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DVD特典映像ガイド
   
O plus E誌 2003年1月号掲載
 まただいぶDVDがたまったので,特典映像ガイドを書いておこう。当欄で紹介した映画すべてのDVDを買っているわけではなく,特典映像でVFX解説が充実してそうなものを選んでいるのだが,当たり外れも少なくない。今回は,結構そう感じたものが多かった。  
   
  『ワイルド・スピード』
 特典映像は多彩で,魅力的な項目名に引かれて買ってしまった。「視覚効果モンタージュ」は,ストリート・レース場面の絵コンテ,かなり粗いCGのPreViz,窓の外がブルーバックのスタジオ撮影と合成結果の比較だけ。一方,「特殊効果解説」は,2台のクルマが踏み切りで列車の直前を抜けるシーンを前,横,斜めから撮影し,合成結果を見せてくれるだけだ。たわいもない。あえて論じるレベルでない。
 
   
  『シュレック』
 22分のメイキングが丁寧。人物,布,髪の毛の生成法など,ご自慢の技術がちりばめられている。森の背景の細やかさ,橋の下の溶岩流のシーンは絶品だ。「アニメーション・インタビュー」は,アニメ・キャラを俳優と見立ててのインタビューで,これは傑作。「カラオケ・ダンス・パーティ」もCGキャラならではの楽しさだ。
 
   
  『千と千尋の神隠し』
 当映画時評では,なぜこの日本の歴史的大ヒット作を取り上げないのかと問われたが,今でも伝統的制作方法が中心でディジタル技術では語るべきものがないと判断したからだ。その後,水のシーン等で,3D-CGやディジタル効果を少なからず使っているというので,色合いが話題になっていたDVDはすぐ買ってみた。期待したのに,特典映像らしきものは何もなかった。ジブリの工房風景,キャラのデザイン・プロセス等,宮崎アニメの舞台裏を見たいファンも少なくないだろうに,売れると分かっているDVDには特典などつける必要はないという出し渋りなのか。
 ちなみに,筆者は食わず嫌いではなく,どうも宮崎アニメは肌が合わず,スタジオ・ジブリの営業姿勢も好きになれない。
 
   
  『アメリ』
 メイキングは出来栄えはまずまず.特典映像は色々入っているが,どれが何なのか選びにくいのが減点だ。VFXの解説はなきに等しいが,パリ・ムードのアメリ世界を楽しみたいファンにはこの特典群は悪くない。
 
   
  『モンスターズ・インク』
 ライバルの『シュレック』は1枚なのに,こちらは2枚組で差をつけた。Disc 2に特典映像がぎっしり詰まっている。ピクサー社の新社屋を紹介するジョン・ラセターが本当に楽しそうで活き活きしていた。クリエイタ志望ならこんな夢溢れる技能集団で働いてみたいと思うのが当然だ。この映画は,惜しくもアカデミー賞に新設の長編アニメ部門最優秀賞を『シュレック』に譲ったが,短編アニメ部門でオスカーを得た『フォー・ザ・バーズ』が解説つきでこのDVDに収録されているのが嬉しい。 メイキングはたっぷりすぎるほどたっぷりで,項目の階層も深く,「マイクのドア」と「サリーのドア」が奥で繋がっていて,複雑すぎて全部見たのか分からなくなる。マイクやサリーへのインタビューやNG集もしっかり入っている。ストーリーボードと完成版の比較が5.5分。制作工程の4段階の比較が約2分。いずれもマルチアングルの切り替え比較で楽しめる。
 セット装飾のプロセスが興味深い。フルCGなのにまるで本物の大道具,小道具を選ぶかのように配置して試す。街のシーンの多重合成もしかりで,様々なパイプの繋ぎ合わせ,交換で試行錯誤できる「パイプオマチック」なるソフトが用意されている。サリーの体毛とブーの衣服の表現が新技術なのは映画紹介時に書いたが,そこをもう少し詳しくCGメイキング解説して欲しかった。
 
   
  『ロード・オブ・ザ・リング』
 これも2枚組だ。テレビ特番らしき16分,21分,41分の3本の映像番組が入っている。結構重複はあるが,それぞれに字幕版と吹替え版もあるのは親切だ。
 2〜5分に分けられたメイキング映像が15本もある。この物語の世界観に浸るにはいいし,ピーター・ジャクソン監督の情熱とエネルギーにはほとほと関心する。ただし,撮影風景やメイクアップなどのメイキングはあるが,VFXに本当に少ししか触れられてないのが悔しい。視覚効果賞でもオスカーをとったのなら,もう少しサービスしろやと言いたい。衣装,甲冑などの武具,メイクアップなども別項目で語って欲しかったところだ。監督もWeta社も第2作目のポストプロダクションに追われていて,特典映像どころではなかったのだろう。好意的に解釈し,3本まとまってから,じっくり語ってくれることを期待しておこう。
 
   
『パニック・ルーム』
 SIGGRAPH 02のElectronic Theaterでメイキングを見せられて,あの家の中があそこまでCGで出来ていたとは驚いた。見破れなかった自分の目を恥じた。通常,劇場映画のクリップは別売りのビデオ(今回からはDVD)では除かれているのに,この作品は残されていた。ならば,映画のDVDでもご自慢のVFXメイキングをたっぷり見せてくれるのだろうと思って買ってみたが,予告編以外何もついてなかった。損した。
 
   
  『ブラックホーク・ダウン』
 1枚もの。特典映像は約22分のメイキング,予告編,スチル写真集だけで素っ気無い。メイキング映像は,監督に始まり,各役柄をインタビューで追うだけの定番スタイルだ。製作意図,背景,あらすじは良く分かる。俳優もかなり軍事訓練するとは思っていたが,本物の米軍空挺部隊も映画の中に参加していたとは驚いた。リアルなわけだ。改めて,リドリー・スコットならではの映像美と本物の迫力のこの映画を再観賞することを勧めておこう。ただし,SFX/VFXはゼロ。R・スコットのミル・フィルム社が担当で,あれだけの分量視覚効果を使っていたのに,このサービス精神のなさはあんまりだ。
 
