O plus E VFX映画時評 2025年1月号

第82回ゴールデングローブ賞ノミネート作品
(+受賞結果)

(注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています)


◆方式は昨年と同じで, 結果的にノミネート作品数は増えている

 この特集記事を設けてから,今年で5回目となる。当映画評としての授賞作品予想はアカデミー賞に譲り,前哨戦であるGG賞は国内公開予定ノミネート作の一覧までに留めていることは例年通りである。読者がアカデミー賞予想や授賞式を楽しまれる手掛かりとしての情報提供が目的である。
 第82回GG賞ノミネート作品は2024年12月9日に発表され,授賞式は1月5日夜に予定されている(いずれも現地時間)。昨年は大きな変化が2つあった。既存の各部門の候補作品数が5本から6本に増え,「興行成績賞」が新設された。米国内と世界で多額の興行収入があった8作品が選ばれたが,今年も同数である。
 その結果,今年の映画部門のノミネート作品数は計43本である。昨年,一昨年は同数の36本であったが,昨年上記の変更があったことを考えると,昨年は複数ノミネートの作品が多く,今年は一昨年並みに戻ったと言える。最多ノミネートは『エミリア・ペレス』の9部門11ノミネートで,『ブルータリスト』の7ノミネート,『教皇選挙』の6ノミネート,『ANORA アノーラ』『サブスタンス』の5ノミネートが続く。まだ国内未公開の映画ばかりだ。
 今年の発表を見て驚いたのは,過去数年間,大きな比率を占めたネット配信映画(Netflix,Amazon Prime, Disney+, Apple TV+,Hulu等)がほとんどなかったことである。とりわけ,Netflixが顕著で,コロナ禍真っ只中の2021年の10本は特別としても,その後も5本,5本,4本と確実にノミネート作を生み出していたのに,今年は『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』の1本だけである。複数話のシリーズのTV部門では,相変わらず最大勢力であるので,軸足をそちらに置き,ノミネート条件である少数の映画館公開を強いられる映画部門を軽視し始めたのも知れない。
 当欄に記載するのは前4回と同様,①未紹介で,筆者が既に視聴した作品の紹介記事掲載,②当欄で紹介済みのノミネート作品の一覧,③未視聴作品の掲載予定の一覧,の3種類である。当特集記事の当初アップロード時点での分布は,以下である。

  2023年 ①9本,②11本,③11本
  2024年 ①10本,②13本,③6本
  2025年 ①3本,②12本,③18本

 ①がぐっと少なくなり,その分③が増えている。1つには,ネット配信作品があまり候補にならなかったので,ノミネート発表後に急ぎ未視聴の作品を観る対象自体がなかった。また,③の2月,3月公開作品がかなり多いのは,国内配給会社が急ぎ対象作品を契約して,公開日は決めたものの,まだ試写態勢が整っていない(要するに,まだ試写を見せてくれない)ためかと思われる。

(例年通り,受賞結果は後日付記する。1月号分で授賞式前に視聴できなかった作品は順次追記する。)


