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O plus E誌 2008年6月号掲載
 
 
 
僕の彼女はサイボーグ
(ギャガ・コミュニケーションズ配給)
 
      (C) 2008「僕の彼女はサイボーグ」フィルムパートナーズ  
  オフィシャルサイト[日本語]  
 
  [5月31日よりサロンパス ルーブル丸の内ほか全国松竹・東急洋画系にて公開予定]   2008年4月15日 ギャガ試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ロボットには見えないが,彼女はとても魅力的  
 

 今月はもう1本邦画が続く。といっても純然たる日本人の手なる作品ではなく,韓国人監督に依頼し,日本人スタッフとキャストを使って撮った日本映画である。監督・脚本は,『猟奇的な彼女』(01)『僕の彼女を紹介します』(04)のクァク・ジェヨン。題名も,気の弱い善良な男性と存在感のあるパワフルな女性の組み合わせも,この監督のヒット作への便乗作戦だ。その彼女が未来からやって来たサイボーグだというのも,奇跡やタイムパラドックスが大好きな韓流の定番の筋書きである。
 本映画の製作幹事会社はアミューズソフト,配給は洋画系のギャガ・コミュニケーションズだが,決してインディペンデント系独特の作風でなく,主演は綾瀬はるか・小出恵介の青春コンビ,主題歌を歌うのはMISIAという選択からは,韓流の力を借り,メジャーな東宝に対抗して,若者向け映画市場に斬り込もうという意欲が感じられる。ことの発端は山本又一朗プロデューサーとクァク・ジェヨン監督の出会いにあるそうだが,テレビ局主導でない企画と広報に,少し新しさを感じる。
 冴えない大学生のジローが20歳の誕生日に1人で自分用のプレゼントを買っている所に,突如ボロボロのボディスーツを着た魅力的な「彼女」が登場する。ハチャメチャな誕生日を一緒に過ごした夜,意味不明の言葉と涙を残して彼女は去ってしまうが,丁度1年後の21歳の誕生日に,再びそっくりな彼女が現われる。似ているが何かが違う彼女は,未来の自分が現代の自分を救うために送り込んだサイボーグだという……。
 主演の綾瀬はるかは,TVドラマやCMでも売出し中だが,この映画で大きくブレイクするだろう。大きな目が魅力的で,少し太めだが,カラフルなワンピースもロボット用のボディスーツ姿も良く似合う(写真1)。演技は少しぎこちないが,サイボーグ役という演出もあるのかと思う。別掲の『ザ・マジックアワー』ではいい味を出していたから,もう少し演技力はあるはずだ。
 サイボーグが引き起こす,前半のスラップスティック調のコメディは明るく楽しい。物語の流れは若干分かりにくいが,これはタイムトラベルものということで,少し我慢して観て頂きたい。最後に一挙に謎解きがされ,疑問は氷解するはずだ。込み入ってはいないが,納得できる落とし所だとだけ言っておこう。
 さて,CG/VFXだが,前半は写真2のような他愛もない視覚効果だけだった。ワイヤーアクションもしかりである。サイボーグの彼女が未来から登場する場面は,『ターミネーター2』(91)へのオマージュと言えば聞こえがいいが,約20年前の表現レベルだ。この種のVFXで満足しているのは,予算上の制約なのだろうか,それとも監督がその程度しか要求しないからだろうか? 『T2』のパロディならば,彼女の脳や身体の一部をCG合成で見せてくれよと思いつつ観ていたが,終盤に衝撃的な映像が登場する。これ以上は語らないでおこう。
 後半の大地震の場面以降,この映画は急激にスケールアップする。SFXもVFXも多用されているが,現在の日本映画界の水準からすれば大健闘の部類だ。惜しむらくは,CMや予告編では流れているのに,ビルの倒壊シーン等のスチル画像が提供されない。ラブロマンス主体で,CGはウリではないという理由だろうが,その方針は間違っている。プロデューサーさん,CGスタッフの意欲を殺いでは,今後いい映画はできませんよ。    

 
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写真1 少し太めだが,カラフルなワンピースもロボットスーツもよく似合う

 
   
 
 
 
写真2 前半のVFXはこの程度だが,後半はかなり盛り上がる 
(C) 2008「僕の彼女はサイボーグ」フィルムパートナーズ
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)  
   
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