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O plus E誌 2007年9月号掲載
 
 
 
ファンタスティック・フォー:銀河の危機』
(20世紀フォックス映画)
 
      (C)2007 TWENTIES CENTURY FOX  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [2007年9月21日より日劇1ほか全国東宝洋画系にて公開予定]   2007年7月19 リサイタルホール[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  軽快で,くどくなく,短かめなのが好ましい  
 

 アメコミの映画化作品のシリーズ2作目である。以前にも何度か書いたが,試写を観て自分なりの評点を確定させるまでは,他の映画評は見ないように心がけている。一方,この映画のように,米国での公開前に日本国内での試写がある場合には,見終わってから,逆に米国での批評家の評価や興行成績を予想してみることができる。その意味の予想が,最もしやすい類いの映画だった。
 結果は,評価は中の下で,プロの映画評論家としては大して褒めるところなしだった。一方,興収は勿論公開週のNo.1で,前作(05年10月号)を若干上回る結構なヒットであった。いずれも,全くの予想通りである。一過性のメガヒットではなく,週末を家族連れで映画を楽しむファミリー層を意識した作りで,その企画通りの実績を収めたということだ。
 監督のティム・ストーリー,製作のアヴィ・アラド,製作総指揮のクリス・コロンバスやスタン・リー等も,主演の4人組(ヨアン・グリフィズ,ジェシカ・アルバ,クリス・エヴァンス,マイケル・チクリス)も全く第1作目と同じだから,作る方も観る方も,続編を続編らしく楽しむことができる。実際,4人の性格や得意技は既に紹介済みだから,その得意技を軽く披露しつつ,直ちに続編の物語に突入できる。本作は,「超能力ユニットF4」のリーダーであるリードと恋人のスーの結婚式の話題から幕を開ける。
「スパイダーマン」や「X-MEN」よりも早い1961年に登場し,マーベル・コミック成功の原動力となったキャラクタたちというから,アメリカ人には格別の思い入れのある存在らしい。日本で言えば,「鉄腕アトム」「月光仮面」のような存在だろうか。変身,超能力という点では,もう少し後年の「ウルトラマン」や「仮面ライダー」に相当する感じかも知れない。それゆえ,昔ながらのF4ファンは,ヒーローたちが実写化して登場するだけで嬉しいのだから,イメージを損なわない程度の話で十分だ。同伴する子供たちにも,話はシンプルで痛快であればいい。この映画が最も好ましいのは,妙に説教じみてなく,軽快で,何よりも上映時間91分という短さだ。
 そもそも,娯楽映画というのは軽快さが身上だ。それなのに,『スパイダーマン』シリーズは,ピーター・パーカー君の人間性や青年の悩みを描こうとしてくどいし,『パイレーツ・オブ…』シリーズは長過ぎて辟易する。少しでも重厚さを醸し出して大作らしさを強調したいのだろうが,ステーキ16oz級のボリュームとこってり味は胃にもたれる。ヒーローが悪漢をやっつける単純で屈託のない話の方が,シリーズとしては長持ちする。
 さて,本作での悪漢はというと,銀色に輝く「シルバーサーファー」なる宇宙からの侵略者だ(写真1)。サーフボードに乗って銀河宇宙を駆け抜け,惑星を破壊し,そのエネルギー吸収するという。この波乗り姿は悪趣味なデザインで,悪役としても迫力ないのだが,これがF4シリーズではなかなかの人気者らしい。さしずめ,ウルトラマンにとってのバルタン星人のような存在なのかと思う。1960年代前半は,サーフィンの大流行期であったから,その頃にデザインされたのだろう。

 
     
 
写真1 これが宇宙から来た悪漢シルバーサーファー
 
     
 

 製作費1億3千万ドルだけあって,CG/VFXもふんだんに登場する。駿河湾を凍らせたり,エジプトのピラミッドに雪を降らせたり,ロンドンのテムズ川の水を干上がらせたりを皮切りに,F4メンバー変身・変形シーンも卒なく描き分ける。中でも,この映画で最も活躍するのは,スーの弟ジョニーだ(写真2)。たいまつ男の火炎の表現は,今や特筆すべき技術ではないが,悪くもない。技術的に注目すべきは,むしろリードのゴムのように変形する身体の表現だ。最新のdeformable objectsの表現法を駆使しているようだ。VFX担当は,Weta Digital社を筆頭に,The Orphanage, Giant Killer Robots等のスタジオが参加しているが,前作よりもレベルは上がっている。漫画的で少し誇張したアクション表現が多いが,それも60年代のコミックの雰囲気を出そうという考えからだろう。
 という訳で,全体としてかなり好感をもってこの映画を眺めたのだが,1つだけ勘弁して欲しい。最後にリードとスーを囲むパーティの,東洋風の気味悪い描写は何だ!? 着物姿らしき女性がいるということは,これは日本のつもりか? いくら外国映画だからといって,このグロテスクな描き方はあんまりだ。

 
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写真2 本作での活躍度No.1は,このたいまつ男
(C)2007 TWENTIES CENTURY FOX
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加してします)  
   
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