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O plus E誌 2006年7月号掲載
 
 
purasu
『日本沈没』
(東宝配給)
 
      (C)2006映画「日本沈没」製作委員会  
       
  オフィシャルサイト[日本語]   2006年5月29日 NHK大阪ホール[完成披露試写会(大阪)]  
  [7月15日より有楽座ほか全国東宝系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  パワーアップしたリメイクだが,前作は超えない  
 

 『ポセイドン・アドベンチャー』が日本で公開されたのが昭和48年の春で,その年の暮に公開され和製パニック映画の話題作が『日本沈没』だった。日本SF界の重鎮,小松左京の書いた原作は200万部を超える大ベストセラーで,映画も650万人を動員している。ちゃらちゃらしたスペースオペラではなく,地球物理学の新発見「プレートテクトニクス理論」に基づく近未来予測のSFだというので,空前の大ブームとなった。
 まさに機を一にしたリメイク競演だが,監督は特撮プロフェッショナルの樋口真嗣。『ローレライ』(05年3月号)についでの監督第2作である。登場人物名は旧作をそのまま踏襲しているが,主人公の潜水艇パイロット・小野寺俊夫役にSMAPの草K剛。想いを寄せ合うレスキュー隊員・阿部玲子役に柴咲コウ。地球科学者・田所雄介役に豊川悦司だが,旧作にない女性危機管理担当大臣・鷹森沙織という役柄が新設され,大地真央が演じている。
 結末はちょっと違うが,日本列島に下に沈り込んだプレートの急激な地殻変動により,全国で地震が頻発して列島が引き裂かれ,やがて沈没して行くという設定は同じだ。最新の地球科学の成果を取り入れたシミュレーション結果の表示,列島が裂けて行く様のCG表現はよく出来ている。九州を手始めに地割れ,火山噴火,爆発等が起こるが,言うまでもなくCG/VFXが多用されている(写真1写真2)。多数のプロダクション間で出来・不出来の差はあるが,函館を襲う津波や東京壊滅(写真3)などもよく出来ていた。
 CG/VFXの健闘の割には,音響効果の使い方が下手だ。演技はもっとヒドイ。どうやら,同じ特撮,VFX出身でありながら,『ALWAYS 三丁目の夕日』(05年11月号の山崎貴監督と比べて,樋口真嗣氏の監督としての力量は今一つだ。

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写真1 沈没の予兆は,まず九州での地割れと阿蘇山の爆発から。まずまずのVFXだ。
 
     
 
写真2 この天守閣の崩壊はちょっと安っぽい
(C)2006映画「日本沈没」製作委員会
  写真3 崩壊した東京のシーンはかなり上出来
 
 
 
     
  CGが頑張り過ぎて,ドラマが負けています  
 
さて,今回は貴女も『ポセイドン』と両方試写を観たわけですが,この日米パニック映画のリメイク合戦はいかがでしたか? 日本映画としては,結構CGも良質で頑張っていたと思うんですが…。
CGの質がどうこういう以前に,特撮の使い過ぎだと感じました。ストーリーの展開やバランスを無視して「こんな特撮もできるんだぞ!」という感じで,私には興醒めでした。『ポセイドン』の方がいいです。
手厳しいな。もともと怪獣映画,パニック映画は伝統的にそうなんですけどね。
もうちょっと登場人物の内面の変化をうまく描いてくれればいいのに,CGを入れて迫力を出そうとし過ぎて流れが悪くなり,ドラマを壊してしまっています。
でも,それはCGのせいじゃなく,俳優の演技が下手過ぎるせいじゃないの。毎度言うけど,日本の若手俳優は大根ばっかり。まるで,学芸会レベル(笑)。
テレビの人気俳優を使って,その人気だけで客寄せを狙うからでしょう。テレビだとそんなに下手だと感じませんが,映画だと確かにセリフ棒読みですね。
カット毎にバラバラに取る映画流の撮影に慣れていないのでしょう。テレビだと,台本順に複数のカメラで追ってくれるから,もう少し乗りやすいんですよ。
唯一,豊川悦司さんだけが光ってましたね。
えっ,そりゃないな。およそ地震学者らしくなかったですよ。『ジュラシック・パーク』(93)『インデペンデンス・デイ』(96)のジェフ・ゴールドブラムのイメージなんでしょうが,前作の小林桂樹の渋さとは大違いです。『やわらかい生活』(別掲)での演技は素晴らしかったのに,彼もこういう映画ではダメですね。
『ポセイドン』は厳し過ぎる評価でしたが,この映画の評点はどうするのですか?
日本映画の現状からすると,各CGプロダクションはかなり頑張った跡が窺えるし,☆☆以上でと…。
そんな依怙贔屓は駄目ですよ。映画の出来そのもので公平につけないと,読者に信頼されませんよ。
うーん,あっちを低くし過ぎたかな。じゃ,仕方ないので同点ということで…。東宝さんゴメンナサイ。
 
     
   
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