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O plus E誌 4月号掲載
 
 
『グリーンマイル』
(キャッスル・ロック・エンターテインメント製作/ギャガ・ヒューマックス配給)
 
       
      (2000/2/22 ギャガ試写室)  
         
     
  正統派ドラマで,SFXは控えめ  
   このコーナー執筆のためSFX/VFXを多用した映画ばかり見ていると,面 白い映画,あっと驚く映像表現には出会うが,良い映画,感動する映画には滅多にお目にかかれない。そんな中で,この『グリーンマイル』は,本シリーズ始まって以来もっとも重厚で良識ある作品だろう。原作・配役等々話題は満載で,3時間余の大作ということからも,前評判は高かった。
 売れっ子作家スティーヴン・キングの原作は,月1冊ずつペーパーバック版で出版され,全6冊がベスト・セラーとなっていた。これをフランク・ダラボンが脚色・監督するという。即ち,名作『ショーシャンクの空に』(1994)の原作・監督コンビで,舞台も同じく刑務所である。そして,主人公の看守主任は,この年のアカデミー賞で『ショーシャンクの空に』に勝った『フォレスト・ガンプ/一期一会』のトム・ハンクスが演じるという。T・ハンクス3度目のアカデミー主演男優賞なるかとのオマケまでついて,映画界の話題にはことかかなかった。
 残念ながらT・ハンクスはノミネートされなかったが,『グリーンマイル』は,作品賞,助演男優賞,脚色賞,音響賞の4部門の候補に上がっている。この号が出る前にその結果 が出ているはずだ。  ここまで話題が揃い,しかもSFX利用作品ということで,我々もしっかり予習して臨むことにした。新潮文庫版6冊をじっくり読んで,1冊ずつに回した。ストーリーを完全に把握して,どう映画化するのか,SFXはどこに使うのかも予想することにした。
 1930年代アメリカ南部の刑務所の死刑囚舎房で,電気椅子に向う受刑者が最後に歩む緑色のリノリウムの廊下が,グリーンマイルと呼ばれていた。『ショーシャンクの空に』が囚人側から描かれていたのに対して,この作品は看守主任の回想録で,看守チームと超能力をもった死刑囚の織りなす物語が正統派のドラマである。S・キング作品は,30本以上も映画化されているだけあって,小説の中にいかにも映画向きと感じる場面 が多々あった。
 
 
 
 神の申し子として描かれる死刑囚ジョン・コーフィ(J.C.)は,言うまでもなくキリストを想像させるネーミングである。その他にも随所に聖書からの引用とおぼしき箇所があるが,宗教知識がなくても小説も映画も十分楽しめる。とてつもない大男の黒人という想定に,誰を使うのだろうか心配したが,『アルマゲドン』のマイケル・クラーク・ダンカンが起用された。都合の良い俳優がいたものだ。この作品の好演により,忘れられない存在となるだろう。
 SFXは,演技をするネズミのジングルスは当然CGとして,ドラクロアの凄惨な処刑シーン,J・コーフィの口から虫が飛び出すシーン,体内の毒を口移しにするシーンでの利用を予想した。そのほとんどは予想通 りだったが,ネズミは99%本物を使ったという。当初3割以上CGを利用する予定だったのを変更したらしい。『ベイブ』でオスカーを受賞したチャーリー・ギブソンがSFX担当というから,我々の事前予想も無理からぬ ところだろう。特撮専門誌Cinefexがこの作品の掲載を予告しながら中止したのも,このネズミの扱いの急遽変更によるものと思われる。1ヶ月後に公開された『スチュアート・リトル』はほぼフルCGだから,その出来映えを比較してみたかったのに残念である。
 ジングルスだけでなく,その他の場面もSFXは抑え気味だ。これだけの大作だから,経費を惜しんだとは思えない。全体に原作に忠実で,それでいて原作にある猥雑なセリフや暴行シーンはほとんどカットされている。F・タラボン監督は,淡々としたストーリー展開で重厚さを演出したかったのだろう。意図的にSFXを多用しなかったという意味で,このコーナーにとっては印象に残る作品であった。
  (Dr. SPIDER)  
     
  キャスティングは最高  
 
試写会は大混雑で大変でした。1時間前でもう満員。アカデミー賞にノミネートされたせいでしょう。
評論家以外に,有名人も一杯来ていました。
編集者は若い女性,映画評論家には老人が多いけれど,こんな浮浪者までがと思ったら…。
泉谷しげるさんでした(笑)。試写 室の外には戸田奈津子さんがいたし,最後に駆けつけてきたのは元ピンクレディのMIEちゃんですよ。
それは残念,見逃してしまった。きっと,来日するトム・ハンクスにインタビューしたり,新聞広告では「私も感動で涙が止まりませんでした」な〜んて出てきますよ(笑)。で,あなたは?
いい映画でしたが,涙は出ませんでした。先に完全にストーリーを知っていたのは失敗ですよ。予備知識なしに観たら,もっと感動したと思います。
なんて妙な評価もそのためです。よりは上だけど,は乱発したくない。でも,いきなり観たらだったかも知れません。
主演のトム・ハンクスもいいですが,脇役が素晴らしかったですね。数十年後に回想する老人役もトム・ハンクスに似た俳優さんでした。
監督が満点のキャスティングができたというだけあって,ミスキャストはなかったですね。強いて言えば,悪役のウォートンが原作よりやや線が細かったかな。
私は,ブルータル役のデヴィッド・モースが大好きなんです。彼のはまり役だし,トム・ハンクスとの目と目の演技も見事で,それだけで最高でした。
看守チームも囚人たちも個性的に描けてましたね。だけど,魅力的なのは男ばっかり。女性は,オバサンとお婆さんの計3人で,もう少し若いギャルを出してサービスしてくれればいいのに…(笑)。
ハハハ,そうでしたね。でも『ショーシャンクの空に』にも女性はいませんでしたよ。
まだ,独房の壁に官能的美女(L・ヘイワース等)のポスターが貼ってありました(笑)。
J・コーフィ役もピッタリの役者さんを連れてきましたね。そんな大きい人いないでしょうから,『マイティ・ジョー』みたいに,ディジタル処理で大きくしてはめ込むのかと想像していました(笑)。
実物もかなりの大男だそうですが,映画の中ではもっと大きく見せていました。
全身を見せなかったり,工夫してましたね。
ネズミの99%は実物とのことですが,1匹ではなく,個々の演技をする数十匹を使い分けたそうです。
残る1%はどこなんですか?
多分踏みつけられ,血を流しながら喘ぐシーンがそうでしょう。CGでなくパペットだと思います。99%というのはたとえで,エンドロールにはパぺッターの名前が何人もあったから,もう少し使われていたと思います。
SFXは控えめでしたが,もっと使うとしたらどこですか?
老婦人の病気が治る場面 。私なら,病人の顔から元気な顔へゆっくりとモーフィングを使います。
なるほどねぇ。でも,この淡々とした描き方にも好感がもて,3時間8分が全く長く感じませんでした。『マグノリア』の3時間とは大違いです。
いえいえ,私には長かったです。始まるまでにたっぷりソフトドリンクを飲んだでしょう。開演直後からトイレに行きたくて,3時間ひたすら耐えました(笑)。辛かったの何の…。
パーシーのようには,お漏らしできませんね。
尿路感染症ではないけれど,「J・コーフィよ,私も助けてくれ!」と祈っていました(笑)。[この部分は,映画を見終わってから読み直して下さい:-)]
 
   
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