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O plus E誌 2006年1月号掲載
 
 
レジェンド・オブ・ゾロ 』
(コロンビア映画/松竹&ブエナビスタ配給)
         
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [1月21日より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹・東急系にて公開予定 ]   2005年11月10日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  お馴染のヒーローの痛快活劇譚だが,少し安っぽい  
 

 筆者の子供の頃,夜7時半から始まる30分間のTV番組『怪傑ゾロ』は毎週日曜日夜の楽しみの 1 つだった。独身時代に『アラン・ドロンのゾロ』 (74) をデート・ムービーとして観た覚えもある。記録を調べると,原作は1919 年にジョンストン・マッカレーの著した小説「The Curse of Capistrano」で,1920年以来ハリウッドでは何度となく映画化されている。黒い帽子に黒マスク,黒いマントをなびかせて馬に乗ってやって来る正義の味方の「ゾロ」は,さしずめ西洋版「鞍馬天狗」か「怪傑黒頭巾」で,大衆ヒーロー映画の古典的な存在だ。
 その単純な英雄アクション映画を,一ひねりして見せてくれたのが『マスク・オブ・ゾロ』 (98) である。かつての英雄ゾロのディエゴ(アンソニー・ホプキンス)が,後継者にアレハンドロ(アントニオ・バンデラス)を指名するという設定が斬新だった。女剣士のエレナ(キャサリン・ゼタ = ジョーンズ)と対決し,やがては結ばれるというのも娯楽映画らしいサービスで,全編剣戟アクションのリアルさも痛快さも出色だった。
 それから7年,この映画でブレイクした2人はともに大スターになった。スペイン人俳優のA・バンデラスは『スパイ・キッズ』シリーズなどで活躍し,C・ゼタ=ジョーンズは結婚・出産を経た上に,『シカゴ』 (02) でオスカー女優に輝いている。
 この映画は同じマーティン・キャンベル監督の手による続編で,2人が結婚し,男の子もできた10年後という設定だ。1850年,カリフォルニアがアメリカ合衆国の31番目の州となる直前の時代で,南北間の対立に揺れる合衆国の姿が垣間見える。妻エレナとの間でゾロから引退を約束したアレハンドロであったが,秘密結社の悪の手が迫ろうとした時,「もう一度,マスクをつける勇気と力を私に」と庶民の英雄ゾロが立ち上がる…。
 大いに期待した続編であるが,出来映えは今1つだった。元来がスカッとさせる目的の活劇なのはいいが,マンガ的で滑稽な場面が多過ぎる。これだけの大スターとなった 2 人(写真 1)の再共演ならば,もう少しコクのあるドラマとして見せて欲しかったところだ。単なる勧善懲悪,危機一髪セーフのアクションだけでは,オスカー女優に失礼だろう。ファミリー向きエンターテインメントで,ハリウッド映画の定番とはいえ,ここまで家族,家族というのもクサ過ぎる。これでは仮面のヒーローの魅力も半減だ。
 この映画のVFXはPeerless Cameras Co.とDigisiteが担当で,模型製作は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのWeta Workshopが請け負っている。ワイヤー・アクション,19世紀の街並み,少し見える海の風景,ニトロの爆発シーンなどは,言うまでもなくデジタル技術の産物である。ただし,遠景のマット画の品質も合成もお世辞にもいい出来とは言えない。
 クライマックスは列車上でのアクション・シーン(写真 2)で,ここがこの映画の最大のウリだ。ゾロが馬に乗ったまま列車上に飛び降りるシーンは勿論合成だが,実物大の列車上での対決シーンも延々と続く。分量的に見応えあるが,技術的には未熟な点も目立った。カメラを引いた場面での列車の大半はミニチュアだとすぐ分かってしまう。それが,この映画を一層安っぽく見せてしまっている。Weta製作のミニチュアのせいというよりも,これは背景とのバランスの悪さや合成側の問題だろう。製作費を少しケチったためだろうが,2流のスタジオを使っていては,これは解決できない。最大の見せ場であっただけに残念だ。

 
     
 

写真1 大スターとなった2人の再共演だったが…

  写真2 見せ場は列車上での対決アクション
 
     
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