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DVD特典映像ガイド
   
O plus E誌 2002年7月号掲載
 先月に引き続き,DVDの特典映像におけるVFXの解説を評価しておこう。  

  『クリムゾン・リバー』
 未紹介作品。VFXシーンは多くないが,クライマックスの雪崩シーンをDVDのマルチアングル機能で見せてくれるのがウリだ。「実写映像」「合成要素」「完成画面」が同時表示されるが,解説がなく,画面も小さい。選択して拡大できる機能が欲しかった。むしろ,CGでなくラバー製だが,死体製作の過程の解説の方がメイキングとして面白かった。
 
   
  『チキンラン』
 アードマン流のクレイアニメの制作過程は,約21分のメイキング映像の中で語られているが,できれば「人形製作」「撮影風景」「イフェクト」等の項目に分けて欲しかった。
 
   
  『ハムナプトラ2/黄金のミラミッド』
 2枚組で,エジプト学やザ・ロックのインタビューなど,特典映像も盛り沢山だ。スティーブン・ソマーズ監督&ボブ・ダクセイ製作総指揮の音声解説がいい出来で,製作手法がよく分かる。第1作目に引き続き,最新視覚&特殊効果講座は充実していて,VFX教科書としては今回もNo.1だ。代表的な4シーンのそれぞれを5つのパートに分けて視覚効果の与え方を解説していて,さすがILMの技だと思わせる。もっと他のシーンも見たくなる。ただし,講座としては理解しやすいが,スコーピオン・キング(ザ・ロック)の顔の不出来だけはやはり気になる。一方のアヌビスの戦士の蜂起するシーンやピグニーの描写は何度見ても素晴らしい。
 
   
  『パール・ハーバー』
 独立したVFX解説はなく,45分のメイキング映像(恐らくTVの1時間番組)中に含まれている。 モーションキャプチャー,クレーンカメラの動き,爆発など,撮影風景という意味でのSFXは凄い。本物の零戦が飛んでいることに感動した。
 
   
  『A.I.』
 2枚組のDisc 1にも約12分のメイキングが入っているが,Disc 2全体が特典映像で,8つのメニューの内1つが23分間のILMの視覚効果解説だ。何がCGで何が模型か,どうやって作ったかの種明かしの語りが上手い。水没したNY市の水の表現,ルージュシティ撮影の新技術,キャラの設計等,VFXメイキングとして文句なしにだ。他の「特殊効果」「ロボットたち」も秀逸で,スタン・ウィンストン始めスタッフの情熱溢れる声が聞ける。ジゴロ・ジョーのメイクやテディの動きの苦労話もいい。「衣装デザイン」「光と撮影」「サウンド効果」もよく出来ていて,これだけのバラエティと質には,過去最高の評価を与えよう。
 
   
  『ドリヴン』
 映画はつまらなかったが,レニー・ハーリン監督の音声解説とVFXのメイキングは悪くない。13台のカメラ間の内挿やモーフィングなど,古典的手法を詳しく語る。クラッシュ・シーン,あとで描き加えた雨や観客など,「へぇー,ここがCGだったのか」と種明かしを見るのが楽しい。技術レベルは並みだと思うが,スタッフは「自分たちは映像技術の新境地を開いた」と熱く語っている。どの映画もそうで,次々追い越されるのだが,それが進歩だ。そうした切磋琢磨できる時代に参加しているという幸福感が伝わってくる。
 
   
『猿の惑星』
 2枚組で特典映像は猿のメイクアップや衣装,ワイヤーなど6つのカテゴリーで計約100 分もある。長過ぎるのが難だ。リックベイカーのメイクアップは一見の価値あり。ILMのSFX舞台裏は7編計13.5分あり,CG合成だけでなく,セット,模型,特殊カメラなど多彩で,映像制作技術としては興味深い。DVD収録用によく計画されていて,未公開シーン,スクリーンテストまで,特典映像としては十分だ。
 
   
  『ジュラシック・パークIII』
 本編が短いので1枚に入っているが,特典映像は少なくない。SFXチームの音声解説で,思ったより合成シーンが多かったこと,CGと思っていたシーンがアニマトロニクスだと知る。ILMの技術解説は,多階層に分かれていて恐竜の製作プロセスがよく分かるが,質・量ともに今やそう驚かない。時間は短いが,スタン・ウィンストン・スタジオの製作工房としての様子が分かって興味深かった。
 
   
  『ファイナル・ファンタジー』
 メイキングは坂口監督が語る約9分の映像1本のみ。モーション・キャプチャー風景,手足,表情の表現,衣服シミュレーション等も説明しているが,階層メニューで分けて欲しかった。コンポジットの事例も一通り揃ってはいるが,あれだけ露出したのだから,記録としてもっと長いものが欲しかった。レンダラーとしては,RenderManが弱いので,レイトレーシングにはMAYAを併用して合成したという裏話や,ゲーム版FFの歴史I〜Xで,画質が如実に向上してくる様子が興味深かった。
 
   
  『トゥーム・レイダー』
 2枚組で特典映像はどっさり。全体のメイキングの他に,「メイキング・オブ・ララ・クロフト」「スタント・オブ・トゥーム・レイダー」があり,VFXの解説も8種類ある。1つずつはそう驚かないが,教本として上出来だ。担当はシネサイト社で,映画もVFX解説も『ハムナプトラ』シリーズを意識していると感じられる。ハスキー犬やロボットのメイキング映像は,本欄でも上位の評価に値する。
 
   
  『ソード・フィッシュ』
 1枚もので特典は少ない。VFXメイキングはバスの宙吊りシーンだけで,冒頭のマシンガン撮影の部分はなかった。『マトリックス』と比較した技術解説を期待したのに大外れだった。ドミニク・セナ監督の音声解説は,まあまあのレベル。
 
   
  『ムーラン・ルージュ』
 これも2枚組で,この映画同様に特典も多彩,絢爛豪華で厚化粧気味だ。ダンスシーンのマルチアングル映像,撮り直し手法,セットや衣装デザイン,ミュージッククリップなどマニア向けだ。VFX解説は,「19世紀末のパリの街の再現」と「緑の妖精の製作秘話」の2種類で,新規テクニックよりも映画とのバランスを保つ工夫や味付けが印象的だ。残された19世紀末の古い貴重なフィルムが興味深い。
 
   
  『ハリー・ポッターと賢者の石』
 割安の2枚組で,売り上げは『マトリックス』を大きく凌駕する大ヒットとなり,DVD新時代の記念碑となった。約800ものVFXシーンのメイキングも充実していると期待したのだが,ハリポタ世界の解説ばかりで,VFXは「インタビュー集」と題したメイキング解説の中で,ほんの少し触れられているだけだった。

 
 
   
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