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O plus E誌 2005年9月号掲載
 
 
奥さまは魔女』
(コロンビア映画/SPE配給)
         
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2005年7月19日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]
 
  [8月27日より丸の内ルーブル他全国松竹・東急系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  懐かしく楽しいが,もうちょっと魔法が欲しかった  
 

 元は中年以上の世代なら誰でも知っている米国製の30分ものTVホームドラマで,64〜72年に製作され,日本では66年から放映されていたようだ。この題を聞いただけで,「奥さまの名前はサマンサ。そして,旦那さまの名前はダーリン。(中略)でも,ただひとつ違っていたのは,奥さまは魔女だったのです……」という冒頭のナレーションと,サマンサが鼻をピクピクと動かすシーンを思い出す。典型的なアメリカの中流家庭が舞台で,サマンサや母親のエンドラが時折使う魔法が引き起こす愛すべき騒動が人気の的だった。
 その映画化作品の主演が,ニコール・キッドマンと聞いただけで嬉しくなるではないか。かつてのサマンサ役エリザベス・モンゴメリーにそっくりで,彼女以外には考えられないキャスティングだ。母親エンドラ役は,何と往年の名女優シャーリー・マクレーンが演じるという。ますます楽しみだ。監督・脚本・製作はノーラ・エフロン。『めぐり逢えたら』 (93)『ユー・ガット・メール』(98)で知られる「ラブ・ストーリーの達人」が,VFX全盛時代にどんな魔法使い映画になるか期待が膨らんだ。
 TVシリーズと同じ設定の素直な映画化かと思えば,ちょっとヒネってあった。売れなくなった男優ジャック・ワイアット(ウィル・フェレル)が,人気TVドラマのリメイク作品で人気挽回を図ろうとし,ふとしたことからサマンサ役に選んだイザベラ・ピグロー(N・キッドマン)が,実は本物の魔女で,「魔女役を演じる女優は,本当の魔女だったのです」という設定である。
 魔女が女優として魔女役を演じるおかしさが笑いを誘う。かつての TV番組のシーンが登場するのも懐かしい。キッドマンとマクレーンが着るファッションの数々も見ものだ。フランク・シナトラ,ナタリー・コールなどが歌う挿入曲も懐かしさを助長する。そして,何よりもN・キッドマンが可憐で可愛いことに感嘆する(写真1)。芯のあるキャリアウーマン・タイプの役柄が似合う彼女が,よくぞこんな軽い役も演じるものだ。さすがプロの俳優だと感心する。

 
     
 

写真1 こんなに可憐なN・キッドマンは珍しい役柄

 
 
 
     
 

 ラブ・コメディとしては満足しつつも,物足りなかっのは VFXだ。目立ったのは,娘イザベラを心配するパパ(マイケル・ケイン)の顔が,スーパーの商品パッケージの絵柄として再三登場するシーンくらいだ。せめて箒に乗って自在に飛び回り,ダーリンをあっと驚かすシーンくらいあってもいいのに,そのVFX費用をケチっている。そもそも魔法が少な過ぎるのだ。あっても,人物が消えたり出たり,手がカニ鋏み状になったりと,高度なVFXと呼べるものではない。もっと楽しめる爆笑映画にできたのに,そうしなかったのはこの監督の限界か。
 元祖ダーリンは影の薄い役柄だが,この映画でウィル・フェレル演じる売れない男優は,セリフも顔面の動きも派手な演技を見せてくれる。ここまでの存在感を与えるならば,いっそジム・キャリーを起用すれば,相当ギャグが濃いコメディになったかと思う。そういえば,顔だって結構もとのダーリンに似てるじゃないか。
 エンディングの後,近くの若い女性観客が「ねぇねぇ,昔の映像に出て来るサマンサって,ニコール・キッドマンに結構似てるじゃない?」と声高に話していた。いやはや,何も知らないのは強い。旧作を知る誰もが N・キッドマンをE・モンゴメリーと重ねて観ていたはずだが,それを知らずにかなり楽しめたのだから,若い女性向きのラブ・コメディとしては十分合格なのだろう。

 
 
          
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