■『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』(1月17日公開)
[候補部門:主演男優賞(D),助演男優賞]
 アメリカ合衆国第45代大統領であり,まもなく第47代に再就任する人物の,ある種の伝記映画である。邦題の副題からは,大統領選の参謀が語る予備選挙対策や本選挙に向けてのキャンペーン等の舞台裏を明かしたドキュメンタリーを想像したのだが,俳優が演じる劇映画であった。仮名の人物はなく,本人はもとより,父母,兄,最初の妻,弁護士等々,全員が実名で登場し,しかるべき俳優が演じている。伝記といっても,幼少期からではなく,父親の不動産業の家賃取り立て役の20代後半から,自伝を出版する40歳過ぎ(1980年代末)頃までだけが描かれている。事業収益以外の業績,美点,尊敬すべき点に関する描写は一切ない。
 映画は,(今よりは)気弱で神経質な実業家ドナルド(セバスチャン・スタン)が政財界の実力者が集う高級クラブで,悪名高い辣腕弁護士ロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)と知り合うエピソードから始まる。父親フレッドも強欲で「黒人の入居を拒んだ」ことから訴追され,破産寸前だった。ドナルドはロイに弁護依頼し,司法省役人の醜聞の脅迫や賄賂で訴訟取り下げを勝ち取る。それ以来,ロイは「哀れな坊や」と呼ぶドナルドのプロデューサー役となり,一切を取り仕切る。彼が伝授した「勝つための3つのルール」は,①攻撃,攻撃,攻撃,②絶対に自分の非を認めるな,③負けても勝利を主張し続けろ,であった。なるほど,2021年の議会乱入への扇動はこの③を忠実に守ったのかと納得する。
 続いて,「腐敗と治安の悪いNYの建て直し」の名目で税制優遇受け,不動産業での大成功を収めるが,次第にドナルドが制御不能の怪物になって行く様が描かれている。やがて2人の関係は険悪になり,同性愛者のロイはエイズで他界する。最近の様々な記事で,ドナルドも若い頃は素直で謙虚だったと書かれているが,この映画を観る限り,全くそんな気配はない。徹底して嫌な奴で,強欲,傲慢,下品な成り上がり者である。そんな人物を2度も国家元首にするのだから,平均的アメリカ人の知的レベルも品性もその程度であることが確認できる映画である。頭頂部の植毛手術のシーンからは,現在も年齢の割には豊かな頭髪量である理由が確認できた。
 原題は『The Apprentice』だけで,「見習い,弟子」の意だが,ドナルドが出演していたTV番組名でもある。監督は『ボーダー 二つの世界』(19年9・10月号)のアリ・アッバシ。ドナルドそのものよりも,ロイの視点から2人の関係を描いていることが特長で,J・ストロングの助演男優賞ノミネートも納得できる。大きな欠点は,主演のS・スタンがドナルドに見えないことだ。横顔は少し似ているが,身長が米国人平均よりやや上の183cmしかなく,長身のトランプ(190cm以上)らしくない。
 本作の米国公開は2024年10月11日で,まさに大統領選の最終盤期であった。日本国内の公開を大統領就任式の直前に設定した配給会社のセンスは大したものだ。間違いなく当選すると踏んでいた訳ではないだろうが,負けていても,ルール③により,またこの時期に何か騒動を起こしていたに違いないから,どちらに転んでも良い宣伝効果になったと思われる。

■『リアル・ペイン~心の旅~』(1月31日公開)
[候補部門:作品賞(M/C),主演男優賞(M/C),助演男優賞,脚本賞]
 この映画は,マスコミ試写での観賞法に失敗した。1つは,このGG賞4部門ノミネートが判明していて,アカデミー賞の有力候補の1つと噂されていることだった。副題からして,ハートフルな感動作だと強く意識して観てしまった。事前知識なく観ていたら,もっといい映画だと思ったかもしれない。構えて観た分,やや物足りなく感じたのである。もう1つは,上映時間である。試写開始前に案内されていたはずなのに,気づかなかった。平均的な2時間弱と思い込み,まだこれからクライマックスの佳境に入ると思っていたところ,90分であっさり終ってしまった。不覚であった。
 Facebookの創始者を描いた『ソーシャル・ネットワーク』(11年1月号)の主演でブレイクしたジェシー・アイゼンバーグが,監督・脚本・製作・主演を務めたロードムービーである。監督はこれが2作目だが,1年前に紹介したで前作『僕らの世界が交わるまで』(24年1月号)では,「監督&脚本家としての才能も本物だ。ぜひ監督として大成してもらいたい」と書いている。そのことも意識過剰で観てしまった一因と言える。
 彼が演じるのは,妻子とNYブルックリンに住み,デジタル広告代理店に勤務する堅実なビジネスマンのデヴィッドである。彼が空港で待ち合わせたのは従兄のベンジー(キーラン・カルキン)だった。早くから空港に来て「変人たちの観察をするのが趣味」と言うから,彼も変人であり,現在無職である。彼らは最近亡くなったユダヤ人の祖母の遺言により,2人でポーランドでの「ホロコースト史跡巡りツアー」に参加するのであった。
 現地で会ったこのツアーに参加する他の参加者は3組4人で,いずれもユダヤ系か最近敬虔なユダヤ教徒になった人物である。主演の2人とガイド役(ウィル・シャープ)を加えた計7人のアンサンブルが見事で,この配分にも脚本家としての才能を感じる。終始奔放なベンジーが一向に語りかけて座もたせをする。この映画がドラマ部門でなく,ミュージカル/コメディ部門のノミネートであることが理解できた。2人はツアーを少し離れ,遺言通り,祖母が昔暮らした家にも立ち寄る。
 ホロコースト映画は多数観たが,史跡のツアーとなると我々日本人には実感や思い入れがない。ユダヤ系の観客には,きっと感じ方が全く違うのだろう。デヴィッドの視点で見ると,ベンジーの態度に苛々する。演技とはいえ,こんな従兄は御免だ。K・カルキンの演技が絶賛されているが,それほどのものとは感じなかった。勝手に過剰期待したせいだが,感動度は低かった。もう一度見ると味わい深いのかも知れない。音楽は全編でずっとショパンのピアノ曲で,こちらは味わい深かった。その分,エンドロールで曲調がかなり変わったことが残念だった。それなら,無音の方が余韻が残ったと思う。

