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O plus E誌 2008年5月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『モンゴル』:本年度アカデミー賞外国語映画賞のノミネート作品。ドイツ・ロシア・カザフスタン・モンゴルの合作だが,全編モンゴル語で語られる。少年テムジンがチンギス・ハーンとなり,蒙古帝国を築き上げるまでの半生を,日本人男優・浅野忠信が好演している。セルゲイ・ボドロフ監督はロシア人だが,スタッフ&キャストの出身は13ヶ国に及ぶ。一体何語で会話しながら,撮ったのだろう? ケレン味のない正統派の史劇だが,こうした地味な映画でも戦闘シーンにCGが当然のように登場する。同じ題材を扱いながら,『蒼き狼』(07年3月号)がいかに薄っぺらだったかが分かる。主演男優の風格と演技力の違いだろうか。
 ■『ジェイン・オースティンの読書会』 :本欄では女性読者のためのレディーズ・ムービーも取り上げてきた。親父族が観ても結構楽しめるものである。ところが,この映画だけは参った。読書会に参加する女性たちの心情もセリフの真意も,まるで汲み取れない。試写室も女性だらけで,小学校の男性教師か銀行で女子行員を管理する課長になった気分だ。女性映画に出てくる男性は,どうしてこうも自堕落で下らない男か都合よく登場する王子様風のイケメンばかりなのだろう。
 ■『銀幕版 スシ王子! ~ニューヨークへ行く~』:昨年放映されたTVシリーズの映画化版で,監督も同じ堤幸彦。題からして,グルメ漫画によくある料理人対決ものだと想像したが,全くその通りだった。「味いちもんめ」に,いや「将太の寿司」にそっくりだ。NYを舞台にした点で若干の面白みはあるが,ただそれだけだ。CGシーンも結構あるが,こちらも凡庸だ。一体,どんな世代がこの映画を楽しいと感じるのだろう?
 ■『あの空をおぼえている』: 幸せに暮らしていた4人家族に突然訪れた不幸とその後の家族内の心理的葛藤を描く。間違いなく感涙もので,会場はすすり泣きの嵐だ。演出も子役の演技も悪くなく,確実に感情移入できる。それゆえ,タチが悪い。単に悲しい話を描いて何になる。愛する者を亡くした人には,想い出すだけで耐えられないだろう。明るい結末にしたつもりだろうが,その部分の描写が下手だ。だから,感動はなく,魂を揺さぶられることもない。誤解を恐れず言えば,私はこの映画が嫌いだ。この父親の態度は許せない。
 ■『少林少女』  :邦画が3本続くが,中でも最悪だ。『踊る大捜査線』シリーズの製作(亀山)・監督(本広)コンビの作で,『少林サッカー』のチャウ・シンチーがエグゼクティブ・プロデューサーだというから,相当期待したのだが,見事な外れだった。当初,メイン欄で取り上げるつもりだったが中止した。サッカーを女子ラクロスの試合に変えた2匹目の泥鰌狙いはいいとして,ロクなギャグもなく,CGの使い方も下手クソで,まるで面白くない。チャウ・シンチーは名前だけの参加なのか? 主演の柴咲コウは,何本観ててもただの大根女優だ。またしても,筆者のラジー賞筆頭候補だ。
 ■『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 :濃い映画だ。相当に凄い映画だと言うべきか。本年度アカデミー賞作品賞ノミネート作品の1つで,監督・脚本は『ブギーナイツ』『マグノリア』の鬼才ポール・トーマス・アンダーソン。舞台は20世紀初頭のアメリカ西部で,石油採掘のリアルな映像表現と強欲冷徹な山師を演じて主演男優賞を得たダニエル・デイ=ルイスの演技が印象に残る。終盤の人間模様は,筆者にはこれを形容する言葉が見つからない。感嘆するが,感動ではない。そりゃ,監督の要望にこの強烈な演技で応えれば,オスカーは獲れるだろう。表題の意味は最後に理解できる。
 ■『相棒-劇場版-』 :邦画がもう1本あった。テレビ朝日系の人気シリーズの映画版で,長い副題があるが省略しよう。水谷豊演じる頭脳明晰な窓際族刑事・杉下右京は,なるほど魅力的人物で,相棒の熱血漢刑事(寺脇康文)とも好いコンビだ。ところが,TVの枠から飛び出して劇場版になった途端に,どうしてこうもトホホな脚本や設定になるのか。映画を意識してスケールアップを図るあまり,事件そのものにまるでリアリティがなくなっている。この映画をGWの切り札と位置づけているようでは,邦画界も甘い。観客をナメている。
 ■『最高の人生の見つけ方』 :邦題がお粗末だ。原題は『The Bucket List(棺桶リスト)』で,「死ぬまでにやり終えたいこと」の意である。片仮名のままでなくても,もう少し洒落た題がつけられたはずだ。試写室は意外にも若い人達が多かった。ジャック・ニコルソン,モーガン・フリーマンの二大名優が死期の宣告を受けた癌患者を演じるのだが,この邦題から,もっと前途洋々たる人生成功術を期待したのだろうか? このテーマは年齢によって受け止め方が大きく違うだろう。既にシニア世代の筆者は,若者と見方が違って当然だから,コメントを控えたい。最後の一捻りは冴えていた。
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