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O plus E誌 2006年11月号掲載
 
 
purasu
アタゴオルは猫の森』
(角川ヘラルド映画)
      (c)2006 ますむらひろし・メディアファクトリー /アタゴオルフィルムパートナーズ  
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [10月21日より有楽座ほか全国東宝洋画系にて公開中]   2006年9月27日 ヘラルド試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  3D-CG化は成功しているが,画質面がちょっと残念  
 

 本欄では,ピクサー作品に端を発する長編フルCGアニメの歴史をずっと追いかけ,克明に解説してきた。2Dセル調アニメに比べて,3D-CGアニメは表現力で圧倒的に優位に立ち,(日本の宮崎アニメは別格として)興行面でも大きな差をつけている。となれば,ハリウッド・メジャー各社がこぞって参入しようと目論むのも無理はない。かつて数年に1本を製作するのがやっとだったのに,各社が年1?2本のペースで量産し始めては,とても全部は見切れない。ついにワーナー作品の『アントブリー』(06)は試写を観る機会を逸して紹介できなかった。おまけにファミリー層対象の動物ものばかりでは食傷気味だ。来月号ではディズニー対ソニーの動物対決で2本取り上げるが,企画が貧困だよと言いたくもなる。
 そんな中で,猫を主人公にした日本製のフルCGアニメだという。ここまで来れば,「おーそうか。こんな激戦区に立候補するからには,国産の腕のほどを見せてもらおうじゃないか」と比べてみたくなった。
 原作は,ますむらひろし作のコミック作品で,30年 間で600万部以上を売り上げたロングセラーである。「アタゴオル」とは,2本足で立って歩き,言葉を話す猫たちと人間が共存する不思議な桃源郷だそうだ。この独特の世界観をもつコミックの中で,個性溢れる主人公「ヒデヨシ」は人を食ったような奇妙なワガママ猫である。各種CM,地域振興キャンペーン,他作品にも再三登場しているので,原作コミックの存在を知らない人でも,この存在感のある猫の絵は見たことがあるだろう。
 このCGアニメでも,その世界観を忠実に再現しようとしている。当初は世間離れしたふざけた世界に戸惑うが,慣れるに従い,うるさいヒデヨシも愛すべきキャラだと感じるようになる。その一因は,ほのぼのとした癒し系の画調のせいだろう(写真1)。木や水の描写は,最前線の表現力と比べると少し落ちるが,写実性は高くなくてよい。猫の毛並みもこのレベルで十分だ。
 主役のビデヨシは,3D幾何モデル向きにデザインし直したという。CGクリエーター集団「デジタル・フロンティア」が担当したこの3D-CG化は成功していると言える。なかんずく,冒頭の音楽ステージ・シーンは出色だ。音楽監督・石井竜也のサウンドと相まって,コミックやセル調アニメでは表現できない味を出している。ここだけCMに再利用しても,十分通用するだろう。
 残念なのは,画質の悪さだ。劇場用映画だというのに,エッジやヒゲのジャギーが目立つ(写真2)。アンチエリアシング処理が悪さをしているように見える。低予算のため計算費用を節減し,低解像度で生成した画像をアップコンバージョンしたのだろうか,それともフィルムに単純拡大転写したのだろうか。こんなところで,製作費をケチってはいけない。声優・山寺宏一の話術は絶品で,夏木マリもいい味を出しているだけに,画質と脚本の弱さが惜しまれる。これで1,800円はちと高い。  

 
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写真1 写実性よりも癒し感を重視した画調は合格点

 
 
 

写真2 エリアシングによるジャギーが目立つのが残念

 
 
     
     
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