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O plus E誌 2005年11月号掲載
 
 
ダーク・ウォーター』
(タッチストーン・ピクチャーズ/東宝東和配給 )
     
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [11月12日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にて公開予定]   2005年9月29日 ナビオTOHOプレックス[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  和製ホラーの3匹目の泥鰌の味は少し淡泊  
 

 ハリウッドの製作者も観客も,すっかり日本製のホラーがお気に入りのようだ。『リング』『呪恩』の英語版リメイク作品のヒットの後, 3匹目の泥鰌を狙った本作品の原典は鈴木光司原作の『仄暗い水の底から』(角川ホラー文庫)で,日本では『リング』と同じ中田 秀夫 監督で 2001 年に映画化されている。
 この映画の監督は,チェ・ゲバラの若き日を描いた『モーターサイクル・ダイアリーズ』 (05)で注目を集めたブラジル人監督ウォルター・サレスで,これがハリウッド・メジャーでのデビュー作だ。日本では黒木瞳が演じた主人公の女性を,『ビューティフル・マインド』( 01 )でオスカー女優となったジェニファー・コネリーが演じる。ホラーには美女はつきものだが,我が子を守ろうとする少し神経質な母親役に彼女の起用は合っている。
 舞台は 2005年のニューヨーク。離婚調停中のダリア(J・コネリー)は,夫カイルと娘セシリアの親権を争っている。母子で住むために彼女がようやく見つけた住居は,屋上に給水塔のある古びたアパートだった。その部屋では,空き部屋のはずの上階からは物音が聞こえ,天井の染みがどんどん大きくなり水漏れが激しくなるなど不思議な出来事が次々と起こる。悪夢に襲われるようになったダリア母子に次第に迫り来る恐怖の正体は……。
 舞台をNYに移しただけで,基本的には原典とほぼ同じ設定と展開だ。和製ホラーがハッピーエンドでないことは観客も承知の上だろうが,アメリカ人向けに随所で分かりやすく翻案してある。怨念が残る死因はほらこれですよ,この主人公はいま死んじゃったのですよ,と念を押して解説してくれる。ただし,エンディングの語り口はこのリメイク版の方がいい。じゃんけん後出しだから,少し洗練されているのは当然とも言えるが…。
 この映画を日本で観る平均的観客は,どういう層なのだろう? 和製ホラーのファンで,ハリウッドではどう翻案されるのか,今度はどう怖がらせてくれるのか細部をチェックするマニアだろうか,それとも純粋に洋画として初めて観る観客が大半なのだろうか。
 今年3本目となったこの洋風リメイク・ホラーには,前2作(『THE JUON/呪怨』『リング2』)ほどの恐怖はなく,やや淡泊に感じた。この完成披露試写を観たのは大阪・梅田のシネコンで,折しも阪神タイガーズ優勝の夜だった。観客は通常よりも少なく,そのため恐怖の盛り上がりも控え目に感じたのかもしれない。上映後外に出たら,夜の大阪駅前の人だかりと喧騒は凄まじく,駅まで無事辿り着けるかの恐怖の方が大きかった。
 閑話休題。さて,この映画のVFXの出来はと尋ねられると,ちょっと答えに窮する。最近絶好調のデジタル・ドメイン社がVFX担当というので,凄まじい水の勢いや亡霊を見事なCGで描いてパワーアップしてくれるのかと期待したが,実際にはほぼ原作通りで何もないに等しかった。写真1の程度の土砂降りや水浸しのシーンは,視覚効果を使わなくても実写でも十分表現できるが,セットを汚すことを嫌ってデジタル技術に頼ったのだろうか? 結果として,本時評としては解説対象ではなかったのが,折角観たので取り上げることにした。恐過ぎはしないので,ホラー入門としては勧められる。 ま,たまには,こういうこともあります。 

 
     
 
 

写真1 この程度の土砂降り,水浸しは本物で十分なのだが…

 
 
 
     
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