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O plus E誌 2018年Webページ専用記事#6
 
映画サウンドトラック盤ガイド
   
 

■「Eric Clapton: Life In 12 Bars (Original Motion Picture Soundtrack)」
(UNIVE)

   
 
 
 
  国内盤はなく,輸入盤かデジタル配信での入手となる。堂々たる2枚組のサントラ盤で,Disc 1に17曲,Disc 2に15曲収録されていて,総再生時間は2時間半を超える。映画の上映時間より長いのは,勿論,映画内では一部しか流れなかった曲をフルコーラスで収録しているからで,この長さになってしまう。これでも,本編中で流れた全曲ではない。
 特大ヒット中の『ボヘミアン・ラプソディ』(18年Web専用#5)のOST紹介は書かないのかと問われたが,そうしなかったのは,魅力がなかったからだ。映画用にミキシングされた曲は段違いに迫力があるのに対して,サントラ盤は既発売のCD用音源を並べただけだからだ。これまでのベスト盤と大差ない。その意味では,映画中のライヴシーンを皆で同時共同体験するために,何度も映画館に足を運んでいるリピート観客の観賞法は正しい選択である。
 既発売曲を収録しただけという点では本盤も同じであるが,映画の構成に合わせたサントラ盤ならではのコンピレーションが秀逸だ。エリック・クラプトン入門としても,これまでのどのベスト盤よりも優れている。
 まずDisc1の最初に,ブルースの巨人Big Bill Broonzyの“Backwater Blues”,「シカゴ・ブルースの父」Muddy Watersの“My Life Is Ruined”と“I've Got My Mojo Working”の計3曲が入っている。クラプトンに大きな影響を与えたミュージシャンで,彼の音楽の原点がブルースであることを示している。その後の4曲目からDisc 2の11曲目まで,彼が所属したバンドの楽曲が続く。YardbirdsからDerek & The Dominosに至るバンド遍歴で,音楽性の違い,演奏力の向上が実感できる。
 その間にギター演奏だけで参加した注目すべき3曲が盛り込まれている。最初はアレサ・フランクリンの“Good To Me As I Am To You”だ。図らずも,今年鬼籍に入った「ソウルの女王」を追悼するかのように,彼女の熱唱とコラボするクラプトンのギターを味わうことができる。
 映画中でその演奏風景があったビートルズの“While My Guitar Gently Weeps”とソロになってからのジョージ・ハリスンの代表曲 “My Sweet Lord”が,他の2曲である。既発売のCDで何度も聞いた音源ではあるが,こうしてきちんと収録されている嬉しい。通常,ビートルズの曲は,こうしたコンピレーション盤への収録を許可されないからだ。それだけ,ビートルズやジョージにとって,エリック・クラプトンは特別な存在であったという証拠である。
 最後にあるクラプトンのソロの歌唱曲はたった4曲である。ソロでのオリジナル・アルバムとライブ盤で30枚以上もあるのに,驚くほど少ない。映画本編そのものもバンド時代が長かったから,彼の音楽のルーツはそこにあると言いたいのだろう。
 映画中では2つの音源と様々な映像を繋いだ“Tears In Heaven”がクライマックスで,エンドロールで“Mainline Florida”が流れるが,サントラ盤では逆順である。ラストを飾るのは映画『ラッシュ』(92)に使われた“Tears In Heaven”で,愛息コナーを偲びながら歌うクラプトンの切々としたこの曲が彼の人生の代表曲として相応しい。
 ここまで書いて気がついたが,誰よりも敬愛し,私淑したB・B・キングの曲がなぜ入っていないのだろう? 版権の制約なのだろうか?
 
   
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