■『聖なるイチジクの種』(2月14日公開)
[候補部門:非英語映画賞]
 カンヌ国際映画祭の審査員特別賞受賞作である。イラン人監督が撮った映画で,自作映画でイラン政府を批判したとして有罪判決を受けていたので,本作を世に知らしめるため,国外脱出し,28日間かけてようやくカンヌに辿り着いたそうだ。てっきり『人生タクシー』(17年4月号)『熊は,いない』(23年9月号)の名匠ジャファル・パナヒ監督かと思ったのだが,本作は『ぶれない男』(17)『悪は存在せず』(20)のモハマド・ラスロフ監督だった。この監督の作品を観るのは初めてである。本作のテーマは,家庭内で起きた護身用拳銃の紛失事件をめぐるサスペンススリラーだが,1人の女性の不審死をきっかけに起きた抗議運動の描写を盛り込んでいて,その運動の実録映像も含まれているとの触れ込みだった。
 映画は冒頭から,市民の反政府の抗議デモで揺れる映像から始まる。首都テヘランに住む一家の主イマン(ミシャク・ザラ)は国家公務員で,妻,娘2人と暮らしていた。20年に渡る勤勉な務めと愛国心が評価され,ようやく憧れの予審判事への昇進が内示された。与えられた仕事は,反政府デモの逮捕者への起訴状の捏造であったため,護身用の拳銃が手渡される。ところが,ある日家庭内でこの銃が消えてしまい,疑いは妻・ナジメ(ソヘイラ・ゴレスターニ,姉レズワン,妹サナの3人に向けられる……。
 普通に考えれば,母親の態度からして,犯人は姉妹のいずれかと思うのが当然だが,それは謎のまま物語は進行する。父親の態度への不満は分かるが,それを盗むと父親がどうなるかくらいは分かりそうなものだ。終盤の緊迫感が吹聴されているが,それほどの描写に思えなかった。この監督は,サスペンス描写は得意ではなく,上司から理不尽な署名を求められる父イマンの逡巡や疲弊,国家の宗教観に基づく厳しい国民弾圧を描きたかったのだと解釈した。女性に対する差別,弾圧は毎度のことであり,描写自体はまあこんなものだろうと感じた。167分の長尺はさすがに長かったが,題名の意味,冒頭に出て来る「無花果」のことは最後に理解できる。
 命がけで映画を製作し,やっとカンヌに辿りついた監督の信念には感心するが,それと作品自体への評価は別物だ。エンタメとまでは言わないが,折角劇映画として作るなら,主義主張のアピールだけでなく,コンパクトな編集でカタルシスを感じる映画にして欲しかった。

