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O plus E誌 2005年4月号掲載
 
 
レーシング・ストライプス
(アルコエンタテインメント
/松竹&ギャガ-ヒューマックス配給)
      (C)2004 DreamWorks LLC  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2005年2月3日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]
 
  [3月12日より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ベイブの二番煎じだが,ここまでの動物調教には脱帽  
 

 毎度小言を言うが,こうした原題を単純にカタカナに置き換えた題名の横行はいかがなものだろう。これでは,配給会社の担当者の無能さと上司の見識のなさを表明しているようなものである。原題を活かしつつ,映画のテーマを巧みに表現するのが腕というものだ。「 6.その他の…」でも触れたが,東宝東和やヘラルド映画に残る良き伝統を少しは見習ってもらいたい。
 さて,原題通り,競馬に登場するシマウマの話である。自分はサラブレッドであると錯覚し,レースで優勝することを夢見るシマウマが主役で,(人間には聞こえないが)動物たち同志は会話するという設定だ。どこかで聞いたことあるはずで,牧羊犬をめざす子豚がしゃべる『ベイブ』 (95)の完全な二番煎じである。お馴染みのCG製の「アニマルトーク」だと分かっていても,今度はどういう風に仕上がっているのか,当欄としてはやはり取り上げざるを得ない。どーれ。
 監督のフレデリック・デュショー,シマウマを育てる少女チャニング役のヘイデン・パネッティーアは馴染がない。むしろ動物の声の出演を重視して,ストライプスの声には TV番組でのティーン・アイドルのフランキー・ムニッズを起用し,長老格の馬タッカーにダスティン・ホフマン,ヤギのフラニーにウーピー・ゴールドバーグという有名どころを配している。そして,動物調教スーパバイザにカール・ルイス・ミラー,アニマトロニクスはジョン・コックス・クリーチャーワークショップといった『ベイブ』のスタッフたちが脇を固めているので,その点は安心だ。ただし,「アニマルトーク」のCGは,老舗のリズム&ヒューズ社でなく,『ターミネーター3』(03)のデジスコープ社が担当しているのが気になった。
 サーカス団に置き去りにされ,農場主に拾われ,少女に育てられたシマウマが,仲間に支えられ,競走馬として活躍する物語だ。典型的なファミリー映画で,筋はあってないようなものだ。結末も当然容易に予想できる。動物の演技以外にも,もう少しリアリティの高い物語展開と人間ドラマも欲しかった。この種の映画にそれを求めるのは,酷かも知れないが。
 動物の演技は,相変わらずただただ感心させられる。主人公のストライプスは赤ん坊時に 2頭,レースをする青年期用に8頭が選ばれた。いかに映画のためといえ,それをそれぞれ調教し,他の動物たちと一緒に演技させるのには,気の長い努力が必要だ。この本物指向の中に,CG製のアブの兄弟が登場する(写真1)。趣向として悪くないアイデアだが,ちょっと浮いていた感がある。
 そもそも,シマウマをサラブレッドと一緒に走らせるというのが無茶な企画だが,それには成功している(写真2) 。シマウマの最高速度は時速 28マイル(約45km)で競走馬は時速60km以上だから,競争にならない。多数のサラブレッドを遅く走らせてレースに見せるのは至難の業だが。それをやってのけるのだから,この点だけは全く恐れ入る。大したものだ。脱帽だ。

 
     
 
写真1 アブの兄弟「バズ&スカズ」は助演男優賞候補
(c)2004 DreamWorks LLC
  写真2  サラブレッドと共にレースをさせるのに脱帽
 
 
 
     
   デジスコープ社の「アニマルトーク」はと言えば,気のせいか, R&H社に比べてリップシンクが少し甘いように感じた。当然,経験者をスカウトして技法は学んでいると思うのだが,やはり老舗にはまだ敵わないと思える。あるいは,低予算で十分な作り込みのコストをかけられなかったのだろうか。
 そればかり気にして他はよく観ていなかったのだが,あの個性派脇役のペリカンはどこまでが本物だったのだろう? 一部はアニマトロニクスだろうが, CG製もあったのだろうか? もう一度観ると分かるだろうが,注意を払わないと実現方法を見抜けない。  
 
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