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O plus E誌 2012年12月号掲載
 
 
 
 
『ロックアウト』
(ヨーロッパ・コープ
/松竹配給)
 
 
      (C) 2011 EUROPACORP

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [11月23日より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー公開予定]   2012年10月2日 松竹試写室(大阪)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  普通の娯楽映画だが,宇宙刑務所という発想が面白い  
  あまり期待せずに観た映画が,予想以上に面白かった時に,何やら得した気分になる。TV放映の映画をたまたまチャンネルを合わせて観た場合も,映画館で目当ての映画が混んでいて,別の映画を観ざるを得なかった場合もそうだろう。その反対に,前評判が頗る高かった大作が大味だった場合や,批評家絶賛で映画祭の受賞作品が,気取っているだけでクソ面白くもない場合は,時間を損したという後悔がいつまでも抜けない。特に,入場料を払っての場合,その思いは尚更だ。
 期待よりは面白かったという側の典型が,本作である。フランス一の売れっ子監督リュック・ベッソン製作のSFアクションというので,そこそこの分量のVFXは予想できたが,(今思えば)事前マイナス評価の要因は,松竹配給の洋画作品という点だった。かつて(日本ヘラルド映画との共同配給とはいえ)『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで大ヒットを飛ばし,マーティン・スコセッシの意欲作『アビエイター』(05年4月号)なども輸入・配給していたのに,最近は洋画配給に情熱がないように感じられる。『サウンド・オブ・サンダー』(06年4月号)『スカイライン ―征服―』(11年6月号)などのVFX多用作もあったが,B級作品の感は否めなかった。ところが,『エクスペンダブルズ』シリーズのヒットで活気づいたのか,立て続けに本作の配給である。
 さて,本作の監督は,アイルランド出身のスティーブン・レジャーとジェイムズ・マザーのコンビだが,後者が撮影と照明に関わり,前者が主に脚本と編集を担っているようだ。リュック・ベッソン出資のヨーロッパ・コープの作品で,フランス映画でありながらハリウッド調のアクションものというと,『TAXi』シリーズや『トランスポーター』シリーズを思い出す。本作では,それがもっと徹底していて,全編英語の台詞で,キャストも英米の俳優ばかりだった。
 主演の元CIAエージェントを演じるのは,ガイ・ピアース。『L. A. コンフィデンシャル』(97)『メメント』(00)での知的でクールな役柄が印象に残っているが,最近は実に様々な役で登場する。『ザ・ロード』(10年7月号)の最後に登場する生存者が彼だとは,エンドロールで確認するまで気付かなかった。『プロメテウス』(12年9月号)での老け役にも驚いた。久々に主演の本作では,ほぼノーメイクで,シニカルな主人公を演じている。ヒロインは,『96時間』(09年8月号)でリーアム・ニーソンのおバカな娘役を演じていたマギー・グレイス。来月号で紹介する続編にも登場するが,本作での我が侭な大統領の娘役にはピッタリだった。
 500人の囚人を冷凍睡眠させて管理する宇宙刑務所MS-1が舞台となっている。暴動が起き,囚人達が覚醒する事件に,視察に来ていた大統領の娘が巻き込まれ,人質となる。この刑務所への収監が決まっていた元CIA局員が,大統領の命を受け,彼女の救出に向かうという設定だ。SF仕立てではあるが,物語は敵と戦い,女性を救出する単純なアクションものである。95分と短めの尺の中で,小気味いい展開で,飽きさせない。
 宇宙ものだけに,CG/VFXの登場場面は多々ある。主担当はダブリンにあるWindmill Lane Visual Effects社で,アイルランド初のVFX専業スタジオとのことだ。技術的に特筆すべきものはないが,デザイン,演出面は悪くない。まずは,主人公の地球上での派手なバイクと列車のチェイスシーン(写真1)で,文句なしにVFXの産物である。地下鉄構内のシーンも悪くなかった。舞台が宇宙に移ってからは,宇宙から見た地球も,地球帰還時の宇宙船の様子も卒なくこなしていた。宇宙戦の模様は,攻撃側も迎撃側もしっかりと描けている。
 
 
写真1 VFXの見せ場は,地球上でのバイクチェイス
 
 
   特筆すべきは,宇宙刑務所のデザインだろうか。ちょっとレトロな宇宙ステーションのルック(写真2)が再三登場し,既視感がある。それでいて,成程これは刑務所だなと感じさせるシーン(写真3)が随所にあり,殺伐とした感じがよく出ていた。  
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写真2 宇宙ステーションとしては,卒なく無難なデザイン
 
 
 
 
 
写真3 その一方で,なるほど刑務所だなと感じさせる納得の光景
(C) 2011 EUROPACORP
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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