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O plus E誌 2011年4月号掲載
 
 
 
 
『ジャッカス3D』
(パラマウント映画)
 
 
      (C) 2010 Paramount Pictures

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [5月6日よりシネマサンシャイン池袋他にて全国3D公開予定]   2011年3月10日 なんばパークスシネマ[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  下品だが爽快,3Dの立体感も躍動感も抜群  
   大スペクタクル,大感涙ドラマの後は,究極のお馬鹿映画で締め括ろう。「Jackass」は米国のスラングで,「バカ,アホ,間抜け,役立たず」の意味だそうだ。元は2000年に始まったMTVの番組で,全米CS史上最高視聴率を獲得したという。中身は,子供のイタズラ級の悪ふざけ,体当たりアクション,性器や排泄物をネタにした下品なギャグに加え,ドッキリカメラ的要素まで盛り込んだ悪趣味パフォーマンス映像集である。映画版はこれまでに『ジャッカス・ザ・ムービー』(02)『jackass number two』(06)が製作され,1作目は肖像権の関係から本邦では「日本特別版」が公開されている。
 通常,TVのバラエティ番組をほとんど観ない筆者は,ましてやこの種の低俗番組には興味なく,勿論映画版にも食指は動かなかった。ところが,昨年10月に米国で公開されたこの3作目だけは待ち遠しかった。全編すべて2台のカメラで撮影した堂々たる3D映画だというからである。3作目の「3」にかこつけて3D化したシリーズも少なくないが,大抵は「2D→3D変換」による似非3D,擬似3Dだったので,このお馬鹿シリーズの立体感に大いに興味をもったのである。
 盗撮防止,3Dメガネの利用法に続いて「警告:番組内で危ないことをやっているのは,スタントマンかただのバカです。よい子やクソガキ,または精神年齢の若い大人のみなさんは絶対に真似をしないでくださいね」という,本シリーズ特有のメッセージが流れる。真似をして大けがをした若者が相次ぎ,社会問題化したためというが,「クソガキ」とは恐れ入る。この警告はエンドロールの後にも流れるが,効果のほどは怪しいものだ。
 ストーリーはなく,各パフォーマンスのドキュメンタリー映像が次々と登場する。これが結構面白い。なるほど,病みつきになるのも理解できる。下品そのもののネタがいくつもあるが,これが不思議に嫌味でない。製作総指揮も兼ねるリーダーのジョニー・ノックスヴィルはじめ,蛇嫌いのバム・マージェラ,超デブのプレストン・レーシー,小人のウィーマン等,曲者揃いのクルー9人の体当たり実演が抱腹絶倒で,爽快なのである。お茶の間で食事中に観たら,吐き気すら催すだろうが,暗い映画館の閉鎖空間で楽しむのに適しているのかも知れない。途中でCMで邪魔されないのも,映画館の長所だ。
 さて映像だが,写真1を観た時には一部CGで加工してあるのかと思ったが,全部ナマの実演だった(と思う)。そうでなければ,この映画の魅力は半減する。3Dはと言えば,これも実に良く仕上がっている。一見飛び出しに最適に思えるシーンでも,あまり手前に突出する構図を選ばず,大半のシーンは奥行き重視の立体映像設計となっていた(写真2)。水飛沫や爆発など,擬似3Dが苦手とする素材もたっぷり使っている。写真3のようなパフォーマンスでは,ボールの軌跡をしっかり3Dで追い,かつスローモーションも多用していた。
 
   
 
写真1 一見VFXに見えるが,しっかり生身の演技
 
   
 
写真2 飛び出しを多用しない自然な3Dで,目も疲れない
 
   
 
 
 
写真3 3D&スローモーションでボールの動きを適確に
(C) 2010 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
 
   
   特筆すべきは,全く目が疲れないことだ。無理のない自然な立体感を与えているのだろう。所々で撮影の模様も登場するが,ハンディなカムコーダー2台だけの構成のようだ。ジェームズ・キャメロンのフュージョンシステムのような高価な機材を使っている訳ではない。いつものXpandD方式のメガネをかけても,映像は結構明るかった。素直に撮影しているだけのようなので,通常の劇映画がいかに画面を暗く作っているかが分かる。CGアニメ同様,この種の実録ものに3Dは適している。
 初々しいカップルのデートムービーには向かないが,気心のしれた男女間ならこの笑いもアリだろう。きちんと数えなかったが,全部で30前後のパフォーマンスが収録されていただろうか。筆者のお気に入りは以下の3つである(正式名称は控えていない)。
・瞬間強力接着剤でメンバー2人の身体をくっつける
・放屁の吹き矢で,風船を割る
・仮設トイレ筐体をクレーンで吊り,バンジージャンプを試みる(中はクソまみれ)             
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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