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O plus E誌 2008年10月号掲載
 
 
ゲット スマート』
(ワーナー・ブラザース映画 )
 
      (C) 2008 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [10月11日よりサロンパス ルーブル丸の内ほか全国松竹・東急系にて公開予定]   2008年8月22日 リサイタルホール[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  B級のタッチとA級アクションのアンバランスが魅力  
 

 一体何の映画に似ているのだろう? この映画の試写を観て早々,すぐに考え始めたことである。本映画時評欄の充実に伴い,最近は新作だけで年120本は観ているから,似た作品が沢山あっても不思議ではない。いや,多数観ていると,一々似ている映画を気にしてなどはいられない。そうでありながら,なぜか本作品は,それがとても気になったのである。
 秘密諜報機関「コントロール」に所属する調査員がスパイとして活躍する物語である。原作は1960年代の米国製人気テレビ・シリーズ『それ行けスマート』で,日本でも放映されていたらしいが,筆者の記憶にはない。当時は,映画界で007シリーズが一大スパイブームを巻き起こし,TVでは『0011ナポレオン・ソロ』や『スパイ大作戦』(原題は『Mission: Impossible』)が人気を博していた。それを真似た便乗作品が雨後の筍のようにあったようだが,全部は観ていないし,覚えてもいない。
 この映画では,おとぼけエージェントのマックスウェル(マックス)・スマートが,国際犯罪シンジケート「カオス」がもつ世界支配の陰謀を阻むべく行動を起こす。スパイに憧れながらも,内勤の分析官に過ぎなかった彼が何故スパイに昇格したかと言えば,「カオス」に写真入りエージェントの一覧を奪われた結果,面が割れていない職員は,男は彼だけ,女は顔を整形をしたばかりの「エージェント99」だけだったという訳だ。
 この設定から分かるように,徹底したおふざけ映画,アクション・コメディだ。40年後の今なぜ映画化されたのかよく分からないが,楽しければそれで良い。アメリカ映画のはずなのに,どういう訳か,この映画からは英国の香りがする。スパイ映画の原点は英国にあるからだろうか?
 監督は『ナッティ・プロフェッサー2』(00年11月号) 『ロンゲスト・ヤード』(05)のピーター・シーガルで,なるほどコメディ映画が得意だ。主人公マックスは,『40歳の童貞男』(05)のスティーブ・カレルが演じる。そーか,この顔は元ドリフターズの荒井注に似ているんだ。にこりともせず,大真面目で騒動を起こす様は天性のコメディアンである。対する「エージェント99」には,『プラダを着た悪魔』(06年11月号) のアン・キャサウェイを配している。顔は美人だが,性格は超キツイ相棒という役にも似合っている。面白いコンビだ。
 この映画の魅力は,全くのB級タッチでありながら,映像のクオリティもアクションもA級だというアンバランスだ。マックス役のS・カレルが真面目な顔つきで,淡々として過激なスパイアクションに臨むというのが,とても可笑しい。見え見えのギャグはそう多くないのだが,タイミングが効果的で,会場を爆笑の渦に巻き込んでいた。上質の笑いだ。横顔はMr. ビーンのローワン・アトキンソンにも少し似ている。
 CG/VFXも上質で,随所に組み込まれている。多数の扉がある回廊が何度か登場するが,原シリーズの名物シーンを本作ではCGで再現したようだ(写真1)。2人でロープに捕まってビル間をジャンプするシーン(写真2)や,赤いレーザ光が侵入者を検出するシーン(写真3)も印象的だ。後者は『エントラップメント』(99)でキャサリン・ゼタ=ジョーンズが身をくねらせて,光線を除けていたシーンを思い出す。このレーザ光も勿論CGだ。クライマックスの列車,セスナ機,車を縦横に使ったアクションの演出もユニークだ。VFX担当には,Digital Dimension, Eden FX, Pixel Magic等がクレジットされている。一流スタジオではないが,出来映えは十分A級だ。
 エンドロールが流れる頃には,筆者の結論は出ていた。この映画は,過去のどのスパイ映画にも似ていない。このアンバランスは絶妙で,唯一無二だ。   

 
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写真1 何重もの扉の前で起こる出来事が楽しい   写真2 ロープでのジャンプも見どころの1つ
 
   
 
 
 

写真3 動きに合わせてCGのレーザー光を描くのに数ヶ月かかった
(C) 2008 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)  
   
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