■『ナイトビッチ』(1月24日配信開始)
[候補部門:主演女優賞(M/C) ]
 ここからは授賞式前には視聴できなかったが,今月の配信開始/公開の映画であるので,当特集内に含めることにした。本作は,GG賞では主演のエイミー・アダムスがM/C部門の主演女優賞にノミネートされたが,受賞はできず,アカデミー賞ノミネートからも漏れた。GG賞からアカデミー賞へは,他部門は5/6の倍率だが,主演男優賞と主演女優賞だけは5/12の狭き門であるから,落選する方が多い。本作は,トロント国際映画祭を手始めに,多数の映画祭に出品され,既に複数の受賞を果たしている。12月に米加英愛では映画館上映されたが,他の国では直接Disney+でのネット配信である。即ち,最初から映画祭狙いの印象が強い。では,それに値する映画かと言えば,十分主演女優の演技力を感じる映画であった。ジャンルとしては,ホラーコメディの扱いを受けている。
 映画は主人公の語りで始まり,最後までそれが続く。主人公は,元は名のある芸術家であったが,子供ができてからはそれを封印し,専業主婦で子育てに専念することを選んだ。連日続く2歳の長男相手の育児に疲れ果て,ノイローゼ気味である。母親会に参加しても馴染めず,自虐的になり,孤独感を募らせていた。夫は仕事での出張ばかりで,滅多に家に帰って来ない。たまの在宅時に家事や育児を任せても,要領を得ず,結局は自分がやる破目になる。息子に毛が生えていると言われ,確認すると顎や腰回りに長い毛が見つかる。歯も犬歯が鋭くなり,尻尾のようなものまでが見つかる。町を歩くと多数の犬が擦りよって来る。次第に自分が犬に変身して行くと自覚するようになる。母親仲間との食事会でも普通の食べ物は注文せず,思わず犬のように吠えてしまう……。
 最近の言葉でいう「ワンオペ育児」であり,その悩みを綴った映画である。不思議なことに主人公一家の配役名は,「母」「夫」「子供」だけで固有名詞はない。どこにでもある家庭の典型的な専業主婦ということなのだろう。夫役はスクート・マクネイリーで,先月の『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』(24年12月号)と同様,まるで存在感のない夫だ。原作はレイチェル・ヨーダー作の同名小説,監督・脚本は『ある女流作家の罪と罰』(18)のマリエル・ヘラーで,これが長編4作目である。当欄での紹介は初めてだが,過去作はいずれも女性観客を意識した映画で,女性からの人気が高い。
 前半から中盤の主人公の独白には退屈したが,終盤のまとめ方が見事であった。以下,少しネタバレを含む。主人公は自らの幼児期の母親との関係を思い出し,母性に目覚める。「犬への変身」→「動物に戻る」→「母性の原点に返る」→「本能で子供を可愛がる」がテーマなのだと解釈できた。狼の群れが集団で子育てするように,母親仲間との交流も円滑になる。
 監督自身も子育て経験があるが,本作も既婚の育児経験者のシンパシーを得ることが期待でき,妊娠・出産に逡巡する女性,出産未経験者に対するメッセージとなっている。男性観客は全く眼中にないと思えるが,この映画を観た男性は,最後に夫が妻にかける謝罪と労りの言葉は常に当てにされていると解釈した方が無難だ。
 さて,犬への変身は,どの程度CGが活用され,最後はどんな犬になるのかが愉しみだった。『動物界』(24年11月号)程度のCG製の犬の描写を期待したのだが,全くCGの出番はなかった。詳しい説明はなかったが,本人の強迫観念による幻覚に過ぎなかったのだろう。
 主演のA・アダムスは,前作『魔法にかけられて2』(22年Web専用#7)からさらに肥満体型になっていた。同じGG賞のD部門主演女優賞ノミネートのニコール・キッドマンは7歳年長だが,変わらぬ美貌と体型を維持しているのとは対照的である。ワンオペ育児に疲弊したのなら痩せ細っていても不思議ではないのに,真逆である。その意味では役作りに失敗しているのだが,その分は演技力でカバーしていると言える。元々プリンセス女優らしからぬ演技派で,アカデミー賞は6回ノミネート,GG賞は既に主演女優賞を2度受賞している。今更今回の受賞はなかっただろうが,こうした汚れ役の女性を見事に演じ切ったことへの賞賛と敬意の表われとしてのノミネートだったと思われる。

■『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(1月31日公開)
[候補部門:主演女優賞(D) ]
 見事な終活映画であった。これまでに観た終活映画のベスト1であり,こうした美しい人生の終え方は高齢者なら誰もが憧れる。余命僅かで安楽死を望む女性と彼女に寄り添う親友の女性を描いた映画で,ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞している。監督・脚本は,スペインの名匠ペドロ・アルモドバル。長編では初めての全編英語映画であり,舞台となるのもNYとその近郊である。主演は,ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーア。共にオスカー女優で,実年齢も同じ64歳だ。当代きっての演技派が,2人だけで語り合うシーンが映画の大半を占めていた。
 作家として成功を収めたイングリッド(J・ムーア)は,新著のサイン会で,かつて同じ雑誌社に勤めていた戦場ジャーナリストのマーサ(T・スウィントン)が癌で入院していることを知る。しばらく交流がなかったが,早速病院を訪ねたところ,マーサは子宮頸癌の末期だったが,最新の実験的治療を受けていた。互いの歩んで来た人生を語り合う内に,マーサは10代で産んだ娘ミシェルと絶縁状態で,長年全く交流がないことを語る。娘の父親は,若くして結婚した相手フレッドで,ベトナム戦争から帰還したもののPTSDを病み,別居,離婚,再婚の挙句,悲劇的な死を遂げていた。
 やがて最新治療が失敗して,癌はあちこちに転移していた。一時帰宅して再入院までの間に,マーサは安楽死を望み,イングリッドに「その日」が来る時に同居して,隣室で過ごして欲しいと懇願する。彼女はネット経由で安楽死できる薬を入手していた。さらに自宅でない場所を希望し,2人はマーサが借りた森の中の家に移動する。そして遂にその時がやって来るが,映画はそこで終らない。その後処理やラストシーンの描写が絶妙であった。
 これまで多数のアルモドバル作品を紹介しているが,その共通項は多数のエピソードを巧みに盛り込むことと鮮やかな色彩感覚である。本作も一直線に安楽死に向かうのでなく,教養ある女性ゆえの逸話や話題を鏤めている。色彩感覚は益々冴え,2人の衣装の鮮やかさ,住居の洒落たインテリア,多数の絵画も目の保養になる。窓から見える景色も只者でなく,マーサの病室,自宅,森の家からの景観を堪能した,とりわけ,ピンクの雪(ビルの灯りが投影されている)が美しかった。ゆったりとした展開に劇伴する音楽も秀逸だ。バイオリンやオーボエの音が印象的で,エンドロールの最後まで心を癒す。
 マーサは当初元気そうで,とても末期癌患者に見えなかった。ところが日を追うごとに痩せ細って病人らしい顔になり,見事なメイクだと感心した。マーサの死後,遺言によりイングリッドは娘ミシェルを森の家に招くが,その顔を見て驚く。またまた見事なメイクのなせる技であった。GG賞ではT・スウィントンの主演女優賞ノミネートのみに留まったが,2人がアカデミー賞で主演,助演両部門でノミネートされていても不思議ではない演技であったと思う。望むらくは,単なるカタカナ表記でなく,もっと気の利いた邦題をつけて欲しかった。

