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O plus E誌 2005年11月号掲載
 
 
ティム・バートンのコープス ブライド』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C)2005 Warner Bros. Ent.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [10月22日より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹・東急系にて公開予定]   2005年9月29日 ワーナー試写室(東京)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  バートン流メルヘン・アニメは,前作以上の大傑作  
 

 9月号紹介の『チャーリーとチョコレート工場』が大ヒットしてまだ公開中だというのに,ティム・バートン監督がまたまたお気に入りのジョニー・デップを起用した映画が同じワーナー配給で後から迫っている。この映画はストップモーション・アニメ(以下SMA)だから,先に俳優の声を録音しておき,後から人形を少しずつ動かしてコマ撮りするはずだ。多分この映画の企画が先行し,J・デップもこちらを先に収録していたのだろう。
 題名に監督名を入れたのは,バートン監督の出世作『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』 (93)を思い出させようという思惑からだろう。同じSMAでも同作品は原案・製作だけで,監督はヘンリー・セニックに任せていたが,この作品ではT・バートン監督自らがメガホンを取っている。
 舞台は19世紀欧州の小さな村。両親の欲得ずくで婚約した富豪の息子ビクター(声:ジョニー・デップ)と没落貴族の娘ビクトリア(声:エミリー・ワトソン)は次第に惹かれ合う。ところが,式の練習でビクターがささやいた誓いの言葉で,地中で花婿を待ち受けていた死者の花嫁「コープス ブライド」(声:ヘレナ・ボナム=カーター)が登場し,彼を「死者の世界」へと連れて行く。2人の花嫁の一途な想いの狭間で逡巡するビクターの運命は…。という切なく,美しいファンタジーだ。
 実を言うと,この映画はSMAだと聞いていながら,写真1のスチル画像を観た時は「あれ!? フルCGアニメだったのか」と思ってしまった。この思いは映画を観始めてからもしばらく抜けなかった。いかにも作り物の人形然とした『ナイトメア…』に比べて,キャラクタのデザインも素晴らしく,映像もクオリティも格段に向上している。それでいてパペットならではの味も生きている。『ナイトメア…』は癖のある語り口は観客の好みが分かれるところだが,この映画はもっと素直に感情移入できる。バートン・ファンが益々増えることだろう。

 
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  このB級感覚は意図的か?  
 
そうです。すっかりこの監督のファンになりました。死者の花嫁が主人公なんてもっと怖い話かと思ったら,メルヘン調の切なくほろ苦い物語で,感動しますね。

SMAだから短めなのは当然だけど,しっかり涙を誘います。最後の10分が実に上手い。

ジョニー・デップの声も表情にぴったりで,良かったです。さすが,バートン監督のお気に入りです。
人形の顔は『戦場のピアニスト』のエイドリアン・ブロディに似てたけど,デップも上手いですね。

生者の世界がモノトーンで陰湿で活気がなく,死者の世界がカラフルで活気があって純粋だというのは皮肉ですね。映像としての対比も面白かったです。

色調の違いだけでなく,死者の世界は陰影をくっきりさせてあり,カメラワークもダイナミックでより活動的に見せていましたね。人形や模型のデザインもいいけど,光の使い方が実に上手いです。
10時間以上かけてたった1秒か2秒の映像を撮影するというのは気の遠くなる作業ですね。制作者たちの情熱と愛情がこもっている感じです( 写真2)。
 
     
 




写真1 生者の世界(上)よりも,死者の世界(下2枚)
の方がカラフルで活気がある
(c)2005 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

 

 写真2 パペットや模型セットは,これ位の大きさ。
 部屋を覗いているのはバートン監督(上)。

 
 
     
 
時間を稼ぐため,従来のだと同じ人形を複数作り, 3チームか4チームで並行して撮影するところを,この映画では8チームも設けたそうです。また最近はリモコン操作で人形の顔や手を部分的に動かせたり,ロボット・アームでカメラを動かしてアップのシーンを撮れるように工夫しています。
CGは使っていないんですか?

基本的には人形の実写撮影です。ただし,コマ撮りのカメラとしては,初めて Canon EOS-1Dというデジタル・スチルカメラを使ったとのことです。だから,その後の色調の加工や背景の合成や補強などもデジタル技術を目一杯駆使できるわけですね。

人形のややぎこちない動きがこの素朴な物語に合っていたし,背景の町や森の質感も素晴らしかったです。
その良さを承知の上で敢えて発言しておくと,動かない背景模型は実物でも,今後はキャラクタの演技はもっと CGに置き換えて行くべきだと思います。フルCGアニメだって,一旦キャラの人形を作り,それをスキャンして幾何モデルデータを作っている。最近のCGをもってすればSMAらしい味つけも十分表現できる。CGだと人形を少しずつ動かす膨大な時間を削減できるので,その労力をもっと他の表現力向上に有効利用できます。
 
   
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