元は中年以上の世代なら誰でも知っている米国製の30分ものTVホームドラマで,64〜72年に製作され,日本では66年から放映されていたようだ。この題を聞いただけで,「奥さまの名前はサマンサ。そして,旦那さまの名前はダーリン。(中略)でも,ただひとつ違っていたのは,奥さまは魔女だったのです……」という冒頭のナレーションと,サマンサが鼻をピクピクと動かすシーンを思い出す。典型的なアメリカの中流家庭が舞台で,サマンサや母親のエンドラが時折使う魔法が引き起こす愛すべき騒動が人気の的だった。
その映画化作品の主演が,ニコール・キッドマンと聞いただけで嬉しくなるではないか。かつてのサマンサ役エリザベス・モンゴメリーにそっくりで,彼女以外には考えられないキャスティングだ。母親エンドラ役は,何と往年の名女優シャーリー・マクレーンが演じるという。ますます楽しみだ。監督・脚本・製作はノーラ・エフロン。『めぐり逢えたら』 (93)『ユー・ガット・メール』(98)で知られる「ラブ・ストーリーの達人」が,VFX全盛時代にどんな魔法使い映画になるか期待が膨らんだ。
TVシリーズと同じ設定の素直な映画化かと思えば,ちょっとヒネってあった。売れなくなった男優ジャック・ワイアット(ウィル・フェレル)が,人気TVドラマのリメイク作品で人気挽回を図ろうとし,ふとしたことからサマンサ役に選んだイザベラ・ピグロー(N・キッドマン)が,実は本物の魔女で,「魔女役を演じる女優は,本当の魔女だったのです」という設定である。
魔女が女優として魔女役を演じるおかしさが笑いを誘う。かつての TV番組のシーンが登場するのも懐かしい。キッドマンとマクレーンが着るファッションの数々も見ものだ。フランク・シナトラ,ナタリー・コールなどが歌う挿入曲も懐かしさを助長する。そして,何よりもN・キッドマンが可憐で可愛いことに感嘆する(写真1)。芯のあるキャリアウーマン・タイプの役柄が似合う彼女が,よくぞこんな軽い役も演じるものだ。さすがプロの俳優だと感心する。
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