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titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
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O plus E誌 2014年6月号掲載
   
  当欄連載の意義と執筆スタンスの再確認(その1)  
  当映画評欄を毎月書き始めて約15年になる。映像のディジタル革命の様相を同時代進行で取材して語る「コンピュータイメージフロンティア」シリーズの中で,付録として時々,書評や映画評を書いていた。ところが,劇場公開される大衆向き映画の中でのCGの利用が顕著になったため,それだけに焦点を絞り,映画時評として独立させた訳である。いや,当時はまだ技術解説が主で,まともな「映画評」の体をなしていなかったかと思う。一貫してCG/VFX多用作を追いかけて来たことに変わりはないが,愛読者の要望に応え,一般作品の短評も始め,アカデミー賞の予想まで載せるようになったのは,ご存知の通りである。
 そもそも映画評なんて,映画好きであれば誰でも書ける。実際,素人の映画評(感想文)サイトはネット上で氾濫しているし,ブログや2ちゃんねるでは,真面目な文芸調の映画までが他の芸能ネタと同様,軽薄もしくは辛辣な落書きの餌食となっている。まさに,インターネットは誰もが自分の意見を表明できるメディアだと実感できる実例である。プロ(?)の映画評論家とて,さほどのものではない。オカマ芸能人やスポーツ選手上がりが大きな顔をして闊歩しているし,東京でのマスコミ試写会に顔を出せば,文学や映画史を学んだと思えない女性ライターがゴマンといる。もっとも,映画製作側も,漫才師や歌手が簡単に映画監督になれるのだから,目クソ対鼻クソの化かし合いと言えなくもない。
 一度自分で映画製作に関わったならば,大勢の制作者が心血注いだ労作を,2時間前後たった一度観ただけで,評することに後ろめたさを感じる。勿論,当欄は,少し予習した上で,試写会で自分の目で観て記事を書いているが,タウン誌や週刊誌などは,全く観ずに紹介記事を書いている場合も少なくない。何しろ,まだフィルムが日本に届いていない内から載っているのが,その証左だ。配給会社から提供されるプレスシートを利用すれば,それらしきことは書ける。いや,取捨選択し,抜粋して転記しているならまだしも,Web上の映画サイトの記事は,配給会社の担当者が書いているとも言われている。それに比べれば,さしたる専門教育を受けていない素人感想文であっても,しっかりした,ぶれない視点での紹介や解説であれば,誰かの役に立つと言える。
 という業界の内幕暴露で始まったが,最近の読者のために,次号以降で当欄のスタンスを語りたい。
 
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O plus E誌 2014年9月号掲載
   
  当欄連載の意義と執筆スタンスの再確認(その2)  
    (前回から少し間が空いてしまったが,所詮は紙幅調整の埋め草なので,ご容赦願いたい。)
 本稿執筆時に,SIGGRAPH 2014でカナダのバンクーバーに来ている。CIFシリーズが現在の「VFX映画時評」中心となってからも,数年は例外的にSIGGRAPHのルポだけは続けていたが,それも2002年で止めてしまった。技術的,内容的に価値がなくなった訳ではないが,大きなトレンドは見つけ難くなり,開催形態が固定化されてしまったためである。
 とはいえ,その後もCG/VFX大作のメイキング解説は増え続け,当欄として足を運ばざるを得ない大イベントであることに変わりはない。Production Sessionsの名の下に連日VFX映画制作の解説があるので,通常の学術論文発表や技術&芸術展示をじっくり見聞きできる時間がないほどだ。ただし,ここで聞いた解説が直接当欄の記事執筆に役立つ訳ではない。本邦での公開が早くなったため,既に観終って,掲載済みの映画に対して,VFX制作過程を後追いで再確認している場合が殆どだ。
 改めて,当欄連載に至る背景を振り返っておこう。1980年代半ばに,「画像処理アルゴリズムの最新動向」と題した学術論文サーベイ記事を14回連載し,O plus E別冊として刊行した。80年代後半から90年代にかけて「画像処理・認識技術の実践講座」を3シリーズ,計27回連載し,これは3冊の書籍になっている(総研出版刊)。筆者は,いずれも企画兼編者として参加した。
 この頃,ディジタル化の大きな潮流の中で,画像・映像技術分野全体が,大きな変革を遂げつつあると感じ,1992年1月号から「コンピュータイメージフロンティア(CIF)」なる連載を始めた。今度は自らインタビュアーやルポライターとなって,印刷・写真・映画・放送・通信・ゲーム等々の既存の映像メディア分野の有識者や有力研究機関を訪ねたり,大きなイベントを取材したりした。ここからも,4冊の単行本(オーム社,日本経済新聞社,総研出版,NTT出版から刊行)が生まれている。
 これを8年弱続けたところで,そろそろ先端技術紹介やルポのネタも尽きてきたので,CGを多用した映画だけに絞ることにしたのが,1999年9月号からである。勿論,映像表現の最先端技術は,映画におけるCGを中心として開発・実践されると信じたからである。
 
   
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