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O plus E誌 2004年10月号掲載
 
 
『CODE46』
(ユナイテッド・アーティスト
/ギャガ・コミュニケーションズ配給)
 
         
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2004年7月29日 日本ヘラルド試写室(大阪)  
  [9月11日よりシネセゾン渋谷ほかにて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  大人のSFロマンス,VFXも抑え気味  
   ベルリン映画祭で3賞に輝いた『イン・ディス・ワールド』(02)のマイケル・ウィンターボトム監督が,初のSF 映画に挑戦というから,映画通ならかなり興味をそそられるだろう。ましてや,本欄のようなVFXが絡むとなれば尚更だ。ボスニアの内線の政治ドラマ,ロック・ミュージック界の革新の動き,アフガン難民少年がパキスタンからロンドンを目指すロードムービーと,一作毎に作風を変えて成功してきた英国の俊英監督だけに,どういう世界観のSFになるのかが注目の的だ。
 時代は不祥だが,現代とそう変わらぬ都市風景でクローン人間が当たり前となっている時代というから,近未来なのだろう。舞台は,中国の上海。この都市を選んだ選択眼が心憎い。今なお目覚ましい発展を遂げるこの大都会は,どこまでが現実の光景で,何がディジタル処理で加工されたのかが判然としない。頻繁に同地を訪れる人でもそうだろうし,2年前に滞在して以来の筆者などは幻惑される。外灘から眺めた浦東新区や南京路と西蔵路の交差点など,なまじっか観たことのある都市風景が頻出するので,あらゆる光景で既視感に捕われてしまいがちだ。VFXは,この都市風景を現代に見せたり未来に見せたり,不思議な効果を生み出すのに使われている。
 着陸寸前の飛行機の窓から見た浦東国際空港の周りは一面の砂漠だった。あれっ,こんな砂漠の中に空港を作っていたのかと思いきや,環境破壊が進む近未来は,安全が保証された都市部の「中」と砂漠が続く無法地帯の「外」の世界に厳格に二分されているという設定だ。
 都市間の移動には許可証パペルを取得が必要だが,そのパペルの偽造犯人摘発のため,シアトルから派遣された調査員ウィリアム・ゲルトが,犯人である26歳の女性マリア・ゴンザレスと宿命的な恋に落ちる。標題は,クローン時代に同一遺伝子をもつ男女間の生殖を禁じる法律の条項だが,2人が知らない内にこのコードを犯していたことから,禁断の恋の迷路に陥ってしまう…。
 SFらしい設定を巧みに利用した不思議な物語だ。管理化された奇妙な近未来社会での大人の恋を,情感豊かに描こうとしている。音楽もいい。なるほど,ハリウッド映画にはない英国映画ならではの味つけも感じられる。
 ウィリアムには『ショーシャンクの空に』(94)『ミスティック・リバー』(03)のティム・ロビンス,マリアには『マイノリティ・リポート』(02年11月号)で予知能力のあるプリコグ役を演じていたサマンサ・モートンという芸達者を揃えた。監督はこれを最高のキャスティングだと語っているが,筆者にはこのカップルは不釣り合いと感じる。分別くさい大柄なティム・ロビンスは,どう見てもこの小柄な個性的な女性の保護者にしか見えない。この2人が一瞬の相思相愛とは,ピンと来ない。
 多くの映画評が,プレス資料通りに「これは究極のラブ・ストーリーだ」と書いている。評者たちは,本当に自分でそう感じたのだろうか? この主人公たちに感情移入して大人の恋を満喫したのだろうか?
 確かにSFは禁断の恋を引き立てる設定に過ぎず,主題はラブ・ストーリーである。そのことを事前知識として持っておいて観ることを勧める。さもなくば,SF映画としての物語の落とし所に不満を感じてしまうだろう。ハリウッド流のドンデン返しやハッピーエンドを恋しくなるという映画評も見かけたが,この意見に同調する向きも少なくないと思われる。 
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