   
  『スパイダーマン』
 しっかり2枚組。Disc 2には「Spider-Mania」(上手いタイトルをつけるものだ)と題した37分間の特番映像,コミックでの「スパイダーマン」の歴史,新作ゲームなど特典が満載されている。24分間の「メイキング・ドキュメンタリー」は,通り一辺の主要スタッフやキャストへのインタビュー中心だ。この中の「美術」の項にNY市街地のミニチュア,「SFX」の項に特撮風景が若干があるが,撮影風景と完成映像をバックに語りがあるだけで制作技法はまるで出て来ない。SIGGRAPH 02のSpecial Sessionが印象的だっただけに,あの一端を少し入れて欲しかった.ネタは山のようにあるのに惜しい!
 
   
  『少林サッカー』
 これも期待外れの1枚。撮影風景中心のメイキング映像16分の中で,ワイヤーやクロマキーやモーションコントロール・カメラについて少し出て来るだけ。メイキング映像としてはそれなりに面白いが,あれだけふんだんに使ったCGのメイキングはどこへ行った? CGがウリだったのなら,DVDでもそれを打ち出すのが筋というもんでしょ,関係者さん。
 
   
  『メン・イン・ブラック2』
 映画は短いのに2枚組。そうするだけあって,特典映像は多彩でNG集,別のエンディング,マルチアングルによる分解なども入っている。『MIB捜査官への道』日本版には,大槻義彦先生,清水ミチコ,KONISHIKIが登場するが,これは笑える。
 メインの「メイキング・ドキュメンタリー集」は通してもみられるが,項目ごとに分割してあって見るのに便利。音楽収録,パグ犬のアフレコや効果音(フォーリー)の現場風景が楽しかった。「エイリアン・ドキュメンタリー」も出色で,エイリアン・デザイナーのリック・ベーカーとCGデザインのデビッド・ナカバヤシ両氏の話は中身が濃かった。ワームは前作も本作も大半はパペットとは知らなかった。勿論,歩くシーンなどはCGだが,操りで手や口を動かす演技は名人芸の域だ。
 B・ソネン・フィールド監督は音声解説もメイキングもサービス精神旺盛だ。さまざまな職人の世界を見せてくれて,これぞメイキングの真髄だ。ただし,この映画は制作者たちが楽しみ過ぎたきらいがある。面白さは観客が決めると監督は言うが,映画本編よりも特典映像の方がずっと面白かったのは皮肉である。映画関係者,CG映像クリエータを志す読者にはオススメのDVDだ。
 
   
  『アイス・エイジ』
 1枚ものだが,これも特典映像はどっさりだ。普通の「メイキング・オブ・アイス・エイジ」は約21分で,7つの部分に分かれていて見やすい。ブルースカイ・スタジオの様子から始まり,下絵,模型,幾何データ,アニメーション……と制作過程が良くわかる。ピクサーに負けずに,この会社でも若い才能が楽しんで作っている光景が清々しい。メイキングとしても秀逸だ。
「CGの舞台裏」は若干重複があるが,これも舞台裏が分かっていい。高い技術力とセンスの良さが感じられる。技術の使い方に『ファイナル・ファンタジー』とは根底的なマインドの違いを感じてしまう。「制作過程の映像比較」は絵コンテから最終の4レベルをそれぞれと一括をマルチアングルで切り替えられて親切だ。「デザインギャラリー」の絵にも惚れ惚れする。
 映画本編の所々に出て来ていい味を出していた小動物スクラットが,「ドングリとスクラット」「スクラット短編集」でも見られるのは嬉しい。このDVDには1998年アカデミー賞短編アニメ賞を取った名作『バニー』も入っていた。ピクサー社のスタイルを真似たが,こういう真似ならいくらでも結構だ。勿論,これもCG映像クリエイタ達には絶対オススメの1枚だ。
 
   
  『スター・ウォ−ズ エピソード2/クローンの攻撃』
 本稿の締め切り間際に発売になったのが,この2枚組DVDだ。『エピソード1』は2年近く出なかったのに,こちらは日本公開後5か月も経っていない。映画の完成度と付帯情報の露出度からして期待していたが,Disc 2は実に充実していた。製作中から用意していなければこうは行かないだろう。
 メニューは多彩だが,「ビハインド・ザ・シーン」の3編は通常のメイキングもので,他に「ドキュメンタリー」2本がある。この映画ならではのデジタル技法ぎんぎんの解説で,デジタル・キャラの製作(52分)とCGによるプレビズ(23分)の2種類があった。お待ちかねのデジタル・ヨーダのメイキングもたっぷり見せてくれ,本映画時評の読者必見だが,少し長くて冗長だ。一方,『エピソード2:視覚効果の魔法』の3分半は,確かSIGGRAPHのEシアターで見た映像で,主要シーンのILMの技法をコンパクトにまとめている。
「Webドキュメンタリー」はオフィシャルサイトで公開された12編(各約5分)ものメイキング映像で,この中にも「ILMの視覚効果」「模型制作」に関する章がある。ルーカスとILMの関係,模型とCGの使い分けのポリシー等がよくわかる。「デジタル・シネマ革命」では,G・ルーカスの革新性について,改めて感心した。 「R2-D2:ドームの下の素顔」はSWファン必見。F・コッポラ,S・スピルバーグといった映画界の大物が,大真面目にコメントしているのは爆笑ものだ。


 
 
   
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