,実質的な主演は『リトル・ミス・サンシャイン』(06)で抜群の存在感を示した少女アビゲイル・ブレスリンだ。明るく楽しく,VFXも結構しっかり使われている。
 ■『シャッター』:ジャパニーズ・ホラーのブームをハリウッドに持ち込んだ一瀬隆重プロデューサが製作した最新作だ。米国人新婚夫妻が赴任先の東京で遭遇する心霊現象がテーマで,奥菜恵が亡霊役を演じるのが話題だ。監督にはホラー界の巨匠・落合正幸を起用したが,これがちっとも怖くない。日本が舞台で親しみがもてるのはいいが,和洋折衷の味付けが中途半端に終わって,恐怖心が湧いて来ない。主演女優レイチェル・テイラーは,いかにもホラー向きの金髪美人だ。ニコール・キッドマンにもナオミ・ワッツにも似ている。それ以外は記憶に残らない凡作だ。
 ■『イントゥ・ザ・ワイルド』: 自由と真実の旅を求めてアラスカで死んだ若者を描いた実話だ。彼自身が克明につけていた日記に基づいている。名優ショーン・ペンが監督を務める。常識ある大人なら,最初はこの若者の意識と態度に嫌悪感を覚え,やがてその反抗心に少し理解を示し,そしてすっかりこの物語の虜になる。北米各地で撮影した大自然が美しい。映像の美しさには感激しても,この主人公に共感することはない。でも,この映画を撮りたかった監督の気持ちは理解できる。
 ■『おくりびと』  :一度観たら,絶対に忘れない印象に残る映画だ。「おくりびと」とは,遺体を棺に納める「納棺師」のこと。死者に着替えや死化粧を施す儀式が感動的である。この職業に興味をもった本木雅弘が企画し,自ら主演した10年越しの作品だ。ベテラン納棺師で社長の山崎努と訳あり事務員の余貴美子の好演が光る。本木雅弘の凛々しさは『山桜』(08年6月号)の東山紀之を思い出す。そういえば,共にジャニーズ事務所所属のアイドルだったし,時代は違えど,舞台も同じく庄内地方で鳥海山の美しい眺めも同じだ。
 ■『次郎長三国志』  :マキノ雅彦監督(津川雅彦)の監督第2作目作品だ。叔父マキノ雅弘監督の十八番のシリーズの再映画化に挑戦と話題は十分だ。筆者は,この名物シリーズの後半何作かを公開時に観ている(まだ小学生だったか?)。歌舞伎風の様式美,時代活劇,人情噺,現代風の夫婦愛,ギャグなどを全部取り入れ,どのようにも演出できるぞとの自信が感じられる。ところが,あとの2つがやや不自然で,モードの切り替えが上手く行っていない。今一つリズムが悪い。もっといい映画にできたはずなのに,肩に力が入り過ぎだ。惜しい!
 ■『フライング☆ラビッツ』  :深田佑介原作の実在の実業団女子バスケットボール・チーム「JALラビッツ」をモデルにした物語。スチュワーデス教育のエピソードも盛り込まれ,日本航空の宣伝臭が強いのは仕方ないとしても,青春スポーツ映画として何の冒険もない。話も他愛ない。主演の石原さとみは可愛いが,ただそれだけだ。彼女をはじめ,主力選手役の俳優はもっと練習して,バスケの腕を上達させるべきだった。試合のシーンの迫力のなさが,映画全体をチープにしてしまっている。
 ■『落下の王国』  :時代は1915年のLA。脚を骨折したスタントマンの青年が,左腕を骨折して入院中の5歳の少女に病院内で虚構の叙事詩を語って聞かせる。この物語展開の背景シーンに,世界24ヶ国でのロケ,13の世界遺産を含む驚くばかりの映像美が登場する。なるほど,これはターセム監督の美意識だ。こりゃすごい。愕然とするほど美しく壮大な光景が多々登場し,目も眩む。願わくば,物語をもう少し面白くしてほしいものだ。ドキュメンタリーではないので野暮だとは思うが,どれとどれが世界遺産で,どこの国の何かであるをさりげなく入れてくれた方が,観客には親切だ。
     
  (上記のうち,『フライング☆ラビッツ』『落下の王国』はO plus E誌に非掲載です)  
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