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O plus E誌 2006年12月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『デスノート the Last name』:以前は「後編」と称していたのに,『DEATH NOTE デスノート 前編』とは対称形でないタイトルで登場した。勿論,1文字だけ大文字にしているのは意図的だ。頭脳明晰な探偵「L」が饒舌になって,神秘性が薄れたのは残念だが,2冊目の「デスノート」の登場で物語は面白さを倍加している。原作コミックとは違う予測不能の結末というが,これじゃ映画の定番パターンだ。大衆に見せる作品としてはこんなものだろう。死神の画質がものすごくリアルになり,CGの腕も上がったなと感心したのだが,実は一部はパペットだったようだ。新登場の死神レムの声を演じる池畑慎之介(ピーター)がいい。
 ■『武士の一分(いちぶん)』:山田洋次監督の藤沢周平原作の時代劇3部作の最後を飾る作品だ。初の時代劇『たそがれ清兵衛』(02)での手探り状態が,『隠し剣 鬼の爪』(04)では肩の力も抜け,余裕のある演出だった。この作品は,緻密な構成で迫力ある入魂作へと進化している。順番に見ると一層味わい深い。いずれも下級武士の生活と愛憎を描いているが,脚本もカメラも小道具も生活感もリアリティ満点だ。「一分の隙もない」とは,このことだ。半面,もうちょっと遊びも欲しかった。
 ■『王の男』:16世紀初頭,韓国史上最大の暴君・燕山君の時代に,固い絆で結ばれた2人の旅芸人が王の寵愛を受け,逆鱗に触れる顛末を描いた物語である。「歴代観客動員No.1の感動巨編!」と騒ぐほどの映画でもないが,韓国人も国境緊張ドラマや定番恋愛劇にも飽きてきて,歴史物も観たくなったのだろう。韓国人俳優は美男美女ばかりかと錯覚していた日本人には,結構醜男醜女もいることが分かるだろう。演技では,狂王を演じるチョン・ジニョンの存在感が光っていた。
 ■『犬神家の一族』:横溝正史ミステリーの代表作で,30年前と同じ市川崑監督,金田一耕助役に石坂浩二の組み合わせでのリメイク作品である。テレビ番組としても何度も製作されているので,筋を知らない観客の方が少ないのではないか。となると,楽しみは今度は誰がどの役をどう演じるかという歌舞伎観劇的興味になる。なるほど,記念大作に相応しい豪華キャストだ。見ものは,松子(富司純子)と佐清(尾上菊之助)という実の母子の演技で,さすが見事に決まっていた。富司純子は『フラガール』の古風な母親も良かったが,この威厳ある長女・松子も好演だ。ただし,90歳を過ぎた市川崑監督に合わせるためか,映画のペースはスローで,セリフも分かりやす過ぎるくらい分かりやすい。
 ■『フラガール』:噂を聞き,遅ればせながら11月中旬の日曜日午後,東京まで出向いて有楽町のシネカノンで観た。ロングランも終了間際だというのに,まだかなり混んでいた。昭和40年,常磐炭鉱経営危機に際した町おこし事業「常磐ハワイアンセンター」の設立にまつわる実話をもとにしている。同じ李凰宇氏製作の『パッチギ!』(04)とは好一対で,素朴な青春エネルギーのほとばしりと,まだ貧しかった日本の世相を見事に描いている。主演の松雪泰子・蒼井優の好演が柱となっているが,助演の富司純子の演技も光っていたし,豊川悦司も相変わらず渋い。文句なく,本年度の邦画ベスト1だ。
     
  (上記のうち,『フラガール』はO plus E誌に非掲載です)  
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