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O plus E誌 1997年7月号掲載
 
 
『スター・ウォーズ《特別篇》』
(20世紀フォックス映画)
 
TM&(c)1977&1997 Lucasfilm Ltd. All rights reserved. Used under authorization.
       
         
         
   
 『フォレスト・ガンプ/一期一会』で,ILM(Industrial Light & Magic)社はケネディ大統領やジョン・レノンの記録フィルムと主役のガンプ(トム・ハンクス)の合成シーンを成功させた。この時から,あらゆる過去の映像作品が新しい素材となったのである。同時に,次はきっとかつての名作がディジタル技術でリメイクされて出てくるだろうなと思った。そして,それは予想通り,ILMの名を世に知らしめた『スター・ウォーズ』だった。
 1977年の作品だから,もう20年にもなる。すごい衝撃だった。映画をこんなに面白く作れるのかと,その制作手法に感心した。監督のジョージ・ルーカスは,当時まだ33歳。その才能の輝きと,それを生かしうるハリウッド映画界の懐ろの深さにもアメリカらしさを感じた。
 この映画が,いまのハリウッドを駄目にしたという声もある。大作主義とワンパターンなアクションの連続が,映画人の心を蝕んでいるという。その是非はともかく,ディジタル映像技術全盛時代に,SFXの代表作である『スター・ウォーズ』をリメイクして再登場させるとは,大した商魂だ。
 親が見た想い出の名作を数十年後にリプリントし,次の世代の子供達に再公開して稼ぐというのは,ディズニー・アニメの得意技である。『スター・ウォーズ《特別篇》』は,ディズニーランドの「スターツアーズ」を楽しんだ若者にも,ディジタル技術によるリメイクだというだけで違いを確認したくなるオールドファンの心にも訴える。実に賢い商売だ。米国では,1月末の特別篇第1作の公開の後,第2作『帝国の逆襲』,第3作『ジェダイの復讐』を1ヶ月おきに再公開し,たちまち大ヒットとなった。他の映画会社は,話題作をこれに対抗させるのを諦め,公開を延期したという。日本でも,かなり早目から3作セットの鑑賞券や,メイキング・ブックの再発売など,興味を惹く見事なまでの営業戦略だ。新刊の『ジョージ・ルーカス伝/スカイウォーキング《完全版》』(ソニーマガジンズ)とやらの帯に,「なぜルーカスはスター・ウォーズ《特別篇》を製作したのか?」とあるので買ってみたら,1983年発行の本の再訳で,特別篇のことは何も書いてなかった。ここまでくると詐欺に近い。とりあえず,旧作のビデオを見直してみた。これまでにも何度も見たが,今回は5年ぶりである。いま見ると何とも古めかしい。ビデオの画質のせいもあるが,明らかにかなり昔に作ったSF映画だと判ってしまう。
 例によって,メイキング本で注目ポイントを予習してから試写会に臨もうとした。ところが,今回の試写会は1回しかやらないので,我々のような似非映画評論家(?)の席までは用意してくれなかった。ジョージ・ルーカスの指定の音響設備でしか上映できないので,試写会にも劇場を借りなければならないからだという。仕方がないので,一般公開を待ち1800円払って見ることになった。
 
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 これもまた「過去から見た未来」 
 
やっぱり古いなと感じてしまいました。廣瀬先生と同じで「この映画に昔どうしてそんなに感動したのか」と…(笑)。
私は結構楽しんでしまいました。でも,リメイクのせいじゃなく,ストーリーとキャラクタ設定の良さだと思います。音の迫力もすごかったです。3Dの感じがよく出ていました。

ルーカスご自慢のTHXサウンド・システムですね。音響効果もディジタル処理で作り直したというだけあって,最新作のレベルに達しています。それに比べて,視覚効果の方は時間と金をかけた割にはイマイチでした。

小動物と怪獣と乗り物を書き加えた程度でしたね。画質的にもちょっと違和感があるので,すぐ分かりました。怪獣の動きも,『ジュラシック・パーク』の恐竜にそっくりでした。

あなたに見破られるようじゃ,しれてるなぁ(笑)。

付写真1は,第3作にしか出てこなかったジャバ・ザ・ハットとハリソン・フォード(ハン・ソロ役)の共演場面ですね。このシーンが追加されたということは,未使用のフィルムが残っていたのですか?

シナリオにはあったので一応撮っておいたのでしょう。そこへCGのジャバを登場させたんです。今じゃ恐竜が描けるんだから,これくらいは当然です。
インターネット時代にジャバはぴったりですね。
それはJava。こちらはJabbaですよ(笑)。
全体として昔の作品だと感じてしまうのは,どうしてなんでしょうか?
まず1つはフィルムのせいでしょう。退色はディジタル処理でそこそこに復元できても,もとのフィルムの粒子そのものが粗いんです(付写真2)。今はフィルムの品質が格段に改善されています。
なるほど。画質の良いシーンと悪いシーンの差も,気になりました。
大道具や小道具の材質の違いも影響あるでしょう。駆動装置の精度やプラスティック成型技術などが向上しているから,表現力も豊かになっているんです。
帝国軍兵士のコスチュームなど,いかにもゴツゴツしていますね。当時の宇宙飛行士の服みたいです(笑)。
注射器や押しボタンなどの小道具も,まだ予算が少なくて市販品を使ったせいか,時代を感じさせますね。今ならCG技術が物理的にないものまで描いてしまいます。この映画のセールスポイントの1つであった光線銃は,オプチカル処理というフィルムへの多重露光を使って合成していたんです。今なら当然CGを使っているところです。
確かにそういった合成シーンは特に画質も悪かったようです。表現技術で作った時代を感じてしまうんですね。
想像の自由度に表現技術が制約を課してしまうんでしょう。表現できそうにないと,想像力の方も湧いてこないとも言えます。
この映画もやはり「過去から見た未来」なんですね。
今回のインタビューのテーマ通り,映像技術がもっと進歩すれば,未来はもっと何通りにも描けることでしょう。
そうしたら,またまたリメイクして新特別篇が出てくるんでしょうか。
これまで特撮映画評をやってきましたが,もうちょっとハリウッド流の大作主義,キャンペーンには飽きてきましたね。
この3部作の公開期間中に,『ジュラシック・パーク』の続編『ロスト・ワールド』も公開予定だそうですよ。
ILM社の技術がリメイクと新作でどれほど違うのか,やっぱり見ちゃうのかなぁ(笑)。
 
  
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