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O plus E誌 2008年4月号掲載
 
 
 
『NEXT -ネクスト-』
(レボリューション・スタジオ
/ギャガ配給)
 
      (C)2007 REVOLUTION STUDIOS DISTRIBUTION COMPANY, LLC  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [4月26日より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にて公開予定]   2008年2月27日 ギャガ試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  脚本もVFXもB級だが,全体はレトロ調で満足度は大  
 

 こちらはGW公開作品だが,ライバルのVFX大作が多数控えているので,一足先に紹介しておこう。原作はフィリップ・K・ディックの短編「ゴールデンマン」で,このSF作家の短編小説はしばしば映画化されている。本欄で紹介しただけでも,『クローン』(01年11月号)『マイノリティ・リポート』(02年11月号) 『ペイチェック』(04年3月号)『スキャナー・ダークリー』(06年11月号)があり,古くは『ブレードランナー』(82)『トータル・リコール』(90)が有名だ。アイディアの宝庫であり,CG/VFXの力でそれがいかようにも映像化できるようになったからだろう。それでいて,『マイノリティ…』以外はB級作品が多いのは,作風にどこか暗い影があるからだろうか。
 監督は,『007/ダイ・アナザー・デイ』(03年2月号)のリー・タマホリ。ふむ,この監督ならB級作品でも,それなりに楽しく見せてくれることだろう。主演はニコラス・ケイジで,2分先の未来が見えるという予知能力をもつ男クリス・ジョンソンを演じる。『ナショナル・トレジャー 〜リンカーン暗殺者の日記〜』(08年1月号)で見かけたばかりなのに,もう次作かと思うが,実は本作品の方が撮影も米国公開もずっと前で,日本公開が1年以上遅れていたに過ぎない。 原作での時代設定は未来なのに,本作では現代に翻案されている。クリスの予知能力に目をつけたFBIがつきまとい,テロリストたちが仕掛けた核爆弾から世界を救う役を担わせるという設定だ。クリスが恋するヒロインのリズ役は,『ステルス』(05年10月号)のジェシカ・ビールだが,FBI女性捜査官を演じるジュリアン・ムーアの方が存在感が大きい。今回は『ハンニバル』(01年4月号)のスターリング捜査官というよりも,『ボーン・アルティメイタム』(07年11月号)でボーン(マット・デイモン)を見守るCIA職員パメラ(ジョアン・アレン)のような保護者的存在である。その他は,B級らしくあまり馴染みのない脇役ばかりだ。
 設定は現代であるのに,レトロな感じを抱かせる映画である。同じように娯楽作品に徹していても,斬新さを感じさせる『ジャンパー』とはまるで違う。画調だけでなく,演出もカメラワークも80年代の映画を思い出してしまう。携帯電話やPCの薄型液晶モニターが出て来なければ,21世紀に撮った映画とは分からない。おそらくこれは,この監督の意図的な「作り」なのだろう。若い頃にフィリップ・K・ディックをむさぼり読んだSFファンに,当時の映画を思い出させる仕掛けなのかも知れない(写真1)

 
   
 
写真1 このシーンも何か古くさい。『トータル・リコール』へのオマージュなのか?  
 
   
 

 もう1つ,80年代では,いや90年代でも達成できないのが,VFXシーンの存在である。明らかにCG/VFXだと分かる使い方は3箇所だ。まず,クリスが意図してクルマを崖下に転落させてFBIを混乱させるシーンである。落下するクルマ,大きな岩,丸太などをすり抜けるように動き回るが,もちろんこれはCG合成による表現だ(写真2)。建物内で危険箇所を察知しながら敵を追いつめるシーンでは,未来予知の場合分けに応じて,2人,4人と分身の術を披露する。単純な多重合成だが,なかなか面白い印象に残るシーンだ。最後に,核爆発のシーンも勿論CGの産物である(写真3)。今や珍しくもない映像表現だが,『ターミネーター2』(91)へのオマージュかと思わせる光景である。
 VFXの担当は,Digiscope,Pacific Title,Digital Dreamとこちらも2流,3流揃いである。10年前なら莫大な制作費を要したVFXシーンを,B級予算の範囲内できちんと面白く見せてくれるのは,この監督の腕だ。
 定番の展開と結末で終わったかと思いきや,最後にもう一捻りあるのも嬉しい。ミニ・タイムトラベルものとして,なかなか工夫された脚本である。    

 
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写真2 クルマはワイヤで吊り,丸太はCGで描いた
 
 
   
 
 
 
写真3 核爆発シーンは,今や難易度B程度か
(C)2007 REVOLUTION STUDIOS DISTRIBUTION COMPANY, LLC ALL RIGHTS RESERVED
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)  
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