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O plus E誌 2003年11月号掲載
 
 
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『バッドボーイズ 2バッド』
(コロンビア映画/SPE配給)
 
 
         
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2003年9月16日 SPE試写室  
  [11月29日より全国東宝洋画系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
     
  バカバカしいが,病みつきになる陶酔感と爽快感  
   刑事もののコンビとくれば白人と黒人の組み合わせが普通なのに,前作は1995年の公開作品で,低予算ながらマイアミを舞台に黒人2人組がハチャメチャに暴れ回る痛快ポリス・アクションが大ヒットした。ならば早々に続編が作られても良かったのに,8年もかかったのは,共に初の主演作となった2人,マーティン・ローレンスとウィル・スミスが売れっ子になり,スケジュール調整がつかなかったからだという。
 特に『インデペンデンス・デイ』(96)『メン・イン・ブラック』(97)の2作で決定的に人気スターの座を射止めたウィル・スミスのその後の大活躍ぶりはご存知の通りだ。『バガー・ヴァンスの伝説』(00)『アリ』(01)では新境地を見せてくれたが,やはり彼の真骨頂は自ら歌うラップ・ミュージックのテンポに合ったノンストップ・アクションだ。その意味では,原点帰りの本作では見事にそれが実証されている。
 製作は『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003年9月号)でも紹介した名物プロデューサのジェリー・ブラッカイマー。彼が,後に『ザ・ロック』(96)『アルマゲドン』(98)でコンビを組む監督のマイケル・ベイを最初に起用したのも,この『バッド・ボーイズ』だった。話題倒れの『パール・ハーバー』(01)の失敗を見て,この監督はアクション以外に不得手と感じていたが,本作では見事なまでのノリの演出を見せてくれる。
 さて,前作の3倍の約100億円をかけた続編は,最近の流行を取り入れ「2」を「too」の意味にかけた題名を使っている。一段とパワーアップした暴れぶりということだ。当然原題からそうなのだろうと思ったら,そちらは単に『Bad Boys II』だった。ということは,日本の配給会社が悪ノリしてこんな邦題をつけたわけだ。それだけ自信作だということだ.
 舞台は前作に同じくマイアミ。中南米からの玄関口であるこの町では,巨大シンジケートによる麻薬密輸が深刻な問題になっている。市警は特捜チームTNTを結成し,敏腕刑事のマーカス(M・ローレンス)とマイク(W・スミス)もチームに合流する。マーカスの妹シド(ガブリエル・ユニオン)とマイクは恋仲にあるが,兄のマーカスに言い出せないでいる。シドにはもう1つ秘密があり,実は,DEA(連邦麻薬捜査局)の秘密捜査官で,マネー・ロンダリングのプロになりすまして麻薬王タピア(ジョルディ・モリャ)への接近を図っていた。ところが1枚の写真から彼女の身分が露見してしまい,タピアはシドを故国キューバに拉致してしまう。かくて,ギャング団,TNT,DEA入り乱れての壮絶な戦いは,マイアミから国交のないキューバへ移る。
 前作よりもパワーアップしていることは想像に難くなかったが,少々のアクションでは驚かなかった観客にも,この映画のカー・クラッシュと銃撃戦の凄まじさは驚きだろう(写真1)。一体クルマを何台壊し,何発弾を撃てば気が済むのか,このまま3時間でも4時間でもやっている気かと思うほど徹底している。この映画に比べれば『マトリックス リローデッド』(2003年7月号)のカー・アクションなど子供だまし,怖さという点では『デッドコースター』(同号)の方が上だが,ハチャメチャぶり,破壊の限りという点では映画史上例のない規模だ。何しろ,実際にハイウェイ走行中の車両運搬車からクルマをを次々と投げ落とすチェイス・シーンで壊したクルマが約200台,70年代のマスタングやトランザムから最新型のキャデラックまで,この映画全体では300台以上を壊したという。
 その撮影には,マイアミ市からマイアミビーチ市への基幹ハイウェイを4日間通行止めにして,警官隊,レスキュー隊,消防隊まで現地の本物が協力参加して登場しているそうだ。このために市当局に支払った費用が約6,000万円。依頼する方もする方だが,それを許可して参加する方にも呆れる。やはり,アメリカに取って映画は特別な存在で,地元に波及的な経済効果をもたらしてくれるドル箱のようだ。
 VFXの担当は,Sony Pictures Imageworks社がメインで,最近活躍が目覚ましいAsylum社,Pacific Title社なども参加している。カー・クラッシュは大半が本物でCGはごく一部のようだが,写したくない撮影補助機材を消したり,クラッシュや爆発の破片を書き加えたりに相当ディジタル処理が使われている。ヘリとボートのチェイス・シーンも同様だ。今やこの種のアクション・シーンは,VFX抜きでは考えられない。すでに何がCGで,どこがディジタル加工の産物か分からないレベルに達している。その一方で,写真2は模型かと思いきや,麻薬王タピア邸として実際に購入した豪邸を爆破したとのことだ。恐れ入りました。
 上映時間は2時間26分。ノンストップ・アクションには長過ぎると言いたいところだが,全くそうは感じさせなかった。この映画は好き嫌いが分かれるだろうが,好きな人には,この騒々しさと永遠に続きそうな暴れぶりが心地いいのである。真面目に考えればとんでもない破壊活動だが,気分がムシャクシャした時,物をぶん投げて壊したいあの感覚を代行してくれる。感情移入ではなく,これは環境没入とで言おうか,若者たちのロック・コンサートはこんな感じに違いない。そうだ,まだあった。今年の甲子園球場のライトスタンドの喧騒と興奮はこれに近かった!
 
     
 
写真1 これでもか!とばかりに見せてくれるカー・クラッシュ・シーンの連続     
 
 
 

写真2 こちらはミニチュアの爆発かと思ったら,豪邸を購入して実際に爆破したとのこと。いやはや…。

 
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