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O plus E 2022年5・6月号掲載
 
 
鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX
(C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

 
  オフィシャルサイト [日本語]    
  [5月20日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2022年4月18日 大手広告試写室(大阪) 
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています)  
   
  物語は分かりやすくなり, CGは格段に進歩した  
  あの「ハガレン」が帰ってきた。4年半前の第1作『鋼の錬金術師』(17年12月号)の正統な続編であって,早くも完結編で,しかも前・後編の2部構成である。個人名,組織名は元より,人気が出てくると小説・番組・映画名も,親しみ込めて「4音略語」で略されることが多い。映画では「千ちひ」「アナ雪」が国内興行成績の上位だ。本作は原作コミックの時代から既に「ハガレン」と呼ばれている。完結編/最終章を2部構成にするのは,4音略語の先輩の「ハリポタ」「るろ剣」もそうだった。
 完結編後編の『最後の錬成』は約1ヶ月後の公開なので,まとめて本号で語りたかったのだが,まだ編集の最終段階とのことだった。2本一括制作なのに,後編がまだポストプロダクション中なら,終盤のクライマックスのCG/VFXに相当力を入れているのだと好意的に解釈したい。止むを得ず,前編だけを簡単に紹介しておこう。
 問題はそれだけの価値があるかどうかだ。前作は徹底的に酷評したので,製作関係者からは恨みを買ったかも知れない。原作コミックもアニメも悪くないのに,この映画は最悪だった。テンポが悪く,物語として観ていられなかった。CGはしっかりした出来映えだったのに,映画は原作コミックやアニメよりも劣っていた。原作に忠実に描こうとして,エピソードを詰め込み過ぎで,物語展開が破綻していると感じた。
 一定の熱心なファンはいるが,観客セグメントは同じく4音略語の「ファンタビ」シリーズよりも狭い。不親切極まりなかった『ファンタビ3』で懲りたので,自ら書いた前作の解説を読んだ上でマスコミ試写に臨んだが,その心配は無用だった。前作に比べて遥かに分かりやすく作られていた。今回の完結編は原作コミックの終盤に絞り,しかも前後編に分けていて時間的ゆとりがあるので,前作の大欠点と同じ轍は踏んでいない。続編であるが,エドとアルの兄弟関係や,敵味方の区別,物語の背景等は,物語の中でうまく語られている。その一方で,CG/VFXは格段に進歩している。結論を先に言えば,この前編だけでも語るに値する映画だった。
 最低限のおさらいをしておこう。本作の錬金術師は化学の素養があるだけでなく,魔法使いでもある。その意味では,和製の「ハリポタ」「ファンタビ」とも言えるCG多用作だ。和製ではあるが,19世紀の欧州の架空の国「アルメトリス」が舞台で,原作コミックでは登場人物は洋風の顔立ちなのに,日本人俳優が演じている。エドとアルの兄弟が主人公だが,亡き母を蘇らせるために使った「人体錬成」なる禁忌の術に失敗して,兄エドは右腕と左足をなくし,弟アルは機械鎧なる甲冑の中に魂だけが入っているという奇妙な姿になっている。
 監督・脚本の曽利文彦,共同脚本・宮本武史は前作と同じで,エド(山田涼介),ウィンリィ(本田翼),マスタング(ディーン・フジオカ)等の主要人物も継続出演している。新登場では,国家錬金術師の連続殺人犯の傷の男(スカー)役に新田真剣佑,シン国皇子リン・ヤオ役に渡邊圭祐らが起用されている。以下,当欄の視点からの感想とコメントである。
 ■ 前作もCG/VFXは多用作であり,しかるべきスチル写真が提供されていた。ところが,本作は質・量とも向上しているのに魅力的な画像が提供されない。これじゃ折角褒めようと思うCG/VFXシーンが例示できない。写真1の火花や光線はどこにでもある序の口レベルだ。写真2は前作での掲載画像とほぼ同じで,炎自体も使い回しだろう。進歩したなと感じるのは,甲冑姿のアル(写真3)の姿だ。質感は少し向上し,動きは格段に良くなっている。フルCGなので,MoCapデータの使い方が上手くなったのだろう。線路の盛り上がり,列車の爆発,エドの右腕の破壊(写真4),大量の瓦礫の描写等でVFXのレベルが上がった。写真5は直ぐに分かるが,屋外の光景でCGと実写の区別がつかないシーンが多かった。
 
 
 
 
 
写真1 火花を散らす戦いだが,CG的には序の口 
 
 
 
 
 
写真2 焔の中のマスタング大佐は既視感のある光景
 
 
 
 
 
写真3 CG製のアルの質感は少し向上,動きは大幅に向上
 
 
 
 
 
写真4 機械鎧の右腕が破壊されるシーンが見もの
 
 
 
 
 
写真5 近くの瓦礫以外は,ほぼすべてCG描写だろう
(C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX
(C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会
 
 
  ■ 俳優の演技の中では,暴食・グラトニーを演じる内山信二の存在感が突出している。前編がマンガ的で,バカバカしさが楽しめるが,彼のグラトニーは原作を凌ぐ出来映えだ。そのグラトニーがエド達を呑み込んでしまい……。さてさて,後編はどうなるのか,その後の展開と「約束の日」の結末が楽しみだ。
 
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