◆紹介済みのノミネート作と対象部門

■『デューン 砂の惑星 PART2』(2024年3月号) 作品賞(D),作曲賞
■『チャレンジャーズ』(2024年6月号) 作品賞(M/C),主演女優賞(M/C),作曲賞,主題歌賞
■『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年7月号) 興行成績賞
■『インサイド・ヘッド2』(2024年8月号) アニメ映画賞,興行成績賞
■『ツイスターズ』(同上) 興行成績賞
■『エイリアン:ロムルス』(2024年9月号) 興行成績賞
■『ヒットマン』(同上) 主演男優賞(M/C)
■『憐れみの3章』(同上) 主演男優賞(M/C)
■『ビートルジュース ビートルジュース』(同上)font color="#330000" size="-2"> 興行成績賞
■『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(2024年11月号) 助演男優賞,興行成績賞
■『モアナと伝説の海2』(2024年12月号) アニメ映画賞
■『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』(2025年1月号) アニメ映画賞


◆今後紹介予定のノミネート作と対象部門

■『野生の島のロズ』(2025年2月号) 作曲賞,主題歌賞,アニメ映画賞,興行成績賞
■『Flow』(同上) アニメ映画賞
■『ブルータリスト』(同上) 作品賞(D),監督賞,主演男優賞(D),助演男優賞,助演女優賞,脚本賞,作曲賞
■『セプテンバー5』(同上) 作品賞(D)
■『ニッケル・ボーイズ』(同上) 作品賞(D), 脚色賞
■『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(同上) 作品賞(D),主演男優賞(D),助演男優賞
■『ANORA アノーラ』(同上) 作品賞(M/C),監督賞,主演女優賞(M/C),助演男優賞,脚本賞
■『ウィキッド ふたりの魔女』(2025年3月号) 作品賞(M/C),主演女優賞(M/C),助演女優賞,興行成績賞
■『BETTER MAN/ベター・マン』(同上) 主題歌賞
■『教皇選挙』(同上) 作品賞(D),監督賞,主演男優賞(D),助演女優賞,脚本賞,作曲賞
■『エミリア・ペレス』(同上) 作品賞(M/C),監督賞,主演男優賞(M/C),主演女優賞(M/C),助演女優賞×2,脚本賞,作曲賞,主題歌賞×2,非英語映画賞
■『ベイビーガール』(同上) 主演女優賞(D)
■『シンシン SING SING』(2025年4月号) 主演男優賞(D)
■『異端者の家』(同上) 主演男優賞(M/C)
■『クィア』(2025年5月号) 主演男優賞(D)
■『サブスタンス』(同上) 作品賞(M/C),監督賞,主演女優賞(M/C),助演女優賞,脚本賞
■『ガール・ウィズ・ニードル』(同上) 非英語映画賞
■『かたつむりのメモワール』(2025年6月号) アニメ映画賞
■『顔を捨てた男』(2025年7月号) 主演男優賞(M/C)


[注]太字:受賞作
   (D):ドラマ部門
   (M/C):ミュージカル・コメディ部門


 

 アカデミー賞のノミネート作品発表は再延期されて1月23日になり,授賞式は3月2日(いずれも現地時間)です。2月下旬には恒例の予想記事を掲載する予定です。楽しみにして下さい。


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