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O plus E誌 非掲載
 
 
ファンタスティック・フォー』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2015 MARVEL & Subs. (C) 2015 Twentieth Century Fox
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月9日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2015年9月16日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新趣向は分かるが,散漫で退屈なリブート失敗作  
  月の中旬から下旬にかけての祝日は全く有り難くない。毎月のO plus E誌の締切は,通常の校了日が週末にかかるとその分早くなる。この校了日から発行日(毎月25日)までの間に祝日があると,さらにその分早く入稿&校了する必要があるから,祝日など嬉しくなくなるのだ。例年3月,7月,9月,11月,12月がこのパターンになってしまうが,今年は5連休のシルバー・ウィークとやらに遭遇してしまった。このため,丸ごと5日間も校了日が早くなってしまった。
 その犠牲になったのが本作である。マーベル・コミック(MC)の実写映画化でVFX多用作,過去のシリーズ2作も紹介しているので,当然メイン欄で語るべき対象である。ところが,僅かな差で締切までに試写が観られず,O plus E誌10月号で紹介できなかった。止むなく,短評だけWebに掲載して済まそうかと思ったのだが,本作を飾るCG/VFXに敬意を表し,Webページでも準メイン扱いで紹介しておこう。
 これまで『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』(05年10月号)『同:銀河の危機』(07年9月号)の2作が公開されている。MCの礎を築いた男3人,女1人のヒーロー・チームであり,米国人には格別の思い入れがあるキャラ達であることも既に述べた。MCの映画化作品とは言っても,人気作を連発中のディズニー映画網配給ではなく,『X-Men』シリーズと同様,20世紀フォックスが映画化権を有している数少ない作品の1つだ。
 8年ぶりの新作の登場と聞き,気になったのは,4人組ヒーローの内,全身を発火できる「たいまつ男ジョニー」役であったクリス・エヴァンスである。ディズニー系の『キャプテン・アメリカ』シリーズの主役に抜擢され,『アベンジャーズ』シリーズにもしっかりと出演している。別会社製作とはいえ,同じMC管轄下で,別々のヒーロー2人を演じるのはまずい。もはや「キャプテン・アメリカ」は彼の当たり役であり,誰も「たいまつ男(ヒョーマン・トーチ)」の姿は思い出さない。
 そう勝手に心配していたら,本作は流行りのリブート作であり,監督も出演者も総入れ替えした新シリーズのようだ。その証拠に,表題も英日ともに副題なしで,ストレートに「チーム名」だけで通している。恰も正統派の認知されたチームであり,これから本格的なシリーズが始まると言わんがばかりだ。
 監督は,『クロニクル』(13年10月号)で長編デビューを果たしたジョシュ・トランクで,これが2作目となる。デビュー作は,突如スーパーマン並みの超能力を得た青年3人が主人公で,そのパワーの乱用・悪用が引き起こすドタバタを描いた青春映画であった。根っからSFアクション,ヒーロー映画が好きらしい。本作では脚本の一部も担当している。
 前シリーズでも,主役の4人はほぼ無名の若手俳優ばかりだったが,上述のように,ジョニー・ストーム役のクリス・エヴァンスは,その後キャプテン・アメリカ役でブレイクし,姉スー・ストーム役のジェシカ・アルバは,『シン・シティ』シリーズ等で活躍している。これが一旦リセットされたので,本作も同様に馴染みの薄い若手俳優を起用している。ジョニー役のマイケル・B・ジョーダンは,『クロニクル』にも出演していた黒人俳優だが,監督のお気に入りなのだろう。姉のスー(ケイト・マーラ)が白人女優なので,一体どうなっているのだろうと思ったら,本作ではスーは実姉ではなく,養女扱いにしていた。お気に入りの俳優を使いたいためか,それともチームに1人は黒人を入れるという政治的配慮のためなのだろうか。原作の設定を平気で変えてしまうご都合主義は如何なものかと思う。
 4人+ビランのビクター(Dr.ドゥーム)が超能力を持つに至った原因は,宇宙船の事故でなく,異次元空間にテレポートされたためになっている。いくらリブートとはいえ,原作や前シリーズの大前提まで変えてしまっている。米国人コミック・ファンのクレームを予想してか,テレポーテーションの実験装置などは,レトロな感じを出そうとしている(写真1)。意図や趣向は分かるが,このレトロなデザインがチープな感じに見えてしまい,筆者は好きになれなかった。
 
 
 
 
 
写真1 これが初期のテレポーテーション装置
 
 
  リードとベンの科学少年時代から始まり,テレポーテーション装置の完成,異次元パワーによる肉体変化までが長過ぎる。この種のスーパー・ヒーローものは,そのパワーを発揮し始めるシーンが痛快でなければならないのに,それまでの時間がかかり過ぎて,散漫かつ退屈な映画になってしまった。終盤は敵役のDr.ドゥームを登場させ,無理やりバトルを入れた感があり,まとまりにも欠ける。すばり,リブート失敗作だと言えよう。ディズニー+マーベル組の卒のない製作力に比べると,脚本がお粗末で,監督の演出力もまだまだ未熟だと感じた。
 こう断じただけでは,CG/VFX担当チームが報われないので,その見どころを少し挙げておこう。
 ■ CG/VFXの主担当は,Weta DigitalとMPCである。さらにPixomondo,Rodeo FXでもかなりの数のCGアーティストが参加し,他数社がクレジットされていた。これだけの一流どころが参加していて,VFXのクオリティが悪かろうはずはない(写真2,写真3)。テレポーテーション装置,異次元空間プラネット・ゼロ等,CG描画は卒なくこなしている。強いて言えば,デザイン・センスが今イチだ。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 この程度のVFXは当たり前で,随所に見られる
 
 
 
 
 
写真3 この既視感溢れるシーンも,まずまずの出来
 
 
  ■ リーダーの「Mr.ファンタスティック」ことリード・リチャーズ(マイルズ・テラー)は,ゴム状に変化できる人間という設定だが,本作ではとてつもなく手足が長い状態で登場する(写真4)。今や何でもCGで描ける時代とはいえ,これは趣味が悪過ぎる。一方,「インビジブル・ウーマン」のスーの描写は,まずまず無難だった。自らの身体を透明化する表現はさほど難しくないが,他の物体を透明化するシーンはCG/VFXならではの威力が発揮されていた。
 
 
 
 
 
写真4 異星パワーを浴びたリードは,こんな長い手足に
 
 
  ■ 他の2人,「ヒョーマン・トーチ」のジョニーと「ザ・シング」のベン(ジェイミー・ベル)の表現は明らかに進化している(写真5,写真6)。俳優の実演にCGを重ねたのではなく,今やMoCap装置で動きを計測し,「たいまつ男」や「岩男」のCGデータを駆動させる方式だろう。8年も経てば,この程度の進歩は当然と言える。このリブート・シリーズはこのまま消えて行くのだろうか? このキャスティングのまま続編を作るなら,しっかり脚本もデザインも練ってから臨むことを期待したい。
 
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写真5 「たいまつ男」ジョニーの炎は一段と進化
 
 
 
 
 
写真6 「岩男」ベンのゴツゴツ感もCGならではの出来映え
(C) 2015 MARVEL & Subs. (C) 2015 Twentieth Century Fox
 
 
